10月16日から国立西洋美術館にて古代の黄金の傑作が一堂に会した「黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝」が開催されます。内覧会に参加してきましたので、その内容をレポートいたします。
展覧会に入って最初にある作品は古代ギリシャの壺絵でした。そこに描かれているのは金羊毛の羊につかまっているプリクソスのギリシャ神話の一場面。この金羊毛の黄金の秘宝を求め、英雄イアソンの壮大な冒険が後に始まるのです。
しかしこれがただの伝説ではない事が約40年前、ブルガリアの黒海海岸の町ヴァルナで大量の金の副埋品を納めた墓地が発見され明らかになりました。さらに出土した金製品は加工品であり今から6000年以上も前に作られた世界最古の金製品だったのです。
中でも43号墓は他の墓よりもすばらしい黄金の品々が埋葬されていたそうです。重量が1.5キロ以上もあった事から、この遺骨は地位が高い人物であったと推測されます。
6000年以上も前の加工品が今もなお輝いて存在している事と装飾品の種類の多さに驚きました。
今から90年ほど前の凍てつくような冬のある日、ブルガリア北部の小さな村で畑仕事をしていた兄弟が偶然金属器一式を掘りだしました。ガラクタだと思った兄弟は一番大きな容器だけを持ち帰り、豚のエサ皿として使いました。腹ペコの豚がエサに食らいつき容器までペロペロなめ回します。空になった容器を見ると、なんとピカピカの金の器が現れたのです。兄弟が掘りだした金属器一式はブルガリアが世界に誇る名宝ヴァルチトラン遺宝です。
13点の黄金の器で構成されるこの遺宝には、総重量12キロ以上にもなる金が用いられているそうです。実際に見ても本当にピカピカに輝いていて目を奪われました。ヴァルチトラン遺宝はブルガリア最古の博物館であるソフィア考古学博物館の中でも最も重要なものとされています。今回その遺宝が国立西洋美術館で見る事ができるのはとてもすごい事だと思います。
他にも今回の展示では首飾りやイヤリングなどの装飾品、フィブラ(衣服をとめるブローチ)、ヒュドリア(水を運ぶ容器)、神話にまつわる絵画が展示されています。
いつの時代も金の価値の重みが変わらない事と、デザインの繊細さ細やかさを感じる事が出来ました。装飾品は現代の人にも好まれそうなデザインの品も多く、今も昔も変わらない共通点が見つけられた気がして面白く感じました。
年月が経っても全く変わらない輝きをはなつ黄金の作品をぜひ間近でご覧ください。「黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝」は1月11日までの開催です。