先日、2018年10月2日(火)から12月9日(日)にかけて東京国立博物館 平成館で開催される特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」の報道発表会が行われました。今回はその様子をレポートいたします。
鎌倉時代の1220年に義空上人が開創した真言宗智山派の寺院・大報恩寺。秘仏本尊「釈迦如来坐像」が古来より信仰されていること、近くに京都を南北に縦断する千本通りがあることなどから、「千本釈迦堂」の名で庶民から親しまれてきました。
「おかめ」伝説の発祥の地としても知られる古刹で、応仁の乱をはじめとする幾多の戦火を逃れた本堂は洛中最古の木造建造物として国宝に指定され、御願寺(天皇のお墨付きを得た寺)としての高い格式を今に伝えています。
大報恩寺には、本尊である釈迦如来坐像の他にも、快慶作の十大弟子立像、運慶晩年の弟子・肥後定慶作の六観音菩薩像など貴重な彫刻作品の数々が残されています。
本展覧会は、これら大報恩寺に残る「慶派」の名品の数々を紹介するもので、運慶と同世代の快慶、そして次世代の名匠たちの作品が共演する大変貴重な機会となっています。
“慶派スーパースター” 快慶、定慶、行快の名品がずらり!
本展では、2020年に開創800年を迎えることを記念し、同寺が誇る慶派仏師の名品を一堂に公開。2017年の奈良国立博物館の「快慶」展、東京国立博物館の「運慶」展に続き、慶派スーパースターの名品が揃い踏みします。
<重要文化財 釈迦如来坐像>
大報恩寺の本尊で、同寺でも年に数回しか公開されない秘仏。快慶の弟子・行快が残した数少ない貴重な仏像のひとつです。切れ長で力強い眼に特徴があり、行快が快慶の作風をよく学んでいたことがうかがえます。行快は運慶の長男である湛慶と同世代で、運慶・快慶の次世代の仏師として京都で活躍し、師匠である快慶の造像を補佐してその技術を学びました。
寺外初公開の秘仏「釈迦如来坐像」と、快慶晩年の名品「十大弟子立像」を、特別な空間で展示!
快慶が晩年に手がけた名品「十大弟子立像」は現在は同寺の霊宝殿に安置されていますが、当初は本堂にあり、本尊の「釈迦如来坐像」を囲むように安置されていました。本展では、本堂における釈迦如来坐像と十大弟子立像の安置状況を考慮しながら、展示会場ならではの特別な空間で再現的展示が行われる予定です。十大弟子立像が10体揃って寺外で公開されるのは初めてであり、大変貴重な機会となります。
<重要文化財「迦旃延立像(十大弟子立像のうち)」>
十大弟子のひとりで、教団きっての理論家である「迦旃延(かせんねん)」を表現した作品。釈迦の弟子を代表する10人の高僧の個性を豊かに表現しつつ、実に品良くまとめあげられています。運慶と並び称される鎌倉仏師・快慶の最晩年の作とみられています。
史上初!重要文化財「六観音菩薩像」の光背を会期後半に外し、背中を間近でご覧いただけます!
」
肥後定慶作の名品「六観音菩薩像」。重要文化財に指定された優品で、寺外で6体揃って展示されるのはきわめて稀有な例です。
本展ではこの貴重な名品を360度から鑑賞できるだけではなく、会期前半(〜10/28)は光背をつけた本来の姿で、会期後半(10/30〜)は光背を取り外して展示します(光背自体も同時に展示)。その優美な背中まで間近で鑑賞でき、会期前半とは違った表情や魅力を堪能できます。
<重要文化財「千手観音菩薩立像(六観音菩薩像のうち)」>
六観音菩薩像のひとつ、千手観音菩薩立像。運慶晩年の弟子、肥後定慶41歳の時の作です。こうした精緻な光背は損失されやすいものですが、現在に至るまで光背・台座ともに造像当初の姿をよくとどめており、非常に貴重な作例となっています。
定慶の作品は丹波、美濃地方や東国にも残っており、幅広い地域で活躍したことが知られています。運慶の作風をよく受け継ぎつつも、複雑に折りたたまれる衣や装飾的な髪型などに独特の個性を発揮しました。
「去年の『運慶』展に引き続き慶派仏師をフューチャーする本展ですが、特に今回はポスト・運慶の仏師たちが巨匠の運慶・快慶を仰ぎ見ながらどのように自らの造形を模索していったのか、その努力を目の当たりにしていただきたいと思っています」
展示解説を担当した東京国立博物館 絵画・彫刻室 主任研究員の皿井氏は、本展開催の意義についてそのように語ってくださいました。
「また、戦乱を乗り越えて守り伝えられてきた大報恩寺の歴史についても、こうした名品の数々を通じて思いをはせていただきたいですね」
会期は2018年10月2日(火)から12月9日(日)まで。
脈々と連なる慶派の天才たちから生み出された、珠玉の鎌倉彫刻たち。
開催されましたら、ぜひ足をお運びください。