2017年9月6日(水)から9月15日(金)まで、上野の森美術館にて「何香凝芸術名作展」が開催されます。9月5日に内覧会が開催されましたので、その様子をレポートいたします。
今年は日中国交正常化45周年にあたり、来年には日中平和友好条約締結40周年を迎えます。この節目にあたり開催される本展では、中国の芸術家であり、日本とも縁の深い何香凝(かこうぎょう・1878-1972)の名作が展示されます。
芸術と革命の出発点・東京
何香凝は、孫文の片腕といわれた廖仲愷(りょうちゅうがい)の妻であり、中国近現代の女性政治家・芸術家として、その功績とともに国際的に広く知られています。その芸術活動と革命に捧げた生涯の始まりが、東京でした。
1903年、何香凝は夫の廖仲愷とともに勉学のために来日し、1909年から1911年まで女子美術学校(女子美術大学の前身)で絵画を学びました。そして日本滞在中に孫文と面識を持ち、後に中国の民主革命に尽力することとなります。
何香凝
革命のシンボル・獅子
何香凝の初期の代表作は「獅子」や「虎」など動物を画題にしたものが多くあります。それらは精微な美しさが際立ち、主に「日本画の時代」と言われています。また、獅子や虎は勇猛果敢の象徴として好まれ、中国近現代の政治活動のシンボルとして多く扱われました。何香凝の描く動物の絵画もまた、中国革命に対する激しい闘志を凝縮させたものだといわれています。
身を起こし、何かを見据える雄獅。知性と力強さを感じます。
切り立った崖で虚空に吠える猛虎。峰々に響く咆哮が聞こえてきそうです。
高潔の四君子
中国では、草木や花の中でも「梅」「竹」「蘭」「菊」は特にその姿が高潔で、あたかも君子の趣があることから、「四君子」と例えられ、画題としてたびたび用いられてきました。
何香凝もまた文芸に親しむ友人たちの影響を受け、四君子を多数描くようになります。その後、彼女の作品は中国の伝統的な文人画や山水画の流れを汲むものへと変化していきました。
こちらの菊の絵画は、親しくなった日本人の友人のために描かれた作品。
湖畔に浮かぶ月影と小舟。静まり返った自然の美しさが描かれています。
本展では、同時代の芸術家との合作も展示されています。それらの作品からは、合作ならではの活気や風格を味わうことができます。
何香凝ほか5名の合作。緑の山々に紅葉の赤が映えます。
中国で初めて個人の名を冠した国立美術館である「何香凝美術館」が設立されるほど、高名な芸術家である、何香凝。彼女の絵画には日本的な技法が組み込まれており、それらは日中友好の歴史的証明でもあります。
皆様も何香凝の作品に触れ、日中文化交流の関わり合いの深さと歴史を感じてみてはいかがでしょうか。
開催概要
会 期 | 2017年9月6日(水)~9月15日(金) |
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会 場 | 上野の森美術館 |
開館時間 | 10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで) ※会期中無休、展示替えはありません。 |
入館料 | 無料 |
交 通 | JR上野駅公園口より徒歩3分 東京メトロ・京成電鉄、上野駅より徒歩5分 |
主 催 | 何香凝美術館、公益社団法人日本中国友好協会 |
公式サイト | http://www.ueno-mori.org/exhibitions/article.cgi?id=221 |