2018年7月3日(火)から2018年9月2日(日)にかけて東京国立博物館で開催される特別展「縄文ー1万年の美の鼓動」の報道発表会が、2月21日に行われました。今回はその様子をレポートいたします。
現在から遡ること約1万3000年前。長く続いた氷期は終わりを迎え、温暖で湿潤な気候に変化した日本列島には山河が整い、現在の日本列島のような景観が生まれました。
当時の人々は自然環境を生かして狩猟や採集、漁労による生活を営み、土器や石器、土偶や装飾品などのさまざまな道具をその手で作り出しました。縄文時代という名称は、彼らが生み出したさまざまな土器に縄目の文様が刻まれていたことに由来します。
彼らが生活の中で作り出した土器は、実用品のみならず儀礼用の道具などさまざまで、力強さと神秘的な魅力にあふれています。
特別展「縄文ー1万年の美の鼓動」は、「縄文の美」をテーマに、縄文時代草創期から晩期まで、日本列島各地で育まれた優品を一堂に集め、そのかたちに込められた人々の技や思いにせまります。
本展覧会のみどころは・・・
1、縄文の国宝・重要文化財、大集合!
縄文時代の遺跡はこれまでに9万件を超える数が確認されていますが、数多ある縄文時代の出土品のなかでも国宝はたったの6件。本展覧会では、造形の極みともいえるこの6件すべてが初めて集結します(7月31日(火)〜9月2日(日))。
2、「縄文の美」をかつてない規模で紹介
縄文時代は約1万年ものあいだ続き、東西3000kmを越える日本列島に広く展開しています。本展では縄文時代のスケール感をそのままに、その始まりから終わりまで、北は北海道から南は沖縄までを取り上げ、かつてない規模で「縄文の美」を紹介します。
3、いま、注目の高まる「縄文」
縄文時代や土偶に見られるダイナミックな造形は、世界史的に見ても独創的なもの。1950年代に岡本太郎らが芸術的価値を見出したといわれる「縄文の美」は近年再び注目され、評価が高まっています。縄文の美はデザインやファッションなど、さまざまな切り口で親しまれ、また土器や土偶に「かわいい」「おもしろい」を見つけ出したことにより、SNSを通じて一層私たちの身近な存在となってきています。
報道発表会では、本展を担当した東京国立博物館の調査研究課主任研究員、品川 欣也氏からみどころ解説と展示の紹介がおこなわれました。ここでは、今回の出展作品の中から代表的なものをご紹介いたします。
国宝 火焔型土器
縄文時代にもっとも数多く作られた道具のひとつが縄文土器ですが、その中でも圧倒的な存在感を示し、土器本来の役割が煮炊きの道具であったことを忘れさせるほどの造形美を誇るのが火焔型土器です。
国宝 縄文のビーナス
「縄文のビーナス」の名にふさわしい力強くも柔らかな曲線美は、縄文時代の人々の女性美の理想を示しているかのよう。土偶は安産や子孫繁栄を祈るために作られたと考えられていますが、まさにその祈りを体現したかのような土偶です。
国宝 仮面の女神
顔の表現が仮面をつけたような土偶は一般的に仮面土偶といいます。なかでも一際大きく優美な本作は「仮面の女神」と呼ばれています。墓と考えられる土坑群のひとつから出土したこの「仮面の女神」は、死者への鎮魂と再生を祈るために埋納されたと考えられています。
重要文化財 人形装飾付有孔鍔付土器
器面に表現されたかわいらしい人形が目をひく土器。時に人や動物を表現することによって、土器は単なる容器としてだけではなく、祈りの道具としての役割を担いました。
重要文化財 土製耳飾
花弁にもたとえられる優美な透し彫りをもつ土製の耳飾。耳飾の多くは女性が身につけたと考えられ、年齢や出自を表し、それに応じた役割や権利を示すためのものともいわれています。
報道発表会の最後は質疑応答の時間となり、会場からは「なぜ今、縄文展なのか?」という問いかけがありました。
これに対して東京国立博物館の副館長である井上洋一氏は
「縄文時代に生きた人々がどのような生活をしていたのか。それを知ることによって私たちはもう少し人間らしい生活に戻るべきなのではないでしょうか。自然を敬い、畏れる・・・万物に霊が宿るというのは古代アニミズムの世界観ですが、やはり私たちは自然に生かされているんだということを、もう一度縄文人に学ぶべきなのではないか。そういう観点でみなさんに縄文時代をとらえなおしていただきたいと思いました」
と応え、この時期の開催に至った経緯を説明してくださいました。
会期は2018年7月3日(火)から2018年9月2日(日)まで。
時期や地域を飛び越えて「縄文の美」を総覧し、その移り変わりや広がり、そして奥深さを体験できる特別展「縄文ー1万年の美の鼓動」。
開催されましたらぜひ足をお運びください。