【東京都美術館】企画展「没後50年 藤田嗣治展」報道内覧会レポート

《自画像》 1929年 東京国立近代美術館蔵

 

おかっぱ頭に丸メガネ、ちょび髭、金のピアス。とても個性的な風貌の男性の背後には女性画が飾られ、絵筆を持つ手元には猫が顔を覗かせています。

この男性の名前は、藤田嗣治(レオナール・フジタ、1886-1968)。今からおよそ100年前、美術の中心であったパリで名を成し、海外で活躍する日本人アーティストのいわば「先駆け」となった画家です。独自の画風を確立し、「素晴らしき乳白色」と称えられた裸婦像で人気を博した藤田は、人生の約半分をフランスで暮らし、晩年にはフランスで洗礼を受け、欧州の土となりました。

藤田がこの世を去って50年目にあたる2018年、満を持して開催されている「没後50年 藤田嗣治展」は、質・量とも史上最大級となる大回顧展です。開催にあたっては、これまでにないほどのスケールで欧州の主要な美術館から作品が来日。藤田の代名詞ともいえる「乳白色の裸婦」など、10点以上の作品が集結する大変貴重な機会となります。

先日、報道関係者向けの内覧会が開催されましたので、今回はその模様をお伝えいたします。

 

| 展示風景

《フルール河岸 ノートル=ダム大聖堂》1950年 ポンピドゥー・センター蔵



本展覧会では「風景画」「肖像画」「裸婦」「宗教画」などのテーマが設けられ、100点以上の絵画作品を中心に紹介されています。

藤田は81年にわたる人生のうち60年間、ほとんどスランプもなく描き続けた稀有な画家であり、数奇な人生を歩みつつも、その絵筆は止まることがありませんでした。その藤田が最も精魂を傾けたのが「油絵」であり、本展もその画業の中心にある油絵作品を軸に構成されています。

 

藤田嗣治の「当たり年」である1918年に描かれた《二人の少女》(スイス・ジュネーヴ蔵)

今展を監修した美術史家・林洋子氏によれば、藤田嗣治の画業にはワインでいうところのヴィンテージ・イヤー、つまり「当たり年」が存在します。第一次大戦末期の1918年、裸婦像などを多く描いた1923年、第二次大戦の影響で東京に戻る直前の1940年、そして戦後、傑作《カフェ》などを描いた1949年です。
作品の展示や会場構成にあたってはこのヴィンテージ・イヤーを「なるべく意識するように心がけた」という林氏。まさに藤田嗣治の「決定版」と言うべき展覧会となっています。

また、東京都美術館の会場は3階に分かれていますが、フロアを移動するたびにその画風の変遷と多文化に生きた生涯を体感できるかのよう。ぜひ藤田の生きた激動の時代に思いをはせながら、その絵画世界をお楽しみください。

 

| 作品紹介

《エミリー・クレイン=シャドボーンの肖像》 1922年 シカゴ美術館蔵

藤田の1920年代の人物表現の中でも代表作のひとつとされる肖像画です。モデルとなっているのは、注文主である裕福なアメリカ女性。注目すべきはその背景で、フランス更紗の模様や触感が緻密に描写され、壁面には銀箔が施されています。藤田は作品中にしばしば金箔を用いましたが、銀箔を使った作品は本作のみとのこと。

シカゴ美術館に寄贈され、収蔵されていた作品ですが、本展で初来日を果たします。

 

《タピスリーの裸婦》 1923年 京都国立近代美術館蔵

藤田嗣治の「最大の当たり年」といわれる1923年は、代表作の《五人の裸婦》など、多くの裸婦像が描かれた年でした。細くしなやかな描線と日本の琳派を思わせる装飾的な背景、そして「素晴らしき乳白色」と称えられた肌の質感により、藤田の裸婦像は絶大な人気を博しました。

