上野の美術館・博物館の情報をお届けしているココシル上野ですが、今回はちょっと足を延ばして千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館(以下歴博)の企画展示「ニッポンおみやげ博物誌」の内覧会に参加してきました。
日本の歴史と文化を総合的に研究、展示する歴博は佐倉城址の一画を占め、壮大な敷地を有しています。
そんな歴博が今回企画するのは「ニッポンおみやげ博物誌」。近世から近現代にかけて展開してきたおみやげという贈答文化とその背景となる旅と観光の様相を、主に歴博が所蔵する資料を通して紹介しています。
1章 アーリーモダンのおみやげ
おみやげの起源は江戸時代にまでさかのぼるそうです。参勤交代制度により大名が定期的に旅をするようになると、街道や宿場が整います。
のちに一般市民もその街道等を利用して旅をするようになります。伊勢参りを代表とする、信仰を掲げた旅が主だったようです。
旅行の際に日記をつける者も多く現れました。人々に旅の必需品や見どころを伝える、いまでいうガイドブックが登場したのもこのころです。観光ルートが次第に形成されていきます。
18世紀後半になると、巨大都市と化した江戸で歌舞伎や錦絵などの独自の文化が創生されます。
『進物便覧』(隴西大隠、1811年、お茶の水大学生活文化学講座蔵)といった贈答指南書では江戸に限らず京・大阪から長崎まで、主要な観光地のみやげ物が紹介され、こうした出版物によりますます人の往来が盛んになります。
現在でも○○八景、といった景観地を目にすることが多々ありますが、こうした呼称は近世以降一般に普及したそうです。こうして選定された名所では名物の食べ物が創出され、また名所を描いた摺絵(すりえ)などがおみやげとして販売されました。
2章 観光地のブランド化とおみやげへの波及
近代以降誕生した観光地や景勝地は、さまざまな制度のもと格付けされてきました。自然を資源化する国立公園、文化を資源化した国宝や重要文化財といった制度です。
現在ではさらに格上の世界遺産もあります。対象の保護・保全といった目的を掲げてはいますが、観光資源にタイトルを与えることでそのブランド化に成功しています。それに従いおみやげも大きな影響を受けてきました。
各地の特産品と結びつけたお菓子。パッケージにも工夫が見られます。
3章 現代におけるおみやげの諸相
おみやげにはその土地に赴く目的や、そこで得られる経験が反映されるようになります。自然物や建物、さらにはキャラクターも誕生します。
その地ならではの経験=方言。方言をテーマとしたおみやげも多々揃っています。思わず見入ってしまいます。
石川県の宇宙科学博物館のキャラクター。
4章 旅の文化の多様化とおみやげの展開
現代では旅の目的も多様化しています。第4章では、その目的に関連したおみやげを紹介しています。
ここでとりあげられている「ダークツーリズム」とは、戦争や災害など多くの死や苦痛が経験された現場を訪れる観光のスタイル。広島や長崎は「平和学習」をテーマに修学旅行の主要な目的地となっていますね。
その他にも海外からのおみやげや、
比較的廉価で誰もが購入しやすい、定番化しているおみやげが展示されています。
ご当地カレーやキャラメル、ラーメンが一堂に会する様は圧巻です。
5章 おみやげからコレクションへ
おみやげのコレクションからは人と人との関係性が垣間見えます。これらの絵馬やペナント等は個人のコレクションというので驚きです。そのひとつひとつに思い出があると思うと感慨深いものがあります。
旅行が一般的になされる今日では、おみやげの贈答もまた普遍的な行為となっています。そんな身近な存在のおみやげのルーツをたどることで私たちの生活の変化を振り返る機会をも与えてくれた今回の企画展示。
一周した後にはおみやげを選ぶ視点もまた変わってくるのではないでしょうか。
国立歴史民俗博物館のある千葉県佐倉市は佐倉城の城下町として栄えた歴史を誇り、数々の文化財の残る街並みは海外からの観光客をも惹きつけています。
博物館周辺を散策すると歴史の流れを感じます。
東京から佐倉市は電車に乗って1時間半から2時間ほど。
ぜひ足を運んで歴史体験してみてください。
企画展示名 | ニッポンおみやげ博物誌 |
会 期 | 2018年7月10日(火)~ 9月17日(月・祝) |
休館日 | 月曜日(休日の場合は翌日が休館日となります) ※ただし、8月13日は開館 |
場所 | 国立歴史民俗博物館 企画展示室A・B (千葉県佐倉市城内町117番地) |
料金 | 一般:830(560)円 / 高校生・大学生:450(250)円 / 小・中学生:無料 /( )内は20名以上の団体 ※総合展示もあわせて観覧可。 |
開館時間 | 9時30分~17時00分(入館は16時30分まで) ※開館日・開館時間を変更する場合があります。 |
TEL | 03-5777-8600(午前8時~午後10時) |
URL | https://www.rekihaku.ac.jp/index.html |