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【東京国立博物館】「フランス人間国宝展」記者発表会レポート

2017年9月12日(火)から2017年11月26日(日)にかけて東京国立博物館で開催される「フランス人間国宝展」の記者発表会が、5月17日に行われました。今回はその様子をレポートいたします。

 

1994年、日本の重要無形文化財指定(人間国宝)にならい、フランスで「メートル・ダール」という称号が誕生しました。メートル・ダールとは、フランス文化・逓信省が策定した、フランス伝統工芸のおける最高技能者に授与される称号のことで、ユネスコにも登録され、その熟練の技やノウハウの希少性などを高く評価するものです。

本展覧会では、メートル・ダールの称号を持つ作家を中心に、フランス伝統工芸を牽引する作家15名の珠玉の作品、約200件を展示。日本の工芸作家とのコラボレーション作品も展示し、国境を超えた「手仕事」の魅力と未来を、幅広い層を対象に紹介します。


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記者発表会の舞台となったのは、緑豊かな庭が印象的な南麻布のフランス大使公邸

 

穏やかな口調で語りかける、ティエリー・ダナ駐日フランス大使

穏やかな口調で語りかける、ティエリー・ダナ駐日フランス大使

「私たちは、この展覧会を通じて過去、そして未来に旅をすることができる。これは、そうした旅への誘いなのです」

冒頭、「フランス人間国宝展」のイントロダクションをしてくださったのは、駐日フランス大使であるティエリー・ダナ氏。
フランスにおける工芸作家や職人の歴史は、フランス王政時代にまでさかのぼります。それから長い歴史を経て「メートル・ダール」が誕生した現在、若い世代の関心がこうした手仕事の世界に注がれていることに、ティエリー・ダナ氏は注目します。

「私たちが身を置いているこの世界は、単一化・グローバル化が進み、どこか人間らしさを失っているのかもしれません。だからこそ若い人たちは、人の温もりが感じられる工芸品に関心を持つようになり、自分の身を投じてみたいと思うようになったのでしょう」



メーテル・ダールに任命された作家には、弟子を取り、後進を育成するという「ミッション」が授けられるそうです。メートル・ダールは優れた表現者であると同時に、まさに過去から未来へと技術を橋渡しする存在でもあるのです。

 

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(解説をおこなうエレーヌ・ケルマシュテール氏。現在はアルゼンチンのフランス大使館に在籍している)

解説をおこなうエレーヌ・ケルマシュテール氏。現在はアルゼンチンのフランス大使館に在籍している

続いて、本展覧会のキュレーターであるエレーヌ・ケルマシュテール氏より、 展覧会の概要や見どころ解説、そして本展覧会に出品する作家とその作品の紹介がおこなわれました。

ここでは、その一部をご紹介いたします。


陶器

ジャン・ジレル

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©Philippe Chancel

「曜変天目」の研究に人生を捧げ、世界的に活躍する陶芸家、ジャン・ジレル氏。一時は画家の道も考えたものの、1975年に出会った中国宋王朝時代の陶芸に魅せられ、以来40年に渡り曜変天目の研究に没頭。自ら道具や窯を開発し、常に完璧を目指して革新し続けることにより、西洋の技術と極東の伝統が融合した驚くべき作品を生み出してきました。

 

©Philippe Chancel

©Philippe Chancel

世界の陶芸史上、最も美しいと称される茶碗「曜変天目」。現在、世界には4点が存在し、そのうち3点は日本で所蔵されています。本展覧会では、ジャン・ジレルの40年以上にわたる研究の集大成として60件の茶碗を展示。さらに、窯の熱によって生み出された風景画の作品群を紹介します。

 

壁紙

フランソワ=グザヴィエ・リシャール

©Philippe Chancel

©Philippe Chancel

造形芸術家としての才能を活かし、古い壁紙の修復やオーダーメイドの壁紙をおこなうフランソワ=グザヴィエ・リシャール氏は、壁紙におけるメートル・ダールの第一候補としてその名が挙げられている芸術家です。手刷り木版による壁紙印刷と出会ったことで、この道に進むことを決意。20世紀半ばにはほとんど忘れ去られていたこの芸術を復興させ、国内外の歴史的建築物の壁紙を数多く手がけてきました。

 

©Philippe Chancel

©Philippe Chancel

各時代の道具や技術の再発見・再発明に励み、常に新たな可能性を模索するリシャール氏。本展では、様々な技法を用いた壁紙の数々が展示されます。

 

雨傘・日傘

ミシェル・ウルトー

©Philippe Chancel

©Philippe Chancel

「傘は小さな機械、建築物のようだ」と語るミシェル・ウルトー氏は、自身が2000本もの傘を所有する情熱的なコレクターであり、同時に世界の王族から指名を受ける傘デザイナーでもあります。18歳からコスチュームデザイナーとして活動していましたが、イヴ・サンローランから日傘を特注されたことが転機となり、傘の製作に専念。2008年にアトリエを開き、製作とアンティーク傘の修復を全て手作業でおこなっています。

 

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©Greg GONZALEZ

傘を製作する時は必ずどこかに昔ながらの素材を使用するというウルトー氏。映画や舞台にも多くの作品を提供しているということで、どこかで見覚えのある作品が展示されるかもしれませんね。本展では、約10点の雨傘・日傘が出品されます。

 

銅板彫刻

ファニー・ブーシェ

©Philippe Chancel

©Philippe Chancel

フランス唯一のエリオグラビュール作家として知られる、ファニー・ブーシェ氏。エリオグラビュールとは、銅板と感光性のゼラチンを用いて画像を印刷する19世紀の技術で、ユニスコに無形文化遺産として登録されています。メートル・ダールの紋章彫刻家、ジェラール・ダカンからこの技術を習得した彼女は、全く新しい工芸美術を開拓。単なる印刷技術にとどまらないアート作品を生み出し続けています。

 

©Philippe Chancel

©Philippe Chancel

©Philippe Chancel

「最低3年弟子を取り、後進を育成する」というメートル・ダールのミッションに則り、彼女もまた弟子を育て、共に三次元の作品創作に挑戦しています。本展では、侍の鎧をテーマにした作品「Human」などを出品予定。

※作品の写真は全てが展示されるものではありません。

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「この展覧会には『出会い』があります。素晴らしい作品との出会いはもちろん、その作品を作った作家の人生とも出会っていただけたらと思っています」
エレーヌ氏はそう語ります。
「この展覧会は、作家からみなさんへのプレゼントのようなもの。ぜひ、彼らの人間性を感じ取ってみてください」

 

卓越した技と伝統を継承し、未来へとつなぐメートル・ダールの使命と彼らの人生を体感できる「フランス人間国宝展」。
子どもや若者向けの関連イベントも予定されており、幅広い層におすすめできる展覧会です。
開催されましたら、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。


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