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【東京都美術館】新プロジェクト始動 上野アーティストプロジェクト「現代の写実―映像を超えて」

東京都美術館は、これまで公募団体との連携展(「公募団体ベストセレクション 美術」「TOKYO 書公募団体の今」「都美セレクション 新鋭美術家」)を開催してきました。今回から、この連携展を継承し発展させた展覧会として、毎年、テーマに沿って公募団体で活躍する優れた作家を紹介する「上野アーティストプロジェクト」を開始します。
 
上野アーティストプロジェクトとは?
上野は、多くの芸術家を育み、輩出してきた長い歴史のある「芸術家のメッカ」です。なかでも「公募展のふるさと」とも言われる東京都美術館は、様々な芸術家の作品発表の場として大きな役割を果してきました。その歴史の継承と発展のために、東京都美術館の学芸員が毎年テーマを決め、公募団体で活躍している現代作家を紹介する展覧会が「上野アーティストプロジェクト」です。美術を隔年で取り上げ、公募団体展を舞台に活躍する優れた現代作家を、若い世代を中心に、その年のテーマに沿って選定し、紹介します。
 
「現代の写実―映像を超えて」とは?
今年は美術を取り上げます。第 1 回展となる本展のテーマは「現代の写実―映像を超えて」。現代では、都市の中に氾濫する広告看板やディスプレイ、そしてテレビやスマートフォンなどを通して、映像情報がめまぐるしく飛び交っています。その中で、絵画でしかできない「現代の写実」を真摯に追及している 9 人の画家たちを紹介します。彼らは、それぞれどのようなリアリティを表現しようとしているのでしょうか?
 
出品作家
稲垣考二、岩田壮平、小田野尚之、小森隼人、佐々木里加、塩谷亮、橋本大輔、蛭田美保子、元田久治 ※50音順

 
展覧会構成と出品作家紹介
1 映像を超えて(ギャラリーC)
最初に、一見写真的、映像的に見えますが、しかし映像にはないリアリティ、映像を超える力を持つ写実絵画をご覧いただきます。
 
■小森隼人/KOMORI Hayato
白日会会員。1985年島根県松江市生まれ、奈良県大和高田市在住。静物画を中心に、ヴォリューム(量感)と、目の前に在るものの存在感或いは実在感が感じられる絵画を制作しています。陶器や果物の配置や光の当て方を研究して構成しながら、絵画でなければなしえない調和と奥深さを追求しています。

2 小森小森隼人 《靑韻》 2015 年 個人蔵

 
■塩谷亮/SHIOTANI Ryo
二紀会会員。1975年東京都生まれ、神奈川県三浦郡葉山町在住。美しい女性の瞳の輝き、髪、肌の触感、そして匂いまでがリアルに感じられる絵画を描く実績のある画家です。今回は、人物画に加えて風景画や植物など、塩谷の多彩な絵画の魅力を味わうことができます。
3塩谷

塩谷亮 《晩春近江》 2016 年 個人蔵


 
2 記憶のリアリティ(ギャラリーC)
次に、どこか懐かしい、昔の記憶が呼び覚まされるような絵画を紹介し、記憶の中にあるリアリティを喚起する風景画が紹介されます。
 
■橋本大輔/HASHIMOTO Daisuke
独立美術協会会員。1992年茨城県鉾田市生まれ、同市在住。橋本は工場などの建築物の廃墟を絵画にしています。コンクリートや鉄骨、そして雑草が光に照らされた風景は、不思議な美しさを持っています。誰もいない荒れ果てた場所が永遠化したように感じられる作品です。

4橋本
橋本大輔 《観測所》 2016-2017 年 東京藝術大学蔵

 
■小田野尚之/ODANO Naoyuki
日本美術院同人。1960 年神奈川県横浜市生まれ、同市在住。小田野は風景のなかに記憶、叙情、ノスタルジアを埋め込んだような濃密な絵画を描き続けています。幼い頃に遊んだ水辺、カエルやトンボを捕ったあぜ道や、田んぼ、そして懐かしいローカル線のある里山の風景画を体感してください。

5小田野小田野尚之 《発電所跡》 2013 年 作家蔵

 
3 リアリズムの諸相(ギャラリーA)
最後に、絵画にしかできない様々な手法を使った作家たちを見ていただきます。現代のリアリティはどこにあるのでしょうか。私たちの外界でしょうか、或いは内面の中にリアリティはあるのでしょうか?現代のリアリズムの諸相を紹介します。
 
■元田久治/MOTODA Hisaharu
日本版画協会会員。1973 年熊本県熊本市生まれ、東京都東大和市在住。現代の都市をモチーフにして、近未来の廃墟を描く版画家です。リトグラフで精緻に描かれた荒れた都市風景は、私たちの文明に警告を与えているかのようです。それは、未来の、或いは終末のリアリズムというべきでしょうか。

