東京都美術館で4月3日(日)まで開催されている、イタリア・ルネサンス期を代表する画家の一人、サンドロ・ボッティチェリの日本初の本格的な回顧展「ボッティチェリ展」の好評開催を記念して、2月24日、東京都美術館 講堂にて、俳優の石坂浩二さんを迎えたトークショーが開催されました。
ほぼ満席のトークショーは、TBSアナウンサーの安東弘樹さんが司会を務め、東京美術館学芸員の小林明子さんの解説により、笑いもありの1時間となりました。
以下5点の作品を石坂さんがピックアップし、紹介されました。
石坂さんと小林さんの解説、作品の魅力、独自の視点をご紹介いたします。
①《聖母子(バラ園の聖母)》1468-69 テンペラ、板 ウフィツィ美術館
石坂さん:
視線を移動させながら構図を作っている。
絵の中で動き、流れを作り出している。
小林さん:
巧みに構図を作るボッティチェリの才能が早くも発揮されている。
②《ラーマ家の東方三博士の礼拝》1475-76年頃 テンペラ、板 ウフィツィ美術館
石坂さん:
印象深くてボッティチェリらしい作品
この時代以降に描かれた作品は、背景がないものが多いが、この作品は背景のある作品なので選んだ。
小林さん:
今回の展覧会では、冒頭で紹介している作品
三博士を流れるように配置し、また、ボッティチェリ本人と言われている肖像画が右側にあるのもおもしろい。
③《美しきシモネッタの肖像》1480-85年頃 テンペラ、板 丸紅株式会社
©Marubeni Corporation
石坂さん:
この作品に合わせ、ネクタイとポケットチーフをピンクにしてきました(笑)
右利きが、右向きを描くのは難しいが、リッピとボッティチェリは右利きだったと思う、しかしボッティチェリは右向きの作品も多く、難しい挑戦をしていると感じている。
小林さん:
テンペラの特性をいかし、線描が際立ってみえる。
日本に唯一あるボッティチェリの作品で、企業のコレクションなので、普段は公開されていない。
④《アペレスの誹謗(ラ・カルンニア)》1494-96年頃 テンペラ、板 ウフィツィ美術館
Gabinetto Fotografico del Polo Museale Regionale della Toscana
Su concessione del MiBACT. Divieto di ulteriori riproduzioni o duplicazioni con qualsiasi mezzo
石坂さん:
システィーナ礼拝堂の壁画に描かれた装飾絵画は、ボッティチェリの作品だという事に気づかないでミケランジェロだけを見ている人が多くもったいない
中央の女性の腕の白さが利いている。
流れがつながっており、日本の絵巻のようだ
小林さん:
身振り、視線、たいまつの向きなど配置が細かく計算され、ドラマチックに表されている
背景には古代建築があり、アーチの向こうは海
実際にボッティチェリは風景を描くのが苦手だったのでは?
⑤《聖母子と洗礼者聖ヨハネ》1500-05年頃 油彩、カンヴァス パラティーナ美術館
石坂さん:
それ以前の作品では、絵を見ると波や風などの『音』が聞こえたが、晩年の頃の絵画には『音』が聞こえない
小林さん:
作風は変化しており、晩年には神話画などを描かなくなってきていた
サヴォナローラの影響を受け、作風も変化していった
小林さんは、石坂さんのトークについて「描く人ならではの視点がある、また新鮮な意見だ」とおっしゃっていました。
作品の説明を始めると石坂さんは立ち上がり熱心に説明して下さり、また、「ボッティチェリは日本的な絵なので、日本人は好きな絵なのではないか」とご紹介していただきました。
最後に、美術館の楽しみ方についての質問に、石坂さんは、「これは!と思う作品をどれか1つ見つけ、人には言わず、自分だけの宝物のように決め、その作品を見に美術館に訪れると楽しいのではないか」また小林さんは、「色々な情報よりも、まず、前にある絵を見る、作品自体を見るのがいい」という事でした。
美術ファンとして知られる石坂さんのボッティチェリ作品の魅力や独自の視点、また、東京都美術館学芸員の小林さんも称賛する程の解説で語っていただいたトークショーは、あっという間の1時間でした。