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【東京都美術館×東京藝術大学】 とびらプロジェクト オープンレクチャーvol.4 人々を排除しない参加型デザインへ!参加レポート

11月23日に東京都美術館講堂で開催された「とびらプロジェクトオープンレクチャーvol.4 人々を排除しない参加型デザインへ!」に参加いたしましたので、その様子をレポートいたします。

「とびらプロジェクト」とは、東京都美術館と東京藝術大学が、2012年より活動を行っているプロジェクトであり、アートを介したコミュニティ作りを目指して様々な活動が行われてきました。

その活動から生まれた関心や、目指すべき社会の姿について、とびらプロジェクト内だけでなく、広く一般の人々に考える機会を設けたいと考え、とびらプロジェクトのオープンレクチャーが開催されています。今回は、「人々を排除しない参加型デザイン」をテーマにゲストの皆様からのレクチャーやパネルディスカッションが行われましたので、その内容を簡単にお伝えいたします。

■ 大谷 郁氏(東京藝術大学 美術学部 特任助手・とびらプロジェクト コーディネータ)のレクチャー 「とびらプロジェクトの実践」の様子

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東京都美術館の「アートの入り口」を目指すという使命や、対話のある社会の実現についてお話しされていました。この他、とびらプロジェクトのプレイヤーであるアート・コミュニケーター「とびラー」自身が自ら主体的に考えるというコンセプトおよびその姿勢についてレクチャーいただきました。



■ ジュリア・カセム氏(京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab. 特任教授)のレクチャー

ジュリア・カセム氏は、出身国イギリスの1990年前後の美術館は、来館者に対して優良なサービスを提供しておらず、コミュニティは存在していなかったとお話されていました。当時の美術館はまさに文化の棺桶となっており非常に面白みのないものだったということです。それは、ガイドラインに縛られた形で美術館運営がされており、「ガイドラインだけでは、良いデザインは提供できない」とのことでした。確かにガイドラインは便利で従っていれば咎められるものでない反面、画一的で面白みにかけてしまうものだとも考えられます。以下の写真は、その典型例であり、盲導犬に対して英語と日本語で説明しているものの、本来説明をするべき必要な盲導犬の利用者に対して、その説明がないのではないかという問題を投げかけていました。

 

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また、アイルランドのダブリンで撮影された写真では、女の子に対しての、物理的な、そしてサービス的な排除、外国人の女性に対しての、言語的な排除、経済的な排除、そして感情の排除がなされているとの説明がされていました。このように現社会では、まだまだ知らない間に、人が人を排除する仕組みを作り出していること、そしてそのような仕組みの下で排除されている人がいるということを例示されていました。近年、日本では訪日外国人が増えてきましたが、日本ではまだ多言語表示されていない公共施設が多く、日本の美術館も外国人を排除しない試みを行うべきとお話しされていました。確かに、外国人に言語的にもサービスとしても親切であるべきであると思いますし、ジュリア・カセム氏が話されていたようなピクトグラムを活用するのも一つ有効な手段ではないかと感じました。

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ジュリア・カセム氏は、博物館や美術館が、様々な人たちにとって、認識的にも身体的にもアクセスしやすく、オープンスペースとして地域コミュニティの拠点であるべきであるとお話しされていました。

■ シェア

レクチャーの間に数分間の「シェア」という参加者同士が話し合いを持つ時間が3度あり、それぞれのレクチャーで話されていたことについて参加者自身の意見を話し合う機会がありました。こういったシェアの時間を設定することで、参加者同士が交流する機会を持つことができ、レクチャーに関する自分自身の考えと、他の参加者がどの様にレクチャーを捉えたのかを比較することができ、更に理解が深まって良い試みであると感じました。

シェアの後、10分間の休憩をはさみ、「それぞれの立場からのクリエイティブ・インクルージョン」という内容について3氏からレクチャーがありましたので、その内容を簡単に説明させていただきます。

■ 松下計氏(東京藝術大学美術学部デザイン科教授)のレクチャー

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専門性を深堀りするだけでは、クリエイティブな発想を行うには限界があり、深堀するだけでなく様々な専門領域の人々とクリエイティブインクルージョン、つまり多様な人々の発想を融合させ、新しいアイデアを生み出す試みについてレクチャーを頂きました。クリエイティブインクルージョン(創造的社会包摂をする)するためには、人々とつながることが重要であり、そのためにはその専門性のレベルを下げることも必要だということをお話しされていました。そして、新しい領域を切り開くためには、情報を掛け合わせて発信し、混ざる、混じることが重要ということでした。

■ ライラ・カセム氏(東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程在籍中)のレクチャー

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2年に渡り、社会福祉法人綾瀬ひまわり園で行われているアートクラスに講師として通われた経験についてレクチャーを頂きました。綾瀬ひまわり園で、知的障害をもつ利用者にアートを教え、どのようにしてそのひとりひとりの創造的可能性を見つけて引き出す作品制作に力を入れているか、という事例をご紹介いただきました。

■ 日比野克彦氏(東京藝術大学美術学部先端芸術表現科教授とびらプロジェクト代表教員)のレクチャー

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日比野氏からは、東京都のリーディング・プロジェクトのひとつである「TURN(ターン)」についてご紹介いただきました。「TURN」とは、異なる背景を持った人々が関わり合い、様々な「個」の出会いを表現するアートプロジェクトです。2015年度は、造形および身体表現、人々がもつ多様性に関する対話を含めた複合的な内容を盛り込み、福祉的な支援を必要とする人たちを含む一般市民が参加できるプログラムを目指すとのことでした。具体的には「TURNフェス」を実施し、アーティストが自ら進んで福祉施設・コミュニティに行き、障害者の視点で生活をし、その社会の中でどんな価値観があるか理解することを実践しているとのことでした。

■ パネルディスカッション

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「それぞれの立場からのクリエイティブインクルージョン」という題材をもとにパネルディスカッションがあり、レクチャーを頂いた4氏がそれぞれの経験や思想について、意見の交換を行いました。そして最後に参加者からいくつか質問があり、とびらプロジェクト オープンレクチャーは大きな拍手とともに終焉しました。

レクチャー中何度も登場した「クリエイティブインクルージョン」。やや難しい言葉ですが、これは確かにこれからの社会を形作る概念であり、またこの概念に近づこうと努力している「Museum」が将来、家庭・職場以外の第3のスペースとして、人々の創造性やコミュニケーションを育む拠点としての役割を担ってほしいと考えます。

今後、ますます訪日外国人が増え、そして国際交流が進み、日本人が日本人と関わっていけばよいという時代ではなくなる中、この「人々を排除しない参加型デザイン」や価値観の異なる様々な人々のアイデアを融合する「クリエイティブインクルージョン」が、この社会の中で重要になっていくのではないでしょうか。そういった観点から、このオープンレクチャーが自分自身の仕事や今後の社会との関わり方について、大変参考になる概念をレクチャーして頂いたと感じており、参加させていただいたことに感謝しております。今後とも、とびらプロジェクトが多種多様な人々をつなぎ、そこから生まれる新しい価値を社会に届け続けていくことを期待しております。
開催概要:http://tobira-project.info/openlecture4/

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