画像提供:国立科学博物館
国立科学博物館では、2017年12月19日(火)から2018年3月4日(日)の期間、南方熊楠生誕150周年記念企画展「南方熊楠-100年早かった智の人-」が開催されます。
南方熊楠は、″隠花植物″(コケやシダ、菌類など花の咲かない植物を総じて指して用いられた昔の言葉)全般に多数の資料を収集した、在野のナチュラリストです。渡米・渡英したのち、幅広い人々と交流し、和歌山県で隠花植物の研究に没頭したり自然保護運動に力を注いだ生涯や、熊楠が語った生態学・宗教・民俗など、様々な分野にわたる世界観は、多くの人を魅了し続けています。
南方熊楠は、神羅万象を探求した「研究者」とされてきましたが、近年の研究では、むしろ広く資料を収集し、蓄積して提供しようとした「情報提供者」として評価されるようになってきました。本展では、熊楠の活動のキーアイテムである日記・書簡・抜書(さまざまな文献からの筆写ノート)を展示。また、新たに発見された菌類図譜も本邦初公開し、″熊楠の頭の中をのぞく旅″に誘います。
展示構成
1. 熊楠の智の生涯
幼いころから天才的な記憶力を発揮し、博物学や語学に優れていたという南方熊楠。資料を通じて熊楠の生涯を概観します。
2. 一切智を求めて
帰国後の熊楠は、和歌山県の那智や田辺で″隠花植物″や、民俗の研究にのめりこみました。熊楠使用のフィールドワークの道具を展示し、活動の一端を紹介します。
3. 智の広がり
熊楠が収集した、多様性に満ちた″隠花植物″。それはいったいどんな植物なのでしょう。科博の研究者がいまでも研究しているこれらの生物(菌類・地衣類・大型藻類・微細藻類)を、科学的視点で、熊楠標本や現在の標本資料と対比しながら紹介します。
4. 智の集積-菌類図譜-
熊楠は、多数の菌類を集め、描写・記載し、数千枚にも及ぶ「菌類図譜」を作成しました。最近新しく発見された「菌類図譜・第二集」を初公開。従来知られていた図譜(第一集)も、合わせてバーチャル展示。
5. 智の展開-神社合祀と南方二書-
膨大な知識とフィールドにおける経験は、やがて、神社合祀反対運動を通じた自然保護運動をうったえる「南方二書」として結実しました。二書に登場する植物の標本(現在の植物)を展示し、熊楠の膨大な知識・経験が自然保護の実践に結びついたことを紹介します。
6. 智の構造を探る
熊楠の活動は、自然史にとどまらず、人文系の分野にまで及びました。代表作である「十二支考・虎」も、膨大な情報収集の上に編み出されたものです。「虎」には、熊楠が「腹稿」と呼んだメモ書きが発見されており、熊楠の頭の中にある情報をまとめていく過程を示したものとして、現在でも研究されています。「虎」の腹稿研究の紹介を通じて、熊楠の思考に迫ります。
2017年は熊楠の生誕150周年に当たります。南方熊楠の生涯とその業績を振り返り、現在の視点でその位置づけを考える本展に、是非ご期待ください。
開催概要
展覧会名 | 南方熊楠生誕 150 周年記念企画展 「南方熊楠-100 年早かった智の人-」 |
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会場 | 国立科学博物館 日本館1階企画展示室 |
開催期間 | 2017年12月19日(火)~ 2018年3月4日(日) |
開館時間 | 午前9時~午後5時 (金・土曜日は午後 8 時まで) |
入館料 | 常設展示入館料のみでご覧いただけます。 (一般・大学生:620 円 高校生以下および 65 歳以上無料) |
休館日 | 毎週月曜日、12月28日(木)~2018年1月1日(月)、1月9日(火) ただし、1月8日(月)、2月12日(月)は開館 |