《タピスリーの裸婦》は装飾的な綿布と白い人肌のコントラストが印象的な作品です。このケシの花模様の「ジェイ布」はフランス更紗ともいわれる手染めの布。このジェイ布の緻密な描写の背景には、失われつつある職人的な手仕事への賛美の気持ちがあったと言われています。

 

《カフェ》 1949年 ポンピドゥー・センター蔵

「本展における『花』であり、あらためて見ても素晴らしい作品。まさにポンピドゥーの宝」
と林氏も絶賛する傑作《カフェ》。ニューヨーク滞在中に制作され、1949年の個展で発表された作品です。窓の外に見えるパリの景色、物憂げな女性の表情、そして妖艶なドレスの黒が不思議な魅力を放っています。

「単なる甘ったるい情景ではありません。酸いも辛いも色々あって、だけどこれが描ける。その奇跡をみなさんに伝えられればと思っています」

また、額縁も藤田の手製です。ニューヨークに滞在していた1949年、藤田は集中して作品を描き、さらにモチーフに合わせた額縁も制作しました。こうしたフレームは後年損傷してしまう場合もありましたが、本作においては当時のままの姿を鑑賞することができます。

 

《礼拝》 1962-63年 パリ私立近代美術館蔵

聖母マリアの左に、修道士姿の藤田が描かれています。藤田の胸元に見えるのは1960年に教皇に拝謁した時に授かったメダル。晩年、藤田は洗礼を受けて「レオナール・フジタ」と名乗り、パリ郊外に移り住んでキリスト教をモチーフにした作品を数多く残しました。

大戦時には戦争画家として活躍しつつも、戦後は国に協力していたことを糾弾され、逃れるようにフランスへと渡った藤田。その晩年は宗教や精神的な世界に傾倒していったようです。晩年は「創造性が落ちた」と言われることもあるようですが、本作では子供の表情、人物の白い肌や背景の装飾性など、まさにそれまでの歩みや技法がひとつの画面の中に統合されているような印象を受けます。

 

| 藤田嗣治を世界に「開く」、次世代に「つなぐ」

本展を監修した美術史家・林洋子氏

藤田の出身校である東京美術学校(現:東京藝術大学)に寄贈された日記や資料に触れ、藤田は「まことを尽くして自分の画業を全うしつづけた人」だという確信を得たという林氏。

「藤田は、ここ10年ほどの間でアメリカや中南米、ヨーロッパの研究者からも注目される存在になってきています。本展では藤田を昭和の軛(くびき)からしなやかに解き放ち、広い眼差しから捉え直したい。大袈裟かもしれませんが、藤田を『世界に開く』ということです」

 

時代の寵児となり、時代に翻弄されながらも、「私は世界に日本人として生きたい」と願った藤田嗣治。
その画業の全貌を解き明かす「没後50年 藤田嗣治展」は、2018年10月8日(月・祝)までの開催です。
ぜひ、その数奇な生涯と絵画世界を体感してみてはいかがでしょうか?

 

また、藤田作品に欠かせないのがねこ。作品を鑑賞しながら「ねこさがし」をしてみては?

 

物販コーナーにはねこグッズが充実

すべて© Fondation Foujita / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017 E2833

 

開催概要

展覧会名 没後50年 藤田嗣治展
会 期 2018年7月31日(火)~10月8日(月・祝)
9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
※ただし7月27日(金)、8月3日(金)、10日(金)、17日(金)、24日(金)、31日(金)はサマーナイトミュージアムにより21:00まで
休室日 月曜日、9月18日(火)、25日(火) ※ただし、8月13日(月)、9月17日(月・祝)、24日(月・休)、10月1日(月)、8日(月・祝)は開室
会場 東京都美術館 企画展示室
観覧料 当日券 | 一般 1,600円 / 大学生・専門学校生 1,300円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1,000円
団体券 | 一般 1,400円 / 大学生・専門学校生 1,100円 / 高校生 600円 / 65歳以上 800円
※団体割引の対象は20名以上
※中学生以下は無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料
公式サイト http://foujita2018.jp/

 

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