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【東京国立博物館】特別展「名作誕生―つながる日本美術」報道発表会レポート

東京国立博物館 平成館では、2018年4月13日より、特別展「名作誕生―つながる日本美術」を開催します。11月13日に報道発表会が開かれましたので、その模様をご紹介いたします。

 
日本美術史に数多く存在する「名作」と呼ばれる作品。しかしこれらは単独で誕生したわけではなく、同時代や過去の作品、あるいは海外作品など、さまざまな影響を受けることで生まれてきました。そしてまた、名作は受け継がれ、新しい名作の誕生へとつながるのです。

本展覧会では、こうした作品同士の影響関係や共通する社会背景に着目して、地域や時代を超えた名作の数々を展示します。広く知られた国宝・重要文化財も展示されるので、日本美術の入門編としてもお楽しみいただけるものとなっています。
 
本展覧会では12のテーマを設け、4章構成で作品を展示します。

第1章:祈りをつなぐ
① 一木(いちぼく)の祈り
② 祈る普賢
③ 祖師に祈る

第2章:巨匠のつながり
④ 雪舟と中国
⑤ 宗達と古典
⑥ 若冲と模倣

第3章:古典文学につながる
⑦ 伊勢物語
⑧ 源氏物語

第4章:つながるモチーフ/イメージ
⑨ 山水をつなぐ
⑩ 花鳥をつなぐ
⑪ 人物をつなぐ
⑫ 古今をつなぐ


それでは各章ごとの展示作品をご紹介いたします。
 

第1章:祈りをつなぐ



仏像や仏画などの信仰を背景とする美術は、経典などに基づいて造形化される一方、革新的技法や名作を規範として継承され、数々の名作が誕生しました。この章では、古代から中世へ、人々の祈りがつないだ仏像、仏画、説話画を展示します。

① 一木(いちぼく)の祈り

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天平勝宝5年(753)、中国・唐の高僧、鑑真(がんじん)とともに渡来した仏師たちは、日本の木材に着目し、一本の木から重量感あふれる仏像を彫り出しました。同時代においても最新の表現だったこの木彫像につらなる仏像は、平安前期を通じて数多く造られ、大きな影響を残しました。
 
② 祈る普賢

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『法華経』に基づいて表される白象に乗った普賢菩薩像(ふげんぼさつぞう)は、9世紀半ばに慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)が唐から請来した図像によって、新たに合掌する姿で現す潮流ができました。
 
③ 祖師に祈る

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日本仏教の祖として尊崇される聖徳太子の生涯を描いた絵伝は、古代から数多く制作されました。ここでは現存最古の祖師絵伝である「聖徳太子絵伝」などの名品を通して、絵伝と絵堂がつなぐ祖師への祈りをご覧いただけます。
 

第2章:巨匠のつながり

巨匠たちは、海外作品や日本の古典から学び、継承と工夫を重ねることで個性的な名作を生み出しました。第2章では雪舟、宗達、若冲の3人に焦点を絞り、代表作が生まれるプロセスに迫ります。

④ 雪舟と中国

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雪舟(1420~1506?)は過去の名画家の作品に学ぶだけではなく、水墨画の本場である中国へ旅し、同時代である明の画風も取り入れて、独自の水墨画を確立しました。ここでは雪舟と中国のつながりについて、見ることができます。
 
⑤ 宗達と古典

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安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した俵屋宗達(生没年不明)は、「俵屋」という絵屋を営む町絵師でありながら、『伊勢物語』や『西行物語』など古典文学を主題とした絵画を多く描きました。ここでは扇絵と絵巻の名作を通して、宗達の創作の源を探ります。
 
⑥ 若冲と模倣

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若冲(1716~1800)の作品には、既成の形を再利用して新たに造形を作るという表現上の特徴があります。画風を模索していた頃には中国の宗元画(そうげんが)を模写し、また生涯を通じて同じモチーフの同じ型を繰り返し描いて、独自の表現に至りました。ここでは、鶴図と鶏図について、宋元画の模倣と自己模倣という切り口でご覧いただけます。
 

第3章:古典文学につながる

日本を代表する古典文学である『伊勢物語』や『源氏物語』。その作品の情景は、様々な工芸品によって表されてきました。第3章では、文学作品から生まれ、継承された意匠の名品をたどります。

⑦ 伊勢物語

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平安時代初期に成立した歌物語である『伊勢物語』からは、燕子花(かきつばた)と橋を表す「八橋」、紅葉に彩られた山道を表す「蔦細道」を取り上げます。
 
⑧ 源氏物語

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『伊勢物語』に続き平安時代中期に成立した長編物語『源氏物語』からは、垣根に咲く夕顔と御所車を表す「夕顔」と、梅にとまる鶯を表す「初音」を取り上げます。
 

第4章:つながるモチーフ/イメージ

名作たちは、すでにある名作の型や優れた技法を継承しつつ、挑戦的手法により誕生してきました。第4章では、「山水」「花鳥」「人物」を主題とする作品に描かれている、さまざまなモチーフや型をご覧いただくことで、人と美術のつながりを感じていただけます。

⑨ 山水をつなぐ

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ここでは湿潤な大気に水墨の濃淡を駆使して描きつがれた「松林」と、あざやかに桜が咲き誇る「吉野山」を通して、名所や風景がいかに描き継がれてきたかをご覧いただきます。
 
⑩ 花鳥をつなぐ

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ここでは「蓮」と「雀」に注目し、中国から日本へとモチーフが伝承され、連綿と描き継がれた様相が紹介されます。
 
⑪ 人物をつなぐ

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17世紀初頭、現世を楽しもうという時代風潮の高まりにあわせて、風俗画や人物画が描かれました。ここでは男女の間で交わされる視線と、古典文学からの図柄の転用が表す意味に注目し、風俗画や浮世絵の誕生について考えます。
 
⑫ 古今をつなぐ

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19世紀に西洋から流入した新しい表現技法は、日本美術を大きく変えました。ここでは大正から昭和にかけて活躍し、写実的画風で知られた洋画家・岸田劉生(1891~1929)を取り上げ、東洋絵画に学んで意識的にその伝統につながった様子を、代表作から見ていきます。


主催者代表として登壇された井上洋一(東京国立博物館 副館長)さんは、「展示される名品の数々は、1点だけでも見ごたえがあるが、同じ空間で見ることにより分かる名品たちのつながりを楽しんでほしい」と話していらっしゃいました。

これまでにない芸術体験ができる本展覧会。2018年4月に開催されましたら是非、足をお運びください。


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