東京・上野にある国立科学博物館では、2021年3月9日から6月13日までの期間、特別展「大地のハンター展 ~陸の上にも4億年~」(以下「大地のハンター展」)が開催中です。
開催に先立って行われた報道内覧会に参加してきましたので、会場の様子や展示内容についてご紹介します。
ワクワクがつまった「大地のハンター展」会場
本展は、陸に上がってから約4億年の間に多様化した生物の「捕食」活動に注目。
獲物を捕えて食べる、陸上のハンター(捕食者)たちの生態やハンティングテクニックの広がりを、国立科学博物館が誇る貴重な標本コレクションを中心とした300点以上の標本展示で追っていく展覧会となっています。
すでに絶滅したものから現生のものまで。ハンターたちの標本は、哺乳類に爬虫類、両生類、鳥類、昆虫類など多彩な顔ぶれが「太古のハンター」、「大地に生きるハンター」、「ハンティングの技術」、「フォーエバー・大地のハンター」の4章構成で並べられていました。
「ライオン」「トラ」「ハヤブサ」などおなじみのハンターだけでなく、毒を使ったり寄生したり、あの手この手の策を弄する知られざるハンターたちが数多く紹介されているので、大人も子どもも知的好奇心が満たされること間違いなし! です。
人気漫画『BEASTARS(ビースターズ)』とコラボレーション!
擬人化された動物たちの群像劇を描いた板垣巴留先生の人気漫画『BEASTARS(ビースターズ)』(秋田書店『週刊少年チャンピオン』刊)とコラボしているのも本展の魅力の一つ。レゴシやルイなど漫画のキャラクターたちが会場のあちこちで見どころを紹介してくれます。
複製原画が多数展示されているコーナーもありましたので、ファンの方はぜひお見逃しなく。ただ、設置場所が通路だったため、混んでいるときはあまり長く立ち止まらないよう注意が必要かなと感じました。ミュージアムショップでは、本展描き下ろしのイラストが使用された限定グッズも販売されています。
ちなみに、本展の音声ガイドナビゲーターは人気声優の梶裕貴さんが担当されています。漫画ファン、声優ファンの方はより一層楽しめるかもしれません。
「大地のハンター展」展示品をピックアップ紹介
300点を超える展示品のなかから注目してほしいもの、面白いものをいくつかピックアップして紹介していきます。
◆デイノスクス
展示品は大きさもさまざまですが、超巨大なものでいうと、なんといっても入り口そばで来館者を出迎えてくれる、白亜紀に生息していたワニ「デイノスクス」の実物大生体復元モデルが圧巻!
最新の研究結果をもとに国立科学博物館の研究員による監修で制作されたもので、本展が初公開となるそうです。太古のハンターというとまず恐竜が思い浮かぶかもしれませんが、この「デイノスクス」は、なんとティラノサウルス科の恐竜も捕食していた(!)といわれるワニ。
全長は12mにも及んだとされていて、復元モデルは上半身のみですが目の前に立つとかなり迫力がありました。こんなのが水中から出てきたら気絶してしまいそう……。
◆芽殖孤虫
極小サイズの標本としては、”沈黙のハンター”と評されていた寄生虫「芽殖孤虫(がしょくこちゅう)」が挙げられます。ヒトが感染すると、皮下のできものからだんだんとすべての臓器組織に侵入されてしまうそうです。これまで発見された十数例のうち半分以上が死亡例で、感染経路や生態がいまだ謎というのが怖いところ。1cmあるかないかのサイズ感ですが、デイノスクスとは違った意味での凄みがあるハンターでした。
◆ミツバヤツメ
「太古のハンター」エリアでひと際目を引いたのが、こちらの「ミツバヤツメ」頭部生体模型。RPGゲームに出てきそうなモンスター然としていて、端的に言って怖すぎます!
