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【東京国立博物館】 特別展『春日大社 千年の至宝』内覧会レポート

2017年1月17日(火)から3月12日(日)まで、東京国立博物館にて特別展「春日大社 千年の至宝」が開催されます。
1月16日(月)に報道内覧会が開催されましたので、展示の様子をお伝えいたします。

 

奈良時代の初め、国家の繁栄と国民の幸せを願って創建された春日大社。
春日大社は、「平安の正倉院」とも称されます。南都を襲った騒乱の中にあっても、春日大社は静謐な御本殿と神域の森に守られ、天皇や上皇、関白が奉納した究極の美しさを持つ御神宝を大切に守り抜いてきました。

奈良時代の最高の文物は正倉院にあり、平安時代の最高の工芸品は春日大社に残る。
まさに、春日大社は現代と平安の美意識をつなぐ「タイムカプセル」といえるかもしれません。

神護景雲2年(769)に御社殿が建てられて以来、20年ごとにおこなわれてきた「式年造替」(社殿の建て替えや修繕)は、平成28年には60回目を迎えました。特別展「春日大社 千年の至宝」は、この大きな節目に、実に1250年余りにわたる長き歩みの中で伝来した名品・御神宝を、「空前絶後」の規模で展示します。


それでは、展示風景をご紹介していきます。

 

 第一章 神鹿の杜

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奈良の春日大社といえば、「鹿」を抜きには語れません。奈良公園に遊ぶ鹿たちが、神の使いとして崇められてきた「神鹿」の子孫であるという事実は、今は多くの日本人が知るところでしょう。第一章の「神鹿の杜」では、春日大社の創建を物語る歴史資料とともに、神々しくも愛らしい鹿にかかわる美術が紹介されています。

千年にわたる春日大社の歴史は、鹿とともに始まります。
奈良時代の初め、武甕槌命(たけみかづちのみこと)は、常陸国(茨城県)鹿島から春日の地に降り立ち、春日大社の第一殿の祭神となりました。その後、伊波比主命(いはひぬしのみこと)、天児屋根命(あめのこやねのみこと)、比売神(ひめがみ)らを迎え、これら4柱の神々を祀る現在の社殿が造営されたのです。

 

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「鹿島立神影図」は、まさに春日大社創建の伝説を物語る絵図。鹿にまたがった武甕槌命が、大地に降臨したその瞬間を捉えています。満月とそれに絡むかのように映える藤の枝も印象的ですが、これは「藤原氏」(春日大社は藤原氏の氏神)を象徴しているのだそうです。

 

第二章 平安の正倉院

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まさに「千年の至宝」の数々を展観する、本展覧会の「目玉」ともいえる章です。
神々が使用するものとして奉納される品々を神宝と呼びますが、式年造営の際にこれらの神宝は新調され、役目を終えた旧神宝は古神宝として社家におさめられます。春日大社に伝わる古神宝は、本社に奉納された「本宮御料古神宝類」と若宮に奉納された「若宮御料神宝類」の二つに大別されます。
本章では、平安時代に制作されたこれらの神宝が展示されており、その驚くべき工芸技術の高さを現代に伝えています。

 

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いにしえの輝きを今に伝える、黄金の太刀。「金地螺鈿毛抜形太刀」です。
鞘に金粉を密に蒔いた豪華絢爛なもので、螺鈿によって雀を捕食する猫の意匠を表現しています。この「竹に猫と雀」は宋で画題として書かれていたものであり、平安時代当時の最先端の知識をうかがうことができます。

「刀は武士の魂」といいますが、まさに「最高のものを神に捧げる」という当時の人々の純粋な気持ちが、こうした作品から伝わってきますね。

 

第三章 春日信仰をめぐる美的世界

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春日大社への参詣は「春日詣」と呼ばれ、平安時代から多くの天皇や皇族が春日詣をおこなった記録が残されています。同時に、美しい自然に囲まれた春日の地は、古来より土地そのものが「聖地」として信仰を集めてきました。

