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【東京都美術館】 日伊国交樹立150周年記念「ティツィアーノとヴェネツィア派展」内覧会レポート

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《フローラ》1515年頃、フィレンツェ、ウフィツィ美術館
 
2017年1月21日(土)から4月2日(日)にかけて、東京都美術館 企画展示室にて日伊国交樹立150周年記念「ティツィアーノとヴェネツィア派展」が開催されます。
1月20日(金)に報道内覧会が開催されましたので、展示の様子をお伝えいたします。

 

薄暗い背景から、やわらかな光に照らされて浮かび上がる女性の素肌。そのタッチはきめ細やかで、温かみのある色彩と質感をまとっています。

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ作「フローラ」。
その自由闊達な筆づかいと豊かな色彩表現でヨーロッパに広く影響を与えたヴェネツィア派の巨匠、ティツィアーノの初期の代表作です。右手に握られているのは、ミニバラ、スミレ、ジャスミンなど、春に咲く可憐な花々。この美しい女性がイタリアの人々に愛されてきた花の女神、フローラであることがわかります。

 

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ヤコポ・デ・バルバリ《ヴェネツィア鳥瞰図》1511年(1500年初刷)、ヴェネツィア、コッレール美術館

15世紀〜16世紀、アドリア海に面する水の都ヴェネツィアは、海洋交易により未曾有の繁栄を謳歌していました。同時にフィレンツェ、ローマと並ぶルネサンス美術の中心地として、絵画分野においても飛躍的な発展を遂げ、独自の様式を確立していったのです。

本展覧会は、巨匠ティツィアーノを中心に、ヴェネツィア・ルネサンス初期からティツィアーノの円熟期とヴェネツィア派の画家たちの時代、そしてティツィアーノ以後の巨匠たちの時代という流れに沿って、70点近い絵画と版画を紹介します。まさに、ティツィアーノの偉業とヴェネツィア派の功績を辿る、たいへん貴重な機会です。


それでは、展示の様子をご紹介します。



 

第1章 ヴェネツィア、もう一つのルネサンス

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手前から
ジローラモ・ガリッツィ・ダ・サンタクローチェ《聖母子と聖ロクス、聖セバスティアヌス》1510年頃、ヴィチェンツァ、キエリカーティ宮絵画館
ジョヴァンニ・マンスエーティ《授乳の聖母と聖ヒエロニムス、聖ドミニクス》1505-10年、ヴィチェンツァ、キエリカーティ宮絵画館

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左:ヤコポ・デ・バルバリ《死せるキリスト》1501-03年頃、ヴィチェンツァ、キエリカーティ宮絵画館
右:マルコ・パルメッツァーノ《死せるキリストへの香油の塗布》1500年頃、ヴィチェンツァ、キエリカーティ宮絵画館

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ジョヴァンニ・ベッリーニ《聖母子(フリッツォーニの聖母)》1470年頃、ヴェネツィア、コッレール美術館

本章では、ベッリーニ工房を中心に展開するルネサンス初期の作品を展示しています。ルネサンスといえばローマやフィレンツェを彷彿とさせますが、近代美術の発展を成し遂げ、ルネサンスの神話をつくりあげたのは、他ならぬヴェネツィアでした。「イタリア最初の画家」と称されるジョヴァンニ・ベッリーニは、60年におよぶ画歴の中で、実験的で文学的な表現を探求し続け、彼のベッリーニ工房は大いに繁栄しました。
「ヴェネツィアの色彩」と呼ばれ、後世に称えられる画家たちの偉業は、ここから始まったのです。

 

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ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《復活のキリスト》1510-12年、フィレンツェ、ウフィツィ美術館

本展には、初期から後期までのティツィアーノ作品7点(うち2点はティツィアーノと工房による作品)が出品されています。第1章で展示されているのは、そのうちの一つ『復活のキリスト』。復活の象徴である赤十字の旗を持ち、顔と姿勢をやや歪ませながら、見事な躍動感を表現しています。

 

第2章 ティツィアーノの時代

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セバスティアーノ・デル・ピオンボ《男の肖像》1511年以前、ナポリ、カポディモンテ美術館

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ジョヴァンニ・スペランツァ・デ・ヴァイェンティ《聖母の誕生》1526年、ヴィチェンツァ、キエリカーティ宮絵画館

