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【東京藝術大学大学美術館】シルクロード特別企画展「素心伝心-クローン文化財 失われた刻の再生」内覧会レポート

2017年9月23日(土)から10月26日(木)まで、東京藝術大学大学美術館にてシルクロード特別企画展「素心伝心-クローン文化財 失われた刻の再生」が開催されます。
9月22日に報道内覧会が開催されましたので、展示の様子をお伝えいたします。

 

2001年3月、ある悲劇的なニュースが世界を駆け巡りました。過激派組織タリバンによってバーミヤンの大仏が爆破され、永遠に消失してしまったのです。文化財は唯一無二の存在ですが、その真正性は本来、複製が不可能です。この知らせを聞き、失われた貴重な遺産を思って世界中が悲しみに暮れました。

しかし、東京藝術大学は、こうした永遠に失われてしまった文化財の姿を現代に蘇らせるための試みとして、ある特許技術を開発しました。それが「クローン文化財」の技術です。

 

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クローン文化材は、最先端のデジタル技術と伝統的なアナログ技術を融合し、人の手技や感性を取り入れることによって、単なる複製にとどまらない新たな芸術を生み出そうという試みです。オリジナルの同素材、同質感、そして文化的背景など、芸術のDNAに至るまでを再現した「文化財のクローン」は、オリジナルと同価値、時にそれを凌駕することも可能になるでしょう。

本展覧会では、劣化の進行や戦火など、様々な危機に瀕しているシルクロードの文化財を「クローン文化財」として再現。さらに国々の絵画・彫刻作品や写真をあわせ、シルクロードから奈良に至るまでの文明の道筋をたどります。


それでは、展示の一部をご紹介いたします。



 

法隆寺金堂 日本

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日本を代表する文化遺産・法隆寺金堂の展示スペース。本展覧会の特徴として、オリジナルが持つ雰囲気を五感で楽しみ、再現できるように様々な趣向が凝らされています。会場には読経の声やお香の香りが漂っており、さらにコンピュータを通した音や映像を通し、実物がもたらす印象を体験できるようになっています。

 

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普段、間近では見ることができない法隆寺のご本尊・釈迦三尊像。本展では、3D計測や3Dプリンターの技術を用いて、金堂仏として再現されていますが、まるで実物と見紛う精巧さ!寺社のご本尊は門外不出のものが多く、滅多なことでは拝観がかなわないものもありますが、「クローン文化財」の技術によって、こうした文化財を安全に公開することが可能になります。

 

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昭和24年、火災に見舞われて焼失してしまった金堂の壁画。同素材の絵具を用いた緻密な手作業と高精度なデジタル画像処理・印刷技術を融合させた新たな文化財複製技術により、焼失「以前」の状態に復元され、公開されています。

 

高句麗江西大墓 北朝鮮

クローン文化財:高句麗古墳群江西大墓

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中国東北部および北朝鮮に所在する、高句麗古墳群は、2004年に世界遺産に登録されています。本展では、高句麗絵画の最高傑作と称される四神図(青龍、朱雀、白虎、玄武)が描かれた江西大墓の壁面を再現しています。

現地の壁画は良質な花崗岩の上に直接描かれているため保存が難しく、劣化が進んでいるそうです。しかし本展で展示された玄室の壁画は、新たな再生技術により、経年劣化によるシミや汚れを除去。冷たい石の質感とともに、鮮やかな色彩で再現されています。

本物を「超える」クローン文化財の技術。その大きな可能性が感じられます。

 

バーミヤン東大仏 仏龕天井壁画 アフガニスタン

クローン文化財:バーミヤン東大仏天井壁画復元2

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遺跡内のディスプレイでは、大仏の頭上から見たバーミヤンの風景を眺望できる

遺跡内のスクリーンでは、大仏の頭上から見たバーミヤンの風景を眺望できる

かつて玄奘三蔵が訪れ、仏教文化の繁栄をあらわすように光り輝いていたアフガニスタン・バーミヤンの東西大仏。しかし、この貴重な人類遺産は2001年にタリバン・イスラーム原理主義の勢力により破壊されてしまいました。

本展では、バーミヤン東大仏が破壊される前、1970年代に撮影されたポジフィルムと、仏龕の3Dデータをもとに画像を合成し、絵具で彩色して東大仏天井壁画「天翔る太陽神」を再現。さらに大スクリーンに映し出された4K画像が、バーミヤン峡谷に吹き渡る清涼な空気さえも感じさせてくれます。

テロリズムは、「もの」を壊すことはできる。しかし、「もの」に宿った私たちの「こころ」を壊すことはできない。そんなメッセージが、この展示には込められているのかもしれません。

 

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また、クローンはそのほとんどが間近で鑑賞可能であり、中には「さわれる文化財」も展示されています。これまでは「結界」の外側から眺めるだけだった文化財。会場では「どうぞ、さわってみてください」と促され、みんな最初はおそるおそる手を差し伸べていましたが、やがて自然に笑みがこぼれ出していました。

「クローン」とは、もともとギリシャ語で「挿し木」を意味するそうです。クローン文化財という挿し木によって新たな文化が芽吹き、広がっていく。今回の展覧会はその端緒となるのでしょうか。


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本展の「素心伝心」という言葉には、それぞれの民族の「素」の心を知り、互いに心を伝えあい、心を通じあうことによって平和を育む一歩としたいという思いがこめられているそうです。

「精神的なものを次の世代に送るためのひとつの道具として、クローン文化財が活用されてほしいと思います。みなさんがひとつひとつに込められた『まごころ』まで感じ取っていただけたら、今回の展覧会は成功といえるでしょう」
本展企画者の宮?正明教授はそのように語ります。

 

会期は2017年9月23日(土)から10月26日(木)まで。
クローン文化財が現代によみがえらせた、民族のこころ。
シルクロードの遺跡をたどって、彼らに会いに行ってみてはいかがでしょうか。


開催概要はこちら:

https://home.ueno.kokosil.net/ja/archives/16223


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