 

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これは、神々を祀る社殿とともに春日の風景を描いた「春日宮曼荼羅」。本図はこうした「春日宮曼荼羅」の中でも最大規模のもので、画面上方には円相の中に座っている釈迦如来や薬師如来たちが描かれています。
「神社なのに仏さま?」
と一瞬思ってしまいましたが、当時は「神は仏が仮の姿であらわれたもの」という「本地垂迹説」に基づき、神の姿を仏で表現することがあったのですね。

 

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こうした春日信仰をめぐるさまざまな物語は、ある絵巻物として結実します。
春日大社に祀られる神々の霊験を描く、全20巻の絵巻物。有名な「春日権現験記絵」です。
日本絵巻史上、最高傑作と称されるこの作品を、ぜひ会場でご覧ください!

 

第四章 奉納された武具

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がらりと雰囲気は変わり、冷たく、妖しい輝きを放つ刀剣や絢爛な鎧の数々が展示されています。本章では、おもに中世に奉納された刀剣や甲冑を紹介します。

 

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どこかで見たことはありませんか?
これは、端午の節句の五月人形のモデルになったであろうと伝えられる「赤糸威大鎧(梅鶯飾)」。まさに国民的な知名度を誇る、国宝の甲冑です。
梅や鶯、小さな虫を飾る鍍金金具が全身に施され、その煌びやかさに圧倒されます。

 

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兄・頼朝に追われる源義経が残していったと伝えられる、通称「義経小手」。国宝です。
小手単体で文化財に登録されるのは極めて珍しいとのことです。よーく見たら刀傷があるかも?

 

第五章 神々に捧げる芸能

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春日大社において数多く行われる祭礼の中で、最も人々に知られ、親しまれてきたのが12月17日に行われる「春日若宮おん祭」です。
保延2年(1136)に始まった若宮おん祭は数多くの芸能が奉納されることから「芸能の祭り」ともいわれ、今日まで絶えることなく継承されてきました。
この章では、特に舞楽や能楽に焦点を当てて紹介しています。

 

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会場に突如としてあらわれた巨大な太鼓。これは鼉太鼓(だだいこ)と呼ばれる、舞楽の楽器です。
源頼朝から寄進されたというこの太鼓は、左方と右方で一対となり、左方には龍、右方には鳳凰の彫刻が施されています。今回出陳されたのは左方の鼉太鼓です。
一体どんな音がするのでしょう?気になった方は、ぜひ若宮おん祭に足を運んでみてくださいね。

 

第六章 春日大社の式年造営

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「60回目の式年造営を寿ぐ」展覧会の最後を締めくくる本章では、造営にかかわる諸記録から春日大社の式年造営の歴史を振り返ります。

ひときわ目を引くのが、獅子と狛犬の彫刻です。鎌倉期に制作された非常に貴重な作品で、外気に触れる環境に置かれていたにも関わらず、良好な保存状態を保っています。

ちなみに、獅子と狛犬の違いはわかりますか?頭頂にツノがあるのが狛犬、ないのが獅子です。


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「春日大社 千年の至宝」。この「千年」には「とこしえ」、永遠につなげていくという私たちの思いが込められています。
この千年間で、私たちは少なくとも技術的には長足の進歩を遂げました。しかし、神様に祈り、繁栄を願う、人として根底にある想いは何も変わりません。

戦乱の嵐が吹き荒れる中、爽やかな風が薫る春日の地で、人々は何を願ったのでしょうか?
耳をすませば、煌びやかな甲冑の裏側から、目も眩むような刀剣の輝きの陰から、祈りの言葉が聞こえてくるのかもしれません。

 

会期は2017年1月17日(火)から3月12日(日)まで。
めったに拝観することのかなわない貴重な古神宝の数々を、ぜひご覧ください。

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なんと展覧会場では、春日大社のご本殿が復元されています。新春の「春日詣」は、東京国立博物館で!


開催概要はこちら:

https://home.ueno.kokosil.net/ja/archives/11647


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