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【千葉県佐倉市 国立歴史民俗博物館】企画展示「日本の中世文書ー機能と形と国際比較ー」内覧会レポート

いつもは上野の情報をお伝えしていますが、今回は千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館(以下歴博)まで足を延ばして2018年10月16日(火)~12月9日(日)の期間に開催される企画展示「日本の中世文書ー機能と形と国際比較ー」の内覧会に参加しましたので、そのレポートをお届けします。
 
企画展示「日本の中世文書ー機能と形と国際比較ー」招待券プレゼント!


日本の歴史と文化を総合的に研究、展示する歴博は佐倉城址の一画を占め、壮大な敷地を有しています。

 
そんな歴博が今回企画展示するのは「日本の中世文書ー機能と形と国際比較ー」。文書(もんじょ)とは差出人・受取人・用件・日付などを備えた公文書・私文書です。中世は政治や文化が大きく変化しましたが、文書もそれに合わせて次第に形式が変わったため、バラエティ豊かな文書が作成されました。
 
くずし字で書かれた文書は現代社会に住む私たちの多くにとって、一見して意味を理解することは難しいでしょう。
 
しかし、今回の企画展示では「くずし字は 読めなくっても 大丈夫 見れば楽しい 文書いろいろ」をテーマに、文書の内容よりも形に注目し、なぜそのような形になったのか?という機能面にも考えを巡らし、誰でも文書を楽しめるよう工夫して展示されています。
 

世界の文書

日本の文書だけではなく、世界で作成されたものにも着目。中国の影響を受け、漢字の印鑑が押された文書は、遠くはイランでも発見されています。本展では国内で所蔵されている作品や、複製が展示されています。
 
世界の文書と比較することで、日本の文書の特徴が浮かび上がります。

 

文書に見られる社会変化

古代にはお役所が土地の売買の承認を担っていました。売券にはハンコがたくさん押されています。



「民首田次麻呂解」(近江国愛智郡八木郷墾田売券)延暦十五年(796)十一月二日 国立歴史民俗博物館蔵


 
中世に入り律令国家が形骸化し、土地の売買にも公的な保証がなくなりました。当事者間で交わされた文書が残されています。

「妙一屋地寄進状」(「六角室町屋地古文書」)応永二十四年(1417)十二月八日 国立歴史民俗博物館蔵


 
ひらがなで記されているこちらは、女性の手による文書。中世の女性には財産権があったため、自分で土地を処分することができました。

「尼しやうせう領地売券」(「六角室町屋地古文書」)延慶四年(1311)十月七日 国立歴史民俗博物館蔵


 

文書に見る中世のエコ精神

紙がもったいないからと、用を終えた文書を集めて帳面にし、裏面を再利用するということがしばしば行われました。
 
再利用の際は公家や僧侶の日記等に使用されたようですが、そうした日記が後世まで保存されたことによって、紙背に残された文書も現在目にすることができるそうです。
 
この屏風は現在は仏典が書かれた帳面をほどき、文書を表にして展示しています。
 

「高山寺旧蔵聖教紙背文書屏風(高山寺文書)」 国立歴史民俗博物館蔵


 
右上は源義経の自筆文書。こうした貴重な文書が裏紙にされていたなんて信じられませんが、二次利用されたからこそいまに伝わる文書もあると考えると、古人のエコ精神に感謝したくなります。

「高山寺旧蔵聖教紙背文書屏風(高山寺文書)」 国立歴史民俗博物館蔵


 
「宿紙(しゅくし)という、天皇の秘書官「蔵人(くろうど)」が使用していた中世のリサイクルペーパー。使用済みの紙をすき返したものです。

「後土御門天皇綸旨」 国立歴史民俗博物館蔵


 
 

天皇の自筆書状

中世の天皇の自筆書状も数点展示されています。
 
堂々とした筆致です。

「後醍醐天皇自筆書状」元弘三年(1333)九月二十二日 国立歴史民俗博物館蔵


 
こちらは仮名で書かれていることから、一見女性の者と見まがいますが天皇の筆によるもの。

「後土御門天皇自筆書状」文明十二年(1480)二月十一日 国立歴史民俗博物館蔵


 
独特の「散らし書き」という書き方をとっています。規則に従って書かれているので、展示場のパネルを参考に読んでみてはいかがでしょうか。
 

タッチパネルで文書を知ろう

本展には古文書を身近に感じることができるような、体験型の企画が用意されています。
 
企画展示室A入口に設置されている「タッチパネルで古文書を読もう」という最新技術を用いた企画では、『織田信長朱印状』、『源義経自筆書状』など歴史上の有名人の自筆をタッチパネルのズーム機能によりどアップで見ることができます。「読み上げモード」を選ぶと音声が文書の内容を読み上げてくれます。

 
「解読モード」では、自分で古文書の解読にチャレンジできます。画面上の文字を指でタッチすると、その文字の読み方が表示されます。古文書の内容をじっくり読んでみたい!という方はぜひ挑戦してみてください。

また、文書を顕微鏡で2000倍まで拡大し、料紙(文書に使用されている和紙)の材質を観察するという企画も。
 
例えば、『織田信長朱印状』は米粉の入った「楮紙(ちょし)」でできていますが、2000倍まで拡大すると稲のでんぷん粒まで見ることができます。こちらは企画展示室B内に設置してあります。

 

印(いん)を押してみよう

展示の文書内で使用されていた印(いん)を再現したもの。実際に自分で押してみることができます。また、古文書の紙の使い方の一つである「折り紙」の折り方も展示されています。
 
江戸時代にはこちらの「折り紙」を用いて鑑定書を書いたことから、「折り紙付き」=「保証付き」の意味として使われるようになったそう!

 


普段はなじみのない古文書をテーマにした展覧会でしたが、文書から社会の変化や、当時の生活の様子を伺い知ることができてとても興味深く感じました。
 
古文書の知識が無くても楽しめる企画展示「日本の中世文書ー機能と形と国際比較ー」。ぜひ佐倉市まで足を運んでみてはいかがでしょうか?
 
企画展示「日本の中世文書ー機能と形と国際比較ー」招待券プレゼント!
 

企画展示名 日本の中世文書ー機能と形と国際比較ー
会 期 2018年10月16日(火)~ 12月9日(日)

休館日 10月22日・29日、11月5日・12日・19日・26日、12月3日

場所 国立歴史民俗博物館 企画展示室A・B (千葉県佐倉市城内町117番地)

料金 一般:830(560)円 / 高校生・大学生:450(250)円 /
小・中学生:無料 /( )内は20名以上の団体

※総合展示もあわせて観覧可。
※毎週土曜日は高校生の入館無料です。
※障がい者手帳等保持者は手帳提示により、介護者と共に入館が無料です。

開館時間 9時30分~16時30分(入館は16時まで)
※開館日・開館時間を変更する場合があります。

TEL 03-5777-8600(8時~22時)

URL https://www.rekihaku.ac.jp/

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