ミケランジェロ・ブオナローティ《ダヴィデ= アポロ》 1530 年頃 バルジェッロ国立美術館蔵 Florence, Museo Nazionale del Bargello
On concession of the Ministry of cultural heritage and tourism activities.
国立西洋美術館では、2018年6月19日(火)~9月24日(月・休)の期間、「ミケランジェロと理想の身体」が開催されます。
彫刻、絵画、建築の各分野で名をなし「神のごとき」と称された男、ミケランジェロ・ブオナローティ(1475~1564)。本展では、世界に全部で約40点しか現存しないミケランジェロの大理石彫刻のうち、傑作《ダヴィデ=アポロ》を日本初公開すると共に、古代ギリシャ・ローマとルネサンスの作品約50点により、ミケランジェロや当時の芸術家たちが創りあげた、理想の身体美の表現に迫ります。
ミケランジェロをはじめルネサンスの芸術は、彫刻を中心とする古代ギリシャ・ローマ美術を源に発展しましたが、中でも、男性の裸体表現は人体の理想像として、大きな影響を与えました。本展では、大理石およびブロンズ彫刻、壁画、油彩、素描、陶器など、日本初公開を含むさまざまな作品を展示。「幼少期から青年期の男性表現」「アスリートと戦士」「神々と英雄」などの切り口で男性美の表現を捉えるとともに、ミケランジェロに影響を与えた古代作品、そしてミケランジェロから影響を受けたルネサンス作品が紹介されます。
・ミケランジェロの傑作《ダヴィデ=アポロ》、3つの謎!!
1. ダヴィデか? アポロか?
聖書の英雄ダヴィデなのか、ギリシャの神アポロなのか。この作品の主題は、ミケランジェロの生前から解釈がわかれていました。その原因はふたつ。ひとつは、ミケランジェロが作品の一部を未完のまま残したこと。もうひとつは、ダヴィデとアポロの必殺技が共に飛び道具だったことでした。
《ダヴィデ=アポロ》は左手を背中の方にぐいと伸ばして、背中にしょった飛び道具を取ろうとしています。ですがそこにあるのは武器ではなく、手つかずの石の塊。ダヴィデがゴリアテを仕留めた投石器か、弓の名手だったアポロの矢筒か。飛び道具の正体は、ミケランジェロによって大理石の内に謎として残されました。
2. 古代の伝統か? ミケランジェロによる革新か?
頭から足下に向かってゆるやかな S字カーブを描くかのような、しなやかな身体の湾曲。片側の足に重心をかけるこの姿勢は、古代ギリシャ彫刻の古典的なポーズ、コントラポストです。しかし、古代の規範に従うなら、左足重心なら右腕に動きをつけ、もう一方の右足と左腕をリラックスさせることにより、緊張と弛緩が対角線で交差しますが、《ダヴィデ=アポロ》の場合には左足に重心をおき、左腕を上げています。
大きく振り上げた左腕によって上半身がねじれ、前に突き出された右脚は、下半身に上半身とは逆方向のねじれを生み出しています。身体全体が螺旋を描く大胆なポーズ。今やそこには《ダヴィデ=アポロ》の官能の美が漂います。ミケランジェロは、古代彫刻にのっとりながら独自の美を昇華させたのです。
3. 未完か? 完成か?
完成を待たずにミケランジェロがフィレンツェを離れローマに赴いたため、未完のままとなった《ダヴィデ=アポロ》。表面には無数のノミ跡が残り、ミケランジェロの彫刻技法の秘密を伝えます。しかし、この作品は本当に「未完」なのでしょうか。「どんな石の塊も内部に彫像を秘めている。それを発見するのが彫刻家の仕事だ」と語ったミケランジェロにとって、彫られるべき内部の像は、すでに彫り出されていたのかもしれません。
・開催概要
展覧会名 | ミケランジェロと理想の身体 |
会場 | 国立西洋美術館 |
会期 | 2018 年6月19日(火)~9月24日(月・休) |
休館日 | 月曜日、7月17日(火) ただし、7月16日(月・祝)、8月13日(月)、9月17日(月・祝)、9月24日(月・休)は開館 |
時間 | 午前9時30分~午後5時30分(金、土曜日は午後9時まで) ※入館は閉館の30分前まで |
観覧料 | ※( )内は前売りおよび 20 名以上の団体料金 ※前売券は 2018 年 3 月 21 日(水・祝)から 6 月 18 日(月)まで、展覧会公式サイト、主要プレイガイドにて販売(手数料がかかる場合があります) 国立西洋美術館では、開館日のみ、2018年6月17日(日)まで販売 ※中学生以下は無料 ※心身に障害のある方および付添者 1 名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください) |