2017年10月21日(土)から2018年2月18日(日)にかけて国立科学博物館で開催される「古代アンデス文明展」の報道発表会が、6月14日に行われました。今回はその様子をレポートいたします。
現在のペルー、ボリビア、アルゼンチンとチリ北部にあたる地域に栄えた「古代アンデス文明」。先史時代から16世紀にスペイン人がインカ帝国を滅ぼすまでの約15000年間、南北4000km、標高差4500mという時間的にも空間的にも広大な地域で、多種多様な文明が生まれ、盛衰を繰り返してきました。
巨大で不可思議な地上絵。天空の聖殿マチュピチュ。スペイン人による征服まで旧大陸との接触がなかったアンデス地域では、その特殊な自然環境の中で、他に類を見ない独自の文化を築き上げてきました。
本展覧会は、1994年「黄金の都シカン発掘展」以来、その魅力と個性を紹介してきた「TBSアンデス・プロジェクト」の集大成となるものです。約200点の貴重な資料により、この地に勃興した9つの文化の盛衰を描き、アンデス文明固有の特徴と本質を明らかにします。
本展覧会は、全6章構成となっています。
第1章 アンデスの神殿と宗教の始まり
第2章 複雑な社会の始まり
第3章 さまざまな地方文化の始まり
第4章 地域を超えた政治システムの始まり
第5章 最後の帝国-チムー王国とインカ帝国
第6章 身体から見たアンデス文明
最後の王朝となるインカ帝国が覇権を握るまで、広大なアンデスの地域にはいくつもの文化が重なり、互いに影響を与え合いました。本展覧会では、カラル、チャビン、ナスカ、モチェ、ティワナク、ワリ、シカン、チムー、インカといった9つのユニークな文化を取り上げています。
それでは、今回の展示作品の中から代表的なものをご紹介いたします。
チリバヤ文化では、死後にミイラとなった人々もコミュニティに受け入れられていました。多数の副葬品とともに埋葬され、定期的に衣服を取り替えられたミイラもあります。
アンデスの多神教の風土の中で、シカンではこの仮面のような「アーモンド・アイ」をした「一神教的な」神が頻出します。仮面は支配者階級が神に変身するために使われたのでしょうか。表面には朱が塗られています。
アンデスは文字のない文明だったため、紙の代わりに織物がイメージを伝達するメディアとして重要な役割を果たしました。また、織物は身分をあらわす重要な指標でもありました。
地上絵で有名なナスカですが、土器にもすぐれて芸術的なものが多数ありました。適度に抽象化されているこの土器の絵もその一つで、ナスカの比較的初期のものです。
モチェ文化は欧米にもそのファンが多い、ペルー北海岸で繁栄したユニークな土器と華麗な黄金製品で有名な文化です。牙が生えているのはアンデス文明の神の特徴の一つです。
「アンデス文明は、人間そのものが持つ可能性を知るための材料だ」
そう語るのは、報道発表会で展示解説をしてくださった国立科学博物館副館長の篠田謙一氏。例えば子供の頭蓋骨の変形や、死体のミイラ加工など、アンデス文明には旧大陸には見られない風習が数多くあります。私たちにとっては理解しがたい風習かもしれませんが、そこには「人間とは何か」を知るための重要な手がかりが隠されているのかもしれません。
会期は10月21日(土)から。6月15日(木)からは、お得な前売りチケットや限定グッズ付きチケットの販売も開始されます。
はるかな時空の旅、すべての道はインカへ。
「古代アンデス文明展」、開催されましたらぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。