今夏、6月20日(火)より国立西洋美術館(東京・上野)にて開催する「アルチンボルド展」〈会期:2017年6月20日(火)~9月24日(日)/主催:国立西洋美術館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社〉では、開幕に向け、現在、続々と追加作品が決定しています。
本展は、ハプスブルク家の宮廷で活躍した奇才の画家アルチンボルドの日本で初めての本格的な展覧会です。この度、既に出品が決定している《春》《夏》《秋》《冬》に加え、『四大元素』《水》《大気》《火》《大地》の出品、また1点に全ての季節を表現した《四季》などの出品が決定いたしました。『四季』『四大元素』は、すべての時(四季)と世界を構成する全要素(四大元素)を描くことにより、この世を統べる皇帝を称揚しています。《水》は冷たく湿っているから、《冬》とペアになるなど組み合わせを考えて描かれたといわれており、それぞれを並べると両者は向かい合うように描かれています。
本展は、『四季』と『四大元素』がアルチンボルドの構想通りに向かい合う、世界でも例を見ない貴重で贅沢な機会といえるでしょう。
冬 | 水 |
大気 | 春 |
夏 | 火 |
大地 | 秋 |
ジュゼッペ・アルチンボルド《冬》 1563年 油彩/板 ウィーン美術史美術館蔵 ©Kunsthistorisches Museum, Wien、ジュゼッペ・アルチンボルド《水》 1566年 油彩/板 ウィーン美術史美術館蔵 ©Kunsthistorisches Museum, Wien、ジュゼッペ・アルチンボルド(?)《大気》 1566年頃(?) 油彩/カンヴァス スイス、個人蔵、ジュゼッペ・アルチンボルド《春》 1563年 油彩/板 マドリード、王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館蔵 ©Museo de la Real Academia de Bellas Artes de San Fernando. Madrid、ジュゼッペ・アルチンボルド《夏》 1572年 油彩/カンヴァス デンバー美術館蔵 ©Denver Art Museum Collection: Funds from Helen Dill bequest, 1961.56 Photo courtesy of the Denver Art Museum、ジュゼッペ・アルチンボルド(?)《火》 油彩/カンヴァス スイス、個人蔵、ジュゼッペ・アルチンボルド《大地》 1566年(?) 油彩/板 リヒテンシュタイン侯爵家コレクション ©LIECHTENSTEIN.The Princely Collections,Vaduz-Vienna、ジュゼッペ・アルチンボルド《秋》 1572年 油彩/カンヴァス デンバー美術館蔵 ©Denver Art Museum Collection: Gift of John Hardy Jones, 2009.729 Photo courtesy of the Denver Art Museum
【『四大元素』《水》《大気》《火》《大地》とは…】
《水》※『四季』の《冬》とペア
アルチンボルドの奇想や遊び心が、絶頂期を迎えている作品です。62種類の魚類や海獣など、水に関連する生き物が洗練された描写と精巧な配置によって、不気味な顔を浮かび上がらせています。ほとんどが地中海に住む生物だといわれています。宮廷の求めに応じて彼が行った自然研究の成果でもあります。
《水》(部分)
《大気》※『四季』の《春》とペア 6/24(土)より展示(予定)
空を飛ぶ鳥によって大気を表現しており、中にはハプスブルク家を象徴するワシとクジャクの姿も見えます。鳥の多くは、アルチンボルドが素描で描いています。
※制作の仕方が他の作品と異なっているようにも見え、この作品をコピーとみなす研究者もいます。
《大気》(部分)
《火》※『四季』の《夏》とペア 6/24(土)より展示(予定)
火に関連するものによって、奇怪な横顔が形作られています。頬は火打石、首と顎は燃える蠟燭とオイルランプ、鼻と耳は火打ち金によって作り出されます。目は火の消えた蠟燭の燃えさし、額は束ねた導火線、そして頭髪は燃えさかる薪です。胸部は武器によって構成されます。
※《火》の第1ヴァージョンはウィーン美術史美術館に所蔵され、この作品はその第2ヴァージョン、あるいはコピーと考えられています。
《火》部分
《大地》※『四季』の《秋》とペア
王冠のような形をした鹿の角、ヘラクレスが持つ毛皮を表すライオンの毛皮、金羊毛騎士団を表す羊毛など、細部に皇帝やハプスブルク家に関連した動物が描かれています。これらの動物の多くは、皇帝に特別な許可を与えられたアルチンボルドが、実物を近くで観察しながら素描したものだといわれています。
《大地》(部分)
【すべての季節がひとつの画に!《四季》】
四季をひとつの絵画に統合したこの作品は、アルチンボルドの自然描写の集大成とみなすことができます。
横顔で描かれている『四季』や『四大元素』との大きな違いは、本作品が肖像画のような構図を持つことであり、人物がこれほど立体的に浮き上がるアルチンボルドの作品はほかにはありません。この絵には人生の最後、つまりあらゆる季節を通り過ぎて冬にたどり着いた悲しげで憂鬱なアルチンボルドの姿とも考えられています。