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ヤコポ・ティントレット《レダと白鳥》1551-55年頃、フィレンツェ、ウフィツィ美術館

色彩表現の金字塔「フローラ」、日本初公開の「ダナエ」といったティツィアーノの代表作やヴェネツィア派の傑作が展示された、見所満載の章です。明るく大胆、自由でのびやかな筆触のヴェネツィア絵画の真髄を堪能できます。

「画家の王者」と呼ばれ、圧倒的な成功を収めたティツィアーノ。冒頭の「フローラ」についてはこんな逸話もあります。
1800年代末、ウフィツィ美術館で展示されていた「フローラ」ですが、当時は写真技術も未発達で、展示場所には「フローラ」を模写しようとする人たちであふれていました。見かねた館長は「1日10人以上の模写は禁止」というお触れを出し、人数を制限せざるをえなかったということです。当時の熱狂ぶりが伝わってきますね。

 

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パルマ・イル・ヴェッキオ《ユディト》1525年頃、フィレンツェ、ウフィツィ美術館

こちらは「ユディト」。クラーナハの「ホロフェルネスの首を持つユディト」と同じ題材を描いているので、ぜひ比べてみることをオススメします。女性は大柄で豊満。血色も良く官能的で、斬った首の切断面は隠されています。確かに、男の首を切り落とすなら、このぐらいの体格がないとなぁ・・・と思ってしまいました。ヴェネツィア派の特徴が良く表現されています。

 

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ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《ダナエ》1544-46年頃、ナポリ、カポディモンテ美術館

ティツィアーノの神話画の傑作「ダナエ」が初来日。雷神ユピテルが塔の中に幽閉されている王の娘ダナエと交わるために黄金に姿を変え、雨となって彼女に降り注ぐ場面です。
この絵画を見た巨匠ミケランジェロは素描の未熟さについて批判はしましたが、その色彩と様式の見事さについては絶賛せざるを得ませんでした。ティツィアーノがこの作品を完成させたのはローマ。まさに「素描の神様」であるミケランジェロのいるローマに乗り込んで、ティツィアーノは圧倒的な「色彩の力」を示したのです。

 

第3章 ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼ-巨匠たちの競合

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ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《マグダラのマリア》1567年、ナポリ、カポディモンテ美術館

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パオロ・ヴェロネーゼ《聖家族と聖バルバラ、幼い洗礼者聖ヨハネ》1562-65年、フィレンツェ、ウフィツィ美術館

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ヤコポ・ティントレット《ディアナとエンディミオン(もしくはウェヌスとアドニス)》1543-44年、フィレンツェ、ウフィツィ美術館

最終章ではティツィアーノの後期作品、さらに彼の影響を受けながらも、独自の表現を模索していったヤコポ・ティントレットやパオロ・ヴェロネーゼらの作品を紹介し、ヴェネツィア派から近代絵画へと至る流れを見ていきます。

 

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ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《教皇パウルス3世の肖像》1543年、ナポリ、カポディモンテ美術館

19世紀の画家ドラクロワは、「我々はみな、ティツィアーノの血と肉である」と言いました。ティツィアーノの生みだした、新鮮で活き活きとした「血と肉」の描写に魅せられ、ルーベンス、ベラスケス、モネ・・・数多の偉大な画家たちが彼の作品を模写し、インスパイアされていったのです。
この「教皇パウルス3世の肖像」においても、年老いた教皇の乾いた肌、細かな顎鬚、狡智に長けた眼差し・・・「血と肉」の質感が見事に表現されていることがわかります。


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ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《フローラ》1515年頃、フィレンツェ、ウフィツィ美術館

「ティツィアーノはミケランジェロの豪華さ、ラファエロの甘美さ、それに当時の感覚を混ぜ合わせ、『血も肉も、涙もある』人物を描くことができました。これらの人物はまさに、私たちと同じ人間なのです」
報道内覧会では、本展の監修者であり、ベルガモ大学教授であるジョヴァンニ・カルロ・フェデリコ・ヴィッラ氏が登壇し、ティツィアーノの絵画の魅力について語ってくださいました。

会期は2017年1月21日(土)から4月2日(日)まで。
水の都で生まれた、人間賛歌。
ティツィアーノとヴェネツィアの光が描き出す生命力と官能性を、ぜひご覧いただければと思います。

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開催概要はこちら:

https://home.ueno.kokosil.net/ja/archives/11802


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