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【東京国立博物館】住友財団修復助成30年記念 特別企画「文化財よ、永遠に」内覧会レポート

東京国立博物館 本館特別4・5室では、2019年10月1日(火) ~12月1日(日)の期間、住友財団修復助成30年記念 特別企画「文化財よ、永遠に」が開催されています。
メディア向け内覧会が開催されましたので、今回はその様子をお届けします。

 

長きにわたり継承され、民族固有の精神を今に伝える貴重な文化財たち。素材や構造の脆弱性に加え、高温多湿、地震や風水害などの自然災害など、この国で文化財を次代に継承していくことは容易ではありません。
しかし、「自利利他公私一如」(国家・社会を利する事業をおこなう)を活動理念に掲げる公益財団三井住友財団は財団設立時より文化財修復に関わり、これまでに1000件を超える国内外の文化財修復事業に対して助成をおこなってきました。

本展は住友財団設立30年を記念し、助成によって修復された文化財の一部を展示。伝統の技術と最新の科学によって蘇った仏像など、貴重な作品の数々を紹介します。

 

文化財修復の「物語」

展覧会会場入口

 



重要文化財・千手観音菩薩立像(写真中央/福井・髙成寺蔵)など、貴重な仏像が立ち並ぶ

 

東日本大震災で損傷したが、往時の姿を取り戻した福島・楞嚴寺の釈迦如来坐像 (釈迦三尊像のうち) 鎌倉時代・14世紀

 

鎌倉期に制作された様々な仏像が集う十二神将立像(6体のうち3体) 鎌倉時代・13世紀 滋賀・金剛輪寺蔵

 

パネルでは彫刻の修理工程を解説

会場に足を踏み入れると、広い空間に日本各地の仏像が立ち並び、静謐な雰囲気を漂わせています。
実は、これらの仏像は全て修理によって「よみがえった」姿。
いずれも千年近い歳月を経た仏像ですが、何事もなく今に伝わったわけではありません。木を接着する漆や膠の劣化、彩色の剥落、虫による被害、ときに地震や水害など、さまざまな災害に見舞われることもありましたが、幾度かの修理を経て本来の姿を保っているのです。

会場内のパネルでは彫刻の修理工程など、「美を守る最前線」の現場を紹介。各作品がどのような過程を経て今にいたるのか、背景となる「物語」に目を向けることができるような構成となっています。

 

展示作品紹介

 

重要文化財  <千手観音菩薩立像>

平安時代・9世紀 福井・髙成寺

都との交流を通じて仏教文化が栄えた福井県の若狭地方に伝えられた千手観音像。一木造の技法で造られ、厳しさをたたえた風貌や腰腹部の豊かな肉付きが特徴的です。
40本の脇手はすべて各時代に作り直されたもので、近世の修理では本体に白い彩色が施され、顔の表情もよく見えなくなっていました。
しかし、現代の修理では基本「現状維持」が原則ですが、平成の修理では当時の造形がわかるように彩色を取り除き、面目を一新。脇手に関しては、その補修の歴史は仏像がたどってきた歴史そのものであると考え、補修後はふたたび接合し直したようです。

まさに修理作業は「ケース・バイ・ケース」であり、その難しさの一端が伝わってくる作品です。

 

  <阿弥陀如来立像>

鎌倉時代・13世紀 ベトナム国立歴史博物館

本像は、昭和18年に当時インドシナ半島を統治していたフランスの極東学院と、東京国立博物館の文化財交換のために贈られたもの。
発見時は経年劣化による損傷の他にも、像と台座を固定するために接着剤が使われている(!)など、日本の文化財に無理解であるために不適切な処置が施されてしまっていました。そこで現所有者であるベトナム国立歴史博物館に、日本の技術者が訪れて修理を実施。無事、本来の姿を取り戻しました。

本展覧会を機に、実に76年ぶりに日本へ里帰りを果たします。

 

<阿弥陀如来坐像>

平安時代・12世紀 栃木・満願寺

黄金に輝く緻密な彫文の光背を持つ、栃木県満願寺の阿弥陀如来坐像。やや反り気味の姿勢と、衣文線の柔らかな表現が印象的です。
光背はもともと破損しやすい部位ですが、本像においても台座との連結が不安定なため落下破損していました。修理作業においては各部材を全解体して接合し直し、さらにステンレスや真鍮で補強をおこなったそうで、その労苦がしのばれます。

 

守り、活かし、伝える

日本各地にひっそりと祀られる仏像。
そこには、地域の人たちの無病息災を願う思い、そして様々な場面で神仏に捧げられた祈りの心が込められています。
「絵画の修復などと違うのは、ご尊像は礼拝対象だということ。千手観音像でいえば、手が欠けていたりすると、問題があるわけですよね。仏像は本来は地域にあって、地域の人々が守り伝えてきたものですので、そうした人たちの思いを汲み取ったかたちでの修理が求められるのだと思います」
東京国立博物館・平常展調整室長の皿井氏はそのように語ってくださいました。

 

世界最高水準の修復技術によって蘇った、珠玉の作品の数々。
住友財団修復助成30年記念 「文化財よ、永遠に」は2019年12月1日(日)までの開催です。
ぜひ会場で、今に伝えられる人々の「祈りの心」に触れてみてはいかがでしょうか。

 

開催概要

展覧会名 住友財団修復助成30年記念 特別企画「文化財よ、永遠に」
会 期 2019年10月1日(火) ~12月1日(日)
9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
(ただし、金曜・土曜、11月3日(日)、11月4日(月・休)は21:00まで開館)
休館日 月曜日、11月5日(火)
(ただし、10月14日(月・祝)、11月4日(月・休)は開館)
会場 東京国立博物館 本館特別4室・特別5室
観覧料 一般620円(520円)、大学生410円(310円)
※総合文化展観覧料でご覧いただけます
※高校生以下、および満18歳未満、満70歳以上の方は無料
※( )内は20名以上の団体料金
※障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に障がい者手帳などを要提示。
公式サイト https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1958

 

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