【国立科学博物館】「古代アンデス文明展」内覧会レポート

2017年10月21日(土)から2018年2月18日(日)にかけて国立科学博物館で「古代アンデス文明展」が開催されます。10月20日にプレス内覧会がおこなわれましたので、展示の様子をお伝えいたします。

 

南米大陸のペルー、ボリビアを中心にした地域に栄えた古代アンデス文明。南北の広がりは約4000km、砂漠の海岸地帯から人が住む限界の高地までの標高差は4500mにもおよぶこの広大な地域では、変化に富んだ自然環境の影響もあり、古代からさまざまな文化が勃興しました。

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日本人考古学者、島田泉教授が発見したシカン文化。地上絵で有名なナスカ文化。そしてマチュピチュで有名なインカ帝国。彼らの残した謎めいた遺物、作品は私たちを神秘的な空想の旅に誘います。

 

20年以上、5回にわたって古代アンデス文明の展覧会を実施してきた国立科学博物館ですが、今回の「アンデス文明展」では、中央アンデス地域に人類が到達した時代から、スペイン人によるインカ帝国征服までの約15000年の間に生まれたアンデス文明の全体像を紹介することを意図しています。
本展では、興亡を繰り返した数多くの文明の中から代表的な9つの文化を取り上げ、優れた意匠の土器・織物、黄金の仮面やミイラなど、約200点の選び抜かれた貴重な資料とともに紹介します。


それでは、展示内容の一部をダイジェストでご紹介いたします。

 

第1章 アンデスの神殿と宗教の始まり

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第1章では、アンデス文明にとって決定的に重要な変化のあった時期である先土器時代後期(紀元前3000〜1500年頃)の文化を紹介しています。この頃に高地では初歩的な農業経済に基づく定住生活が広まり、地域間の相互交流が強まりました。さらに、死者の扱いや工芸品から、社会の階層が文化し始めたこともうかがい知れます。

 

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コトシュ遺跡で発見された神殿に浮き彫りで飾られていた「交差した手」。左寄りに配置されていたのが「男の手」(写真左)、右寄りが「女の手」(写真右)と呼ばれています。腕の重ね方も左右で異なっていますが、その意味するところは定かではありません。アンデス文明最初期の宗教美術の傑作として知られる作品です。

 

第2章 複雑な社会の始まり

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ペルー北部の南端近くに位置するチャビン・デ・ワンタルの宗教の広まりが地域同士の相互交流を生み、アンデス文明は最初の文化的統一を果たします。本章では、チャビン文化の遺物を紹介し、アンデス初期の宗教や農耕について解説しています。

 

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まばゆいばかりの輝きを放つ黄金の冠や耳飾り。チャビン文化と同時代のクントゥル・ワシ遺跡から発掘された副葬品です。南北アメリカ最古の黄金製品といえるもので、同文化における冶金技術の発展や、宗教指導者が権力に関心を持つようになったことが読み取れます。

 

第3章 さまざまな地方文化の始まり

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第3章では、独特の美術様式や洗練された技術による金属製品が特徴的なモチェ文化、そして地上絵で広く知られるナスカ文化の多彩色の工芸品などが取り上げられています。文化的に成熟した作品が揃った、見所満載の章です。

 

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「死んだ男性と生きている女性の性行為を描写した鎧型注口土器」(モチェ文化)。タイトルを見て「ええっ」と驚いてしまいますが、モチェ文化の死生観を伝える貴重な作品です。モチェ文化は死を生命の一段階と考え、死者と生者は互恵的な絆で結ばれていると考えていました。祖先を敬い世話をする風習は、今でもアンデスに広く残っています。

 

第4章 地域を超えた政治システムの始まり

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6世紀後半にアンデスを襲った異常気象は、中央アンデスの高地と海岸部の両方に文化や人口分布の大きな変化をもたらしました。本章では6世紀に勃興したティワナク文化と、それに続くワリ文化シカン文化を取り上げ、変革を経てペルー海岸部に強力な覇権国家が樹立するまでの軌跡を辿ります。

 

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中期シカンのロロ神殿「西の墓」から発掘された被葬者と、埋葬時に身につけていた仮面。被葬者の骨には、鮮やかな赤い辰砂が塗られています。強い赤は生命力の象徴であると考えられ、故人の骨を辰砂を塗る行為は、死者の再生を願う心が込められていたのではないかと考えられています。

 

第5章 最後の帝国ーチムー王国とインカ帝国

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第5章では、衰退したシカンに代わって台頭したチムー王国、そしてクスコ地域の小さな政体から急激に拡大して覇権を唱えたインカ帝国を取り上げ、その実像にせまります。

 

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こちらは有名な「キープ」。歴史の教科書で目にした人も多いと思います。文字を持たなかったアンデスでは、紐に結び目をつくり、結び目の位置とタイプにより10進法にもとづく数字を表現して、情報伝達の手段としました。結び目に記録された記録は、帝国の宗教や歴史、経済の情報など、多岐にわたります。

 

第6章 身体から見たアンデス文明

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最終章となる第6章では、発掘された人骨やミイラを展示することにより、古代アンデス文明の身体観、死生観を浮き彫りにします。
生贄の殺害や頭蓋骨の変形など、私たち現代人には理解しがたい風習の数々。しかしそこには、「人間とは何か」という普遍的な問いかけに対する、重要な手がかりが隠されているのかもしれません。


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「本展では、これまでほとんど知られていなかったワリ文化やティワナク文化も取り上げ、『アンデスとは何か?』という疑問にお答えするように、全体を構成しています。アンデス文化とは何なのか、そう問いかけながら観ていただければ幸いです」

本展を監修した南イリノイ大学人類学部・島田泉 教授はそのように語ってくださいました。

 

はるか遠い時代、はるか遠い地のアンデスに花開いた多様な文化。
「アンデス文明展」は、その全貌を「点」ではなく、はじめて「線」で描こうとする試みです。

会期は2017年10月21日(土)から2018年1月28日(日)まで。
ぜひこの機会に、足を運んでみてはいかがでしょうか。


詳細はこちら:
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2017/andes/


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