本日、東京都美術館にてプレス向けの内覧会があり、7月18日から9月6日まで開催される「伝説の洋画家たち 二科100年展」を見学しましたので、その内容をレポートいたします。
「伝説の洋画家たち 二科100年展」は、二科会の創立100年を記念して開催された展示会であり、これまで二科会に所属した多くの作家の中でも優れた作家の作品を展示する展覧会となっています。二科会の発祥は、大正時代に文部省美術展(文展)は日本画が新旧二科に別れており、同様に洋画に関しても新旧二科に分けるように一部の洋画家が懇願し、遂に文展から独立した公募展を立ち上げたのが始まりとなっています。このようにして始まった公募展が、戦前から戦中、そして戦後と続き、約100年に渡り二科展として継続し開催されてきました。この展覧会では、創世記、揺籃期、発展そして解散、再興期の4期に分けて、これまで二科会に出展されて数々の作品の中からその時代の代表作が展示されています。
「伝説の洋画家たち 二科100年展」の内覧会では、特に抽象画について印象に残りましたので、抽象画の作品に関していくつかの作品をご紹介いたします。
東郷青児 《 超現実派の散歩 》 第16回展(1929年 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館蔵)
本作品は、現実では当然ありえない、空を飛び、月を見上げる人物を描いていますが、どこか自由を追い求めて、また地上の重力を社会の圧力と見立て、その重力から解放されたいという願望を描き出しているかのように感じられる作品です。そういった意味で抽象的に描きながらも社会をよく風刺した作品のようで、何か作品から訴え掛けられるような当時の状況を感じることができる作品です。
抽象画の中で、次に印象に残ったものとして岡本太郎に描かれた「重工業」という作品です。
岡本太郎 《 重工業 》 第34回展(1949年 川崎市岡本太郎美術館蔵)
工業に従事する人間が機械に振り回されている様が描かれており、何か現代にも通じるところを感じてしまいます。この機械に振り回されている人間に対して、下の方に生き生きと農業をしている人々が描かれています。思考を伴わない機械的に仕事をするという人間に対して懸念を感じて作られた作品のように感じられます。
古賀春江 《 素朴な月夜 》 第16回展 (1929年 石橋財団石橋美術館蔵)
古賀春江の「素朴な月夜」も不思議な感覚を覚える印象的な作品です。テーブルに建物が重なるという不思議な構図、フクロウが建物の上を飛ぶ姿や遠くに見え宙に浮いたように見える煙突から煙を吐き出すところなど、どれをとっても不思議な感覚を与えられる作品となっています。頭がこれまでの概念から離れていくという不思議な感覚を味わうことができます。
これまで、抽象画をご紹介してきましたが、印象に残った風景画についてもご紹介します。
国枝金三 《 栴檀の木の家 》 第8回展(1924年 大阪市立美術館蔵)
セザンヌ風に描かれた作品ということですが、洋画の中に日本を感じるところが数多くあるように思えます。奥に延びる道がこの絵に生き生きとした迫力を植えつけています。
鍋井克之 《 春の浜辺 》 第18回展(1931年 大阪市立美術館蔵)
海岸線の緩い弧が迫力を持って描かれ、目の前に大きく描かれた貝の曲線と海岸線が何か共鳴するかのように感じさせられる作品です。古き良きのどかな日本を感じることができます。
ここでは、「伝説の洋画家たち 二科100年展」に展示された一部をご紹介してきましたが、100年の歴史の中でも選りすぐりの作品が展示されており、どれも見ごたえがある素晴らしい作品ばかりです。100年という節目の年だからこそ、同じ展示会で見ることができるものだと思いますので、是非この機会に東京都美術館まで足を運び、日本の洋画の歴史をお楽しみください。