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【国立西洋美術館】国立西洋美術館開館60周年記念「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」内覧会レポート

2019年2月19日(火)~2019年5月19日(日)の期間、国立西洋美術館で国立西洋美術館開館60周年記念「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」が開催されます。2月18日に内覧会が開催されましたので、その様子をお伝えいたします。

 

2016年にユネスコ世界文化遺産に登録された国立西洋美術館。この本館を設計したのが、20世紀建築の巨匠として知られるル・コルビュジエです。

建築、絵画、彫刻、詩・・・。多彩な活動を展開していた芸術家であるシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエの本名)は、第一世界大戦集結後の1918年末、機械文明の進歩に対応した「構築と総合」の芸術であるピュリスムの運動をはじめました。ピュリスムの創造、そして1920年代パリの美術界との交流から大きな糧を得て、ジャンヌレは近代建築の旗手「ル・コルビュジエ」へと生まれ変わります。

国立西洋美術館開館60周年を記念して開催される本展では、ル・コルビュジエがパリで新しい芸術運動をしていた若き日々の絵画に焦点を当て、彼が刺激を受けた同時代の作家ピカソ、ブラック、レジェらの美術作品約100点に、建築模型、出版物、映像など多数の資料をくわえて展示。ル・コルビュジエが世に出た時代の精神を、彼の建築物のなかで体感できる、大変貴重な機会となります。

 

展示風景

会場風景。展示会場二階から一階の19世紀ホールを見下ろす

 

2階展示室。高い天井と低い天井が組み合わされ、柱がリズミカルに並ぶ。連続窓から届く明るい光は、まるで自然光のよう

 



冒頭には友人のオザンファンと編集・発行していた雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』の表紙が並んでいる

 

キュビスムの彫刻家など、ル・コルビュジエと親交のあった作家たちの作品が並び、建築空間と深く響きあう

 

ル・コルビュジエが設計した建築物の精密な模型を堪能できるのも醍醐味のひとつ。こちらは『ラ・ロシュ=ジャンヌレ邸』の1/30模型

 

ピュリスム運動を通じてル・コルビュジエと親交の深かったフェルナン・レジェの絵画。見たものを単純な面や線に置き換えるのがピュリスム絵画の特徴だ

 

展示構成は以下の通りです。

Ⅰ ピュリスムの誕生
Ⅱ キュビスムとの対峙
Ⅲ ピュリスムの頂点と終幕
Ⅳ ピュリスム以降のル・コルビュジエ

 

本展が開催されるのは国立西洋美術館の「19世紀ホール」から、二階の回廊状になった空間。これはル・コルビュジエが提唱した、建物が中心から外へらせん状に拡張する「無限成長美術館」というコンセプトに基づいています。

普段は常設展がおこなわれているこの空間ですが、「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」の開催にあたって壁の色は通常より明るく照らされ、まるで違う空間のように生まれ変わっていることに驚きました。

「光に満たされた空間。これが本来ル・コルビュジエが意図した展示空間でした。その中で、彼が活動した時代の画家たち、友人たちの作品、そしてル・コルビュジエの建築とが語り合う様子を体感できる。そこが通常の展覧会と大きく違う点だと思います」

そう説明してくださったのは、国立西洋美術館副館長・村上博哉氏。
絵や彫刻を鑑賞するだけでなく、ぜひ作品と建築との関係について思いをはせて、回廊をめぐってみてください。

 

展示作品紹介

シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)《アンデパンダン展の大きな静物》1922年 ストックホルム近代美術館

「ありふれた現実の題材から構築的・普遍的な芸術を創造する」というピュリスムの理念を、最もモニュメンタルなかたちで実現した作品。

テーブルの上のギター、瓶、カラフなどを完全な立体として捉え、それを秩序のある空間として再構成している・・・と聞くとととても難解に思えますが、重要なのは「本物そっくりに書く」のではなく、物体を「単純な線や面に置き換えている」ということ。こうして描かれたピュリスム絵画から感じる立体感は、確かにル・コルビュジエの建築空間に通じるものなのでしょう。

 

同じ年に描かれたオザンファンの《瓶のある静物》(写真左)と対比してみると面白い。オザンファンもやはり垂直線と水平線を組み合わせて画面を構成していますが、ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)の作品と比べるとどこか平面的な印象を与えます。ジャンヌレの作品はより立体的で、三次元の要素が強いように思えますね。

 

ル・コルビュジエ《灯台のそばの昼食》1928年 パリ、ル・コルビュジエ財団

1926年から毎年夏のヴァカンスを過ごしていたピケの自然豊かな環境。そのピケ滞在中のスケッチに基づく《灯台のそばの昼食》では、テーブルの上の静物と灯台のある湾の風景が意表をつくやり方で結びつけられています。

うねる曲線。暖かな色彩。ジャンヌレの以前のピュリスム絵画とはかなり趣が異なっていますね。1920年代の終わり頃、ル・コルビュジエは「幾何学的な秩序」の追求を目指し、静物を唯一の主題としていた彼の絵画に「風景」と「人物」を新たなモチーフとして付け加えました。彼が目指したのは「人間と自然の調和」。新しいテーマにともない、彼の作風も徐々に変化を遂げていったのです。

しかし、やはり「幾何学的秩序こそが人間と自然の本質である」という彼の信念は揺らぐことはなかったようです。

 

ル・コルビュジエ《サヴォワ邸》1928-31年(写真は1/100模型 2010年 大成建設株式会社)

1928-1931年にパリの郊外に建てられた邸宅、《サヴォワ邸》の模型。サヴォワ邸は横長の大きな窓やスロープなど、様々なアイディアが込められており、ピュリスムの精神を最もよく表現した建築と称されています。外観も、まるでジャンヌレのピュリスム絵画のよう。幾何学に根ざして普遍性を目指す彼の建築イメージがよく表現されています。

サヴォワ邸の設計が始まった1928年は、ル・コルビュジエにとっては「転機」の年であったかもしれません。ひとつは、ピュリスム時代には抑圧されていた女性や風景のイメージを絵画に取り入れるようになったこと。もうひとつは、絵画作品にも本名の「ジャンヌレ」ではなく、「ル・コルビュジエ」と署名するようになったこと。サヴォワ邸はまさに近代建築の先駆けであり、ル・コルビュジエにとっては記念碑的な作品であったともいえるのではないでしょうか。


「彼は国立西洋美術館の設計を通じて、この美術館が近代の精神を普及するための拠点になってほしいと願っていました。彼が考える『近代』は、明晰で力強く、ポジティブなもの。そしてその根底には幾何学があります。彼の建築と絵画作品が響きあうこの空間で、ぜひそれを感じてみてください」

展示解説を担当した国立西洋美術館の村上氏は、そのように語ってくださいました。

 

世界遺産建築の中で堪能する「ル・コルビュジエの原点」。
ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

開催概要

展覧会名 国立西洋美術館開館60周年記念「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」
会 期 2019年2月19日(火) ~ 5月19日(日)
9:30~17:30
毎週金・土曜日:9:30~20:00
※入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日(ただし3月25日、4月29日、5月6日は開館)、5月7日(火)
会場 国立西洋美術館
観覧料 当日:一般1,600円、大学生1,200円、高校生800円
団体:一般1,400円、大学生1,000円、高校生600円
※団体料金は20名以上。
※中学生以下は無料。
※心身に障害のある方および付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)。
公式サイト https://www.lecorbusier2019.jp

 

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