《placing the boat》2017年
小さな家、空、舟などのシンプルなモチーフ。繊細に、あるいはリズミカルにおかれた色やかたち。抽象と具象の間を行き来するような杉戸洋(1970-)の作品は国内外で多くの人を魅了してきました。このたび東京にある美術館では初の個展を開催します。
会場となる地下に広がる吹き抜けの空間は、タイルの床やコンクリートを削った壁など、前川國男による建築独特の質感と佇まいをもちます。この空間から着想された最新作、深みのある釉薬に彩られた常滑のタイルによる〈虹?舟?〉や、絵画、ドローイングなどが、当館のギャラリーを色や光で満たします。さりげない空間のしつらえや様々なイメージの繋がりを見い出すなかに生まれてくる、作品と空間そして日常への眼差しが新しく開かれていくような感覚――つくることと見ることの喜びと深淵、ここでしか味わうことのできない作品との出会いをお楽しみください。
ここがポイント!
● 東京の美術館での初の個展
これまで、国内外の美術館やギャラリーで多数の個展を開催してきた杉戸洋。好評を博した、宮城県美術館、ベルナール・ビュフェ美術館、豊田市美術館での展覧会は記憶に新しいところですが、東京の美術館での個展開催は今回が初となります。
● タイルによる最新作への挑戦
会場となるのは、かつて彫塑室と呼ばれ、2012年のリニューアル前までは3方向の窓から光が差し込んでいた吹き抜けの空間。当館の展示室のなかでも、タイルの床やコンクリートのはつり壁など、前川國男による建築独特の質感や佇まいをもっています。
この空間から杉戸が着想したのは、愛知県常滑市(当館の建築も常滑で製作されたタイルを使用)にある「水野製陶園」のタイルを用いた初の作品で、幅10メートル/高さ3メートルを超える最新作です。深みのある釉薬のかかったタイルによる作品で、この空間を新たな色と光で満たします。
● 展示空間を「自宅のリビングルーム」に見立てる
近年、杉戸は建築家・青木淳氏らと共に、「あいちトリエンナーレ2013」(名古屋市美術館)でのインスタレーション、豊田市美術館などでの構築物《ぽよよん小屋》の制作も手がけてきました。また杉戸は絵画の展示においても、建築や空間のスタディを重ねた上で、時に発泡スチロールやパンチカーペットといったありふれた素材によるさりげない「しつらえ」を施し、空間を整えていきます。杉戸の空間への感性が、イメージの繋がり、作品と空間との関係を生み出し、それが見る人それぞれの体験へと豊かに広がっていきます。
本展にあたり、杉戸は「展示室を自分のリビングルームに見立て、この空間そのものを綺麗に見せたいと思った。展示室は現状復帰が基本で壁や床材を変えたりはできない、いわば賃貸の部屋のようなもの。そういった制約も含めて楽しんだ。」と語っています。
【作家紹介】
杉戸洋(すぎとひろし)
1992年愛知県立芸術大学美術学部日本画科卒業
1996年絵画制作のためアメリカに渡る
帰国後国内外の展覧会に参加
現在、名古屋を拠点に活動
近年の主な個展
2015年宮城県美術館「杉戸洋展天上の下地」
2015年ベルナール・ビュフェ美術館「杉戸洋frame and refrain」
2016年豊田市美術館「杉戸洋――こっぱとあまつぶ」
近年の主なグループ展
2013年「あいちトリエンナーレ2013揺れる大地」名古屋市美術館(建築家・青木淳とのユニット「スパイダーズ」として参加)
2014年「開館20周年記念MOTコレクション特別企画クロニクル1995-」東京都現代美術館
2014年「ロジカル・エモーション――日本現代美術展」ハウス・コントルクティブ美術館(スイス、チューリヒ)(2015年クラクフ現代美術館(ポーランド)、ザクセンアンハルト州立美術館(ドイツ)を巡回)
2017年「開館15周年記念展『生命の樹』」ヴァンジ彫刻庭園美術館
【開催概要】
展覧会名 企画展「杉戸洋とんぼとのりしろ」Hiroshi Sugito module or lacuna
会期 2017年7月25日(火)~10月9日(月・祝)
休室日 月曜日、9月19日(火)
※ただし、8月14日(月)、9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)は開室
開室時間 9時30分~17時30分(入室は閉室の30分前まで)
夜間開室 金曜日は9時30分~20時
※ただし、7月28日、8月4日、11日、18日、25日は9時30分~21時
会場 東京都美術館ギャラリーA・B・C
主催 東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
協力 ケンジタキギャラリー、小山登美夫ギャラリー
特別協力 水野製陶園ラボ
観覧料 一般800円、団体(20名以上)600円、65歳以上500円、大学生・専門学校生400円
※高校生以下無料(要証明)