東京国立博物館 平成館(上野公園)は、来年2019年1月16日(水)~2月24日(日)の期間、特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」を開催します。
7月26日(木)に行われた報道発表会に参加したので、その様子をお伝えします。
顔真卿(がんしんけい)とは
顔真卿(709-785)は、中国山東省の代々訓詁と書法を家学とする名家に生まれます。唐の玄宗皇帝の治世下であった開元22年(734)、26歳で官吏登用試験に及第してのち官僚として4人の皇帝に仕えます。天宝14年(755)、安史の乱の勃発に際して顔真卿とその一族は義兵を挙げ唐王朝の危機を救います。
顔真卿75歳の建中4年(783)、再び李希烈によって反乱が企てられると、顔真卿は宰相の盧杞(ろき)の計略と知りながらも敵地に赴き、捕らえられて蔡州(河南省)の龍興寺で殺害されました。顔真卿はのち忠臣烈士として尊ばれます。
展覧会のみどころ
1.楷書の美しさ 徹底解析!
中国での公式の書体は、実用面での要求や美意識の変化によって篆書(てんしょ)から隷書(れいしょ)、そして楷書(かいしょ)へと進化を遂げてきました。楷書は3世紀中頃に登場し、書聖・王羲之(303-361)が活躍した東晋時代(317―420)を経て、唐時代(618-907)には虞世南、欧陽詢、褚遂良ら初唐の三大家が楷書の典型を完成させました。
顔真卿は王羲之や三大家の伝統を継承しつつ顔法と称される独自の筆法を創出します。
本展ではバリエーション豊かな拓本を始め、貴重な唐時代の肉筆による楷書を展示しその美しさを解析します。
2.天下の劇跡 「祭姪文稿(さいてつぶんこう)」の魅力に迫る!!
755年、安禄山らによる安史の乱で唐王朝は危機に陥りますが、官僚であった顔真卿は義兵を挙げて乱の平定に貢献します。しかし、従兄の顔杲卿(がんこうけい)とその末子顔季明(がんきめい)は非業の死を遂げます。
この「祭姪文稿」は顔季明を供養した文章の草稿であり、修正や塗りつぶしたあとが随所に見られます。
書き進むにつれてのち昂ぶる感情をそのままその筆致に見てとることができる本作は、書の最高峰として歴代皇帝に保護されてきました。
肉筆であることからより一層その激情が生々しく感じられる本書は今回日本初公開です。この貴重な機会をお見逃しなく。
3.王羲之神話の崩壊をたどる!!
唐王朝の第二代皇帝・太宗は王羲之の書を高く評価し、多くの書家に拓本や臨書を取らせ王羲之の筆法を広めました。
安史の乱を境にして、それまでの王羲之に発する伝統にとらわれず、書家が感情を率直に筆で表現するという新たな筆法が誕生し、発展していきます。
宋時代にもその筆法は受け継がれていきますが、「書は人なり」の考えから、唐王朝に忠義を尽くした顔真卿の人間性とともにその書への評価も高まります。
清時代になると真跡の存在しない王羲之の筆法よりも青銅器や石碑の文字が学ばれるようになり、脈々と受け継がれてきた王羲之神話は崩壊し、野趣あふれる筆法が創出されます。
本展ではその過程をたどりながら、唐時代の書が後世や日本にどのような影響を与えているのかを検証します。
今回日本初公開ということで大きな注目を集める顔真卿の「祭姪文稿」ですが、その書を筆するきっかけとなった安史の乱が書道界にとって重要な転換期となっています。
歴史のおさらいをすることでより一層本展を楽しんで鑑賞することができるのではないかと思います。
特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」は2019年1月16日(水)より開催です。お楽しみに!
展覧会概要
展覧会名 | 特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」 |
会 期 | 2019年1月16日(水)~2月24日(日) |
会場 | 東京国立博物館(台東区上野公園13-9) 平成館 |
開館時間 | 9:30~17:00※金曜・土曜は~21:00 ※入館は閉館の30分前まで |
休館日 | 月曜日※ただし2月11日(月・祝)は開館、翌12日(火)は休館 |
観覧料(税込) | 一般 当日券1,600円、前売り券1,400円、団体券1,300円 大学生 当日券1,200円、前売券1,000円、団体券900円 高校生 当日券900円、前売券700円、団体券600円 ※中学生以下無料 ※団体は20名以上 ※障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に障がい者手帳などを要提示。 チケット取り扱い:東京国立博物館正門チケット売り場(窓口、開館日のみ。閉館の30分前まで)、展覧会公式サイト、各種プレイガイド。 前売り券販売時期:2018年10月17日(水)~2019年1月15日(火) 早割りペアチケット:2枚で2,400円(税込)/ペアチケット販売時期:2018年9月19日(水)~10月16日(火) 展覧会公式サイト、各種プレイガイドで販売。 |
TEL | 03-5777-8600(ハローダイヤル) |
展覧会公式サイト | https://ganshinkei.jp/ |