6元田元田久治 《Foresight – Tokyo Skytree》 2017 年 作家蔵

 
■佐々木里加/SASAKI Rika
女流画家協会委員、独立美術協会会員。東京都生まれ、東京都在住。佐々木は、眼で見た風景ではなく、脳の中で生起する電位のインパルスにリアリティを感じています。私たちは、目で風景を見ているのではなく、脳で外界を感じているのです。彼女は脳のリアリズムを追求しています。

7佐々木佐々木里加 《BRAIN MUSEUM》 2017 年 作家蔵

 
■蛭田美保子/HIRUTA Mihoko
新制作協会協友。1991 年京都府生まれ、京都府在住。蛭田は、小さいときに食欲をあまり感じないことがあったといいます。彼女は自分で食材を買い、料理した上でモチーフとして構成し、それを描くことで食物に愛情と親しみを感じています。拡大された食品のマチエールと色彩は、不思議なリアリティを持っています。

8蛭田蛭田美保子 《光来フラガンシア》 2016 年 作家蔵

 
■岩田壮平/IWATA Sohey
日展会員。1978 年愛知県名古屋市生まれ、東京都国分寺市在住。宋元画や日本画の伝統的な花鳥画のリアリズムを現代に継承している画家です。琳派的な装飾性を取り入れた画面の中に、色彩豊かな花々や鯉が描かれ、見事に構成されています。自然を愛し続けてきた東洋の写実の歴史と伝統を感じさせます。

9岩田岩田壮平 《六々魚》 2016 年 個人蔵(参考画像)

 
■稲垣考二/INAGAKI Koji
国画会会員。1952 年愛知県名古屋市生まれ、同市在住。稲垣は、人間の身体、顔など、独自のモチーフを追求し、強いリアリティを巨大な絵画の中に持ち込んでいます。シュルレアリスム的手法を用いて、写真では表せない現実感覚(皮膚感覚、内臓感覚、無意識、欲望など)を表現しています。

10稲垣稲垣考二 《斜面(三面のうち)》 2012 年 作家蔵

 

関連プログラム
・会期中に、ギャラリートーク、アーティストトーク等を予定
詳細は公式ウェブサイトをご覧ください。
http://www.tobikan.jp/exhibition/2017_uenoartistproject.html


【開催概要】

展覧会名 上野アーティストプロジェクト「現代の写実―映像を超えて」
会 期 2017 年 11 月 17 日(金)~2018 年 1 月 6 日(土)
休室日 11月20日(月)、12月4日(月)、18日(月)、25日(月)、31日(日)、1月1日(月・祝)
開室時間 9時30分~17時30分(入室は閉室の 30 分前まで)
夜間開室 金曜日は 9 時 30 分~20 時(入室は閉室の 30 分前まで)
会 場 東京都美術館 ギャラリーA・C
主 催 東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
観覧料 一般 500 円、団体(20 名以上)400 円、65 歳以上 300 円
※学生以下無料(要証明)
各種割引 ・ 特別展「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」(会期:10 月 24 日~1 月 8 日)のチケット(半券可)の提示にて入場無料

・ 11 月 18 日(土)、19 日(日) 、12 月 16 日(土)、17 日(日)は「家族ふれあいの日」により、18 歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2 名まで)は一般料金の半額

・ 12 月 20 日(水)は「シルバーデー」により、65 歳以上の方は無料

・ 身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1 名まで)は無料

・ いずれも証明できるものをご持参ください

・ 都内の小学・中学・高校生並びにこれに準ずる方とその引率の教員が教育活動として観覧するときは無料(事前申請が必要)


【同時開催】
東京都現代美術館所蔵 近代の写実展
上野アーティストプロジェクト「現代の写実―映像を超えて」展に合わせ、東京都現代美術館所蔵品の中から、明治、大正、昭和の写実的洋画が紹介されます。明治洋画の先駆者、本多錦吉郎による精緻な油彩表現、大正期の洋画グループ「草土社」の一員だった河野通勢による細密な油彩とデッサン、さらに昭和前期の人々の暮らしと社会の様相をヒューマニズムに満ちたまなざしで描き出した池部鈞、そして穏健な写実による画風で知られる牧野虎雄など。明治、大正、昭和の美術と公募団体を支えた洋画家を中心に展示して、写実絵画の近代を紹介する展覧会です。
 

【開催概要】

展覧会名 東京都現代美術館所蔵 近代の写実展
会 期 2017年11月17日(金)~2018 年1月6日(土)
会 場 東京都美術館 ギャラリーB
休室日 11月20日(月)、12月4日(月)、18日(月)、25日(月)、31日(日)、1月1日(月・祝)
開室時間 9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
夜間開室 金曜日は 9:30~20:00(入室は閉室の 30 分前まで)
観覧料 無料
主 催 東京都、東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
連 携 東京都現代美術館
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