2020年全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞した柳美里著『JR上野駅公園口』(英語版 『TOKYO UENO STATION』モーガン・ジャイルズ訳)を刊行する、株式会社河出書房新社(東京都渋谷区/代表取締役社長小野寺優)は、受賞後に河出文庫『JR上野駅公園口』27万部、同書単行本1万7千部の重版を行い、この度累計発行部数30万部を突破いたしました。
11月18日(現地時間・日本時間19日午前)に全米図書賞(翻訳文学部門)受賞が発表された直後から、書店店頭には本書を求め、多くのお客様が来店し、瞬く間に完売。週末までには全国の市場在庫が払底する事態となりました。
受賞後に急遽決定した重版分が、11月30日頃より順次書店へ着荷、ようやく店頭に並ぶと、待ち望んだ読者の手に渡り始めました。
以来、本書の販売数は週を追うごとに伸び続け、オール丸善ジュンク堂書店「文庫新書」ジャンルでは3週にわたり第1位、オール紀伊國屋書店「文庫」ジャンルでは12月7日から2週にわたり第1位となり、12月24日現在まで両書店では、月間「文庫」ランキング第1位に輝いています。
※紀伊國屋書店Publine、丸善ジュンク堂書店POSDATAうれ太、2020年12月24日調べ
今年6月にアメリカで刊行された「TOKYO UENO STATION」は、全米図書賞のロングリスト選出前から話題となり、世界中の各紙誌、各賞で「2020年ベストブック」に選出されました。
〇THE 2021 PEN AMERICA LITERARY AWARDSの「翻訳賞ロングリスト」選出(アメリカの主要文学賞)
〇ニューヨークタイムズが選ぶ「100 Notable Books of 2020」選出
〇TIMEが選ぶ今年の100冊「The 100 Must-Read Books of 2020」選出
〇ウォール・ストリート・ジャーナル紙「Favorite Books of 2020」選出
〇米ポートランドにある世界最大のインディペンデント系書店「パウエルズブックス」が選ぶ 「今年最高の翻訳文学の一冊」選出
〇米ライブラリー・ジャーナル誌(図書館員向け業界誌)が選ぶ「Best Books 2020」(世界文学部門)選出
〇Literary Hubが選ぶ「Favorite Books of 2020」選出
〇ブックカバーデザイナーが選ぶ「Best Book Covers of 2020」金賞(First Place)受賞
〇アメリカの文芸雑誌『PLOUGHSHARES』書評掲載
他
日本国内ではもちろん、今後の柳美里さんの海外でのご活躍にも、是非ご注目下さい。
アメリカで最も権威のある文学賞を受賞したことで、著者の柳美里さんは多くの取材を受け、本書はテレビ、新聞はじめ各メディアで取り上げられました。そのことで、本書が多くの人の知るところとなり、関心が集まったことが最大の要因であることは間違いありません。
しかし、12月23日に日本記者クラブで会見を行った著者の柳美里さんは、このようなことを述べられていました。
「この本は決して明るい内容ではありません。(それでもこの作品が多くの人に届いているのは)今、誰しもが苦境に立たされ『希望のレンズ』を失い、この本に描かれた『絶望のレンズ』とピントが合ったからではないでしょうか」
柳美里さんが紡ぎだした『JR上野駅公園口』というフィルターを通して浮かび上がる日本の光と闇、人間の生と死の様に、世界中の読者は自身を照らし合わせ、共感を抱いているのかもしれません。
同じ会見で、柳さんは『JR上野駅公園口』が連作「山手線シリーズ」の5作目にあたること、また、シリーズ続刊の執筆、シリーズ既刊作品の改題新装版の刊行を予定していることをお話になりました。
・第1作「山手線内回り」
・第2作「JR高田馬場駅戸山口」(河出文庫『グッドバイ・ママ』改題新装版、2021年3月刊行予定)
・第3作「JR五反田駅東口」
・第4作「JR品川駅高輪口」(河出文庫『まちあわせ』改題新装版、2021年2月刊行予定)
・第5作「JR上野駅公園口」(全米図書賞翻訳文学部門受賞作)
・第6作「山手線外回り」
・番外編「JR常磐線夜ノ森駅」
今後の展開をご期待下さい。
1967年から1983年まで設けられていた翻訳部門では1971年に川端康成著『山の音』(エドワード・サイデンステッカー訳)、1974年に後深草院二条原著『とはずがたり』(カレン・ブラゼル訳)、1982年に樋口一葉著『たけくらべ』(ロバート・L・ダンリー訳)、『万葉集』(リービ英雄訳)が受賞。
2018年に新設された翻訳文学部門では、多和田葉子著『献灯使』の英語版 『The Emissary』(マーガレット満谷訳)が日本の文学作品として36年ぶりの受賞となりました。
これに続く快挙となった『JR上野駅公園口』の受賞は、想像を超える反響を呼び、発表から一ヶ月を経た現在も多くの読者を惹きつけています。
【本書内容】
1933年、私は「天皇」と同じ日に生まれた――。
東京オリンピックの前年、男は出稼ぎのために上野駅に降り立った。そして男は彷徨い続ける、生者と死者が共存するこの国を。
高度経済成長の中、その象徴ともいえる「上野」を舞台に、福島県相馬郡(現・南相馬市)出身の一人の男の生涯を通じて描かれる死者への祈り、そして、日本の光と闇……。
「居場所のないすべての人々」へ贈る、魂の物語。
【著者紹介】
柳美里 ゆう・みり
1968年生まれ。高校中退後「東京キッドブラザース」に入団。役者、演出助手を経て、86年演劇ユニット「青春五月党」を結成。93年『魚の祭』で岸田戯曲賞、97年『家族シネマ』で芥川賞を受賞。2000年以降「山手線」をテーマにした『グッドバイ・ママ』、『まちあわせ』、『JR上野駅公園口』を刊行。16年刊『ねこのおうち』は読者の感動を呼び、話題作となった。「国家とは何か?」という問題に挑んだエッセイ集『国家への道順』、南相馬を舞台にした戯曲『町の形見』、山折哲雄との対談集『沈黙の作法』他著書多数。
【書誌情報】
書名:JR上野駅公園口
著者:柳美里
[河出文庫]
本体価:600円
仕様:文庫判、184頁
ISBN:978-4-309-41508-6
書誌URL:
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309415086/
[単行本]
本体価:1,400円
仕様:46判、上製、192頁
ISBN:978-4-309-02265-9
書誌URL:
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309022659/
〇「全米図書賞受賞の柳美里『JR上野駅公園口』はこうして書かれた。」
本書「あとがき」を弊社サイト「Web河出」にて公開中です。是非ご一読下さい。
http://web.kawade.co.jp/bunko/3906/
〇柳美里さん日本記者クラブ記者会見(2020年12月23日)
・YouTube動画(会見の様子がご覧いただけます)
https://youtu.be/RQrKlxySXiY
・参加記者のよる会見リポート(順次掲載予定)
https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/35803/report