国立科学博物館 企画展「標本づくりの技(ワザ)-職人たちが支える科博-」内覧会レポート

国立科学博物館では、2018年9月4日(火)~11月25日(日)の期間、企画展「標本づくりの技(ワザ)-職人たちが支える科博-」を開催します。それに先立ち行われたプレス内覧会に参加しましので、その様子をお伝えします。


標本とは、博物館などが自然界に存在する様々なものを多種多様な目的に沿って全体の中から取り出し、観察・調査する対象の一部を構成するものです。
 
標本が無ければ博物館は成り立たちません。
 
今回の企画展では、標本作りに従事する職人にスポットライトを当て、博物館の裏側に迫ります。
 
本展は「標本と何か?」「標本づくりの部屋をのぞいてみよう!」と大きく2部に分けられており、それぞれ5研究部ごとに詳しく標本づくりの「技」が紹介されています。
 

標本とは何か?



人類研究部
「人類の進化」や「日本人の歴史」などを解明するため、標本資料を収集し、形態学的・分子人類学的な研究をおこなう人類研究部。
 
入口すぐのところで「伝インカ帝国のミイラ」がお出迎え。最新技術によってどんどん新しい情報があらわになっているそうです。標本をなるべく良好な状態で未来に残す大切さを伝えています。

 
 
植物研究部
植物は、乾燥して台紙に貼られた腊葉(さくよう)標本だけではなく、エタノールなどに浸して保存された液浸標本、台紙に貼ることができない大型果実などをそのまま立体的に乾燥して保存した乾燥果実や種子標本など様々な種類の標本があります。

 
 
地学研究部
岩石・鉱物をそのまま標本として保管したり、観察・化学分析用に岩石等を削いで作製した薄片を保管したりします。岩石から取り出した化石は古生物標本となります。化石が貴重な場合はレプリカを作製することがあります。
 
写真は「植物遺体」と呼ばれる植物の立体的な化石です。各部の付き方等を子細に調べることができます。

 
 
理工学研究部
隕石のような標本のほかに、大型機械や観測機器、そこから得られるデータといった資料を所蔵しています。基本的に標本や資料は1点しかないため、レプリカを作ることがあり、それらも貴重な博物館資料となります。
 
こちらの絵画は大正時代の桜島噴火の様子を描いたものですが、芸術作品としてだけではなく、地震の研究資料として保管されています。

 
 
動物研究部
野外で採取・発見されたもの、動物園・水族館から寄贈されたもの等標本の由来は様々。1個体を丸ごと1標本として保管したり、1個体から骨格・毛皮・寄生虫等個別に標本にする場合もあります。研究内容や目的が多岐に渡ります。

 
 
こちらは複数枚の写真から3Dモデルを復元する「フォトグラメリー」という手法を用いて「なかご(毛皮をかぶせる中身)」を作製するという新しい試みを紹介しています。

 
 

標本づくりの部屋をのぞいてみよう!

人骨修復の部屋
人類学の基礎ともいえる人骨の修復。ばらばらのピースをクリーニングしてから組み立て、接着します。1つの頭蓋骨の修復には30時間を要するそう。

 
 
腊葉標本作製の部屋
はんだごてを使用して特殊なテープで植物を台紙に貼付します。標本はその後の貴重な研究材料となるため、植物を傷つけず適切に貼付するには熟練の技が求められます。

 
 
化石クリーニングの部屋
通常岩石の中に埋まっている化石を取り出すために、まわりの不要な岩石を取り除く「クリーニング」作業が行われる部屋です。

 
 
長らくクリーニング不可能とされていたペルム紀の化石「シカマイア」。上の写真で右手に見える大きな岩石の中に埋まっていましたが、特殊な機材での1年半にわたるクリーニングの結果、ようやく形が明らかになりました。職人の執念の賜物ですね。手前の4つのパーツに分かれているのが実物標本で、奥が復元模型です。

 
 
化石レプリカ作製の部屋
まるで彫刻家のアトリエのような現場で化石のレプリカが作製されています。

 
 
実物標本からシリコーンで型を取り、その型に樹脂を流し込んで作製されます。こうしてできあがった精巧なレプリカは、実物標本と同じように研究や展示で活用されます。

 
 
資料整理の部屋
理工学研究部の標本や資料の取り扱いについての展示です。大量の紙資料は劣化を防ぐため弱アルカリ性や中性紙で作られた容器で保存します。
 
原資料をそのまま利用しにくい資料の保全のためには、撮影やスキャンによりデジタル化し、レプリカを作製します。3Dプリンターの普及により3次元のレプリカも作れるようになったそうです。会場では実際にタブレットのスクリーンに触れて、隕石を360度子細に観察することができます。

 
 
展翅(てんし)の部屋
机の上にあるのは展翅標本作製に使用する昆虫、針、展翅版等々。

 
 
獣毛仮剥製(じゅうもうかりはくせい)の部屋
研究用に特化した毛皮の仮剥製。基本的に皮膚と羽毛や獣毛だけを残して皮を剥ぎ、乾かします。

 
 
同じ鰭脚類(ききゃくるい)ながら、全く色の違うゴマフアザラシとトドの新生児を比較しています。ゴマフアザラシは海氷上、トドは岩場で出産するため、新生児の産毛は外敵から身を守るために保護色になっているそう。

 
 
象の耳。種類によって形が違います。

 
 


会場内に設置されている知ってる?パネルでマメ知識をチェック。

 
 
どのように標本が使われているかを学べるコーナーもあります。お子さんにもおすすめ。

 
 
本企画展は『月刊!スピリッツ』(小学館)で連載中の博物館マンガ『へんなものみっけ!』とコラボをしており、入口天上にはマンガのイラストが展示されています。作者の早良朋さんは当館で実際に標本を作っていた経歴をもち、当館がマンガの制作に協力しています。

 
 
会場では国立科学博物館 特別バージョンの『へんなものみっけ!』試し読み小冊子を無料で手に入れることができます(部数に限りがあります)。マンガで楽しく博物館の裏側について学ぶことができるので、ぜひ手に取ってみてください。

 
 
会期中には職人による標本づくりの実演コーナーも設けられます。目の前で職人技を目にするまたとないチャンスですので、お見逃しなく!
 
実演コーナーの日程は企画展公式HPでご確認ください https://www.kahaku.go.jp/event/2018/09hyouhon/
 

展覧会概要

 

展覧会名 企画展「標本づくりの技(ワザ)-職人たちが支える科博-」

会 期 2018年9月4日(火)~11月25日(日)

会場 国立科学博物館(東京都台東区上野公園7-20)日本館1階企画展示室

開館時間 午前9時~午後5時(金・土曜日、10月31日(水)、11月1日(木)は午後8時まで)

休館日 毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館し、火曜日休館。ただし10月1日(月)は開館)

観覧料 常設展示入館料のみで観覧できます。
(一般・大学生:620円 高校生以下および65歳以上無料)

問合せ先 国立科学博物館 事業推進部 企画展示課 担当:松澤裕子
〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20
TEL:03-5814-9883
FAX:03-5814-9898
E-mail: kikakuten@kahaku.go.jp

国立科学博物館公式HP http://www.kahaku.go.jp/

 

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