2017年9月26日(火) から11月26日(日)まで、東京国立博物館では興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」が開催されます。9月25日に報道内覧会が開かれましたので、展示内容をご紹介いたします。
日本で最も著名な仏師、運慶。運慶と聞いて奈良・東大寺の「金剛力士立像」を思い浮かべるかたも多いでしょう。まるで精神が宿っているような圧倒的な存在感は、制作された鎌倉時代から変わらず、私たちを魅了し続けています。
本展は、青年期の運慶の活動拠点であった興福寺にある中金堂(ちゅうこんどう)が300年ぶりに再建されることを記念し、開催されるものです。運慶が造った仏像は31体と言われていますが、本展ではそのうち22体が展示され、さらに、父・康慶(こうけい)、息子の湛慶(たんけい)、康弁(こうべん)ら親子3代にわたる作品を通覧することができ、まさに運慶芸術の真髄に触れることができる展覧会となっています。
それでは、本展の構成に沿って作品の一部をご紹介いたします。
第1章:運慶を生んだ系譜 康慶から運慶へ
若くしてすでに優れた作品を生み出していた運慶は、父・康慶のもとで学び、造像をしていました。本展の第1章では、康慶作品と運慶の初期作品を展示しており、運慶が受け継いだ作風を見ることができます。
四天王立像(康慶作、奈良・興福寺蔵)
大日如来坐像(運慶作、奈良・円成寺蔵)。運慶の処女作。
無著菩薩立像(運慶作、奈良・興福寺蔵)
第2章:運慶の彫刻 その独創性
第1章で展示される作品は、康慶から継承した作風の色が濃く、運慶の独創性をはっきりと見ることはできません。第2章では、運慶の独創性が発揮され、量感と写実性に富んだ作品たちが展示されます。
運慶の独創的な造形は、文治2年(1186年)に北条時政の注文で造った5体に初めて見られます。鎌倉時代の人々が仏像に求めたのは、仏が本当に存在する実感を得たい、ということだったのかもしれません。運慶はこれらの要求に応え、実写性に富んだ作風をつくり出していったのでしょう。
毘沙門天立像(運慶作、静岡・願成就院蔵)。その独創性が初めて発揮された作品の一つ。
八大童子立像(運慶作、和歌山・金剛峯寺蔵)
第3章:運慶風の展開 運慶の息子と周辺の仏師
運慶には6人の息子がおり、いずれも仏師になっています。本章では6人の息子のうち、湛慶(たんけい)、康弁(こうべん)に絞って展示されます。
湛慶は父とは異なり、東国との関係がありませんでした。そのためか、湛慶作品は運慶風の重厚な作風を継承しつつも、より洗練されたものとなっています。
迦楼羅坐像(左)・夜叉坐像(中)・執金剛神立像(右)(湛慶作、京都妙法院蔵)
康弁の確かな作品は龍燈鬼しかありません。しかし、その筋肉表現は大変すばらしく、運慶作品と比べても遜色がないほど重厚な作品となっています。まだ健在だった運慶の指導のもとに造ったものと考えられています。
龍燈鬼立像(康弁作、奈良・興福寺蔵)。頭上に燈籠を乗せて見上げる姿がどこか滑稽です。
本展で展示される仏像の多くは、360度全方位から見ることができ、お寺では見ることができない後ろ姿などもご覧いただけます。これは、東京国立博物館平成館のスケールだからこそ実現できる展示方法です。
その一方で、仏像とは信仰の対象であり、造られた土地や安置された場所とは切り離せない存在でもあります。東京国立博物館企画課長の浅見龍介さんは「この展覧会で感銘を受けた仏像があれば、実際に安置されているお寺を訪れてほしい」と話していらっしゃいました。
皆様もぜひ本展でお気に入りの仏像を見つけて、安置されるお寺へと足を運んでみてはいかがでしょうか。
◇興福寺中金堂再建記念特別展 運慶
■会 期 2017年9月26日(火)~11月26日(日)
■会 場 東京国立博物館[平成館](〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9)
■交 通 JR上野駅公園口、鶯谷駅南口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、東京メトロ千代田線根津駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分
■休館日 月曜日 *ただし10月9日(月・祝)は開館
■時 間 午前9時30分~午後5時 金曜・土曜および 11月2日(木)は午後9時まで開館
■主 催 東京国立博物館、法相宗大本山興福寺、朝日新聞社、テレビ朝日
■お問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)
■公式ホームページ http://unkei2017.jp/