現在まで生き残っている顎がない脊椎動物の例で、クジラなどの表面に吸い付いて、血液や体液を吸って生活しているのだとか。今でこそ脊椎動物のほとんどは顎をもっていますが、こうした顎のない脊椎動物は古生代には多様に存在したそうです。「ミツバヤツメ」は貴重な生き残りということですね。
◆ワニガメ
ハンティングの最も基本的な戦略は「待ち伏せ」ですが、なかにはただ待つだけでなく、疑似餌を用いて獲物を積極的に誘い込む、ルアーリングという技術を身につけたハンターたちもいます。
甲長が80cm、体重が80kg以上に達するというアメリカ大陸最大の淡水生のカメ「ワニガメ」は、川底に潜んで口を開け、ミミズそっくりなピンク色の舌を動かして魚を引きつけるそう。全体的に渋い色味で周囲の景色に溶け込みやすい一方で、舌だけが非常に目立つという、まさにルアーリング特化型として完成された姿に進化の歴史を感じました。
◆ササゴイ
こちらもルアーリングを得意とする「ササゴイ」という鳥です。「ワニガメ」と違うのは、自らの体ではなく別の生物を利用する点。おとりの昆虫を水面に浮かべて、それに寄ってきた魚を捕えるそうです。まるで釣りのようで面白いですね! 体力をいたずらに消耗しない頭脳派ハンターたちの技の一部は動画でも鑑賞できました。
◆ベルツノガエル
愛らしい見た目の標本も紹介していきます。
こちらは「ベルツノガエル」という、南米大陸に分布する最大で全長16cmほどに達するカエル。非常に丸っこい体型が特徴で、ペットとしても人気があるようです。つぶらな瞳と、ほよよんとした体からちょこっと覗く前足がなんとも言えずかわいいですね。待ち伏せ型ですが、口に入ればカエルや昆虫だけでなく、小型の鳥類や哺乳類まで食べてしまうということで、のんびりした見た目に反してかなり貪欲なハンターといえそうです。
◆チスイガラパゴスフィンチ
ガラパゴス諸島のダーウィン島とウォルフ島のみに分布する鳥「チスイガラパゴスフィンチ」。「かわいい鳥がいるな」と近寄って説明を読んでみたところ、鳥のなかで唯一、血液を常食する鳥であるということで、吸血鳥なんて存在がこの世にいるのかと驚きました。「カツオドリ」という鳥の腰をクチバシで突いて流れ出た血を飲むそうで、かわいい顔をしてなかなか恐ろしいハンターぶりです……。ほかにもサボテンの花密や種子、昆虫なども食べると紹介されており、なぜ血液を食べるようになったのか不思議ですね。
◆ニホンカワウソ
本展では、ヒトもハンターとして紹介されています。ときには生態系のバランスを崩し、ときには多くの野生動物を絶滅の危機に陥れる“残念なハンター”として……。
ヒトの活動によって生息域を広げたハンターとして「アライグマ」や「フイリマングース」が、絶滅してしまったハンターの例として「ニホンカワウソ」や「ニホンオオカミ」の骨格標本が展示されています。「生態系のパズルは1ピースが欠落しただけで、回復するのに長大な時間を要する」というエピローグの言葉の重みをかみしめながらの鑑賞となりました。
「ニホンカワウソ」は乱獲や開発によって数を減らし、1979年の高知県の記録を最後に絶滅してしまったといわれています。こちらは、学名の基準として指定されたという非常に貴重なタイプ標本とのこと。
ミュージアムショップではオリジナルグッズを多数用意!
展示を見終わると、最後に特設ミュージアムショップがお目見え。ニホンカワウソのぬいぐるみやマスキングテープ、『BEASTARS』デザインのシーチングトートなど、本展オリジナルグッズをはじめとするアイテムが多数販売されていました。
「大地のハンター展」公式図録は、会場でもオンラインストアでも購入可。なかを読むと「おしえて!かわだセンセイ」という子ども向けのQ&Aコーナーもあるなど、本展の副読本として内容も充実していますので、気になった方は忘れずにチェックしてくださいね。
※オンラインストアはこちらから⇒ https://daichi-exhn.shop/
特別展「大地のハンター展 ~陸の上にも4億年~」の開催は6月13日(日)まで。ハンターたちの個性や魅力に触れながら、自然のすばらしさや環境保全の大切さを学ぶ本展に、ぜひ足を運んでみてください。
<特別展「大地のハンター展 ~陸の上にも4億年~」開催概要>
会期 | 2021年3月9日(火)~ 6月13日(日) |
会場 | 国立科学博物館 地球館 |
開館時間 | 9時~17時 ※入場は閉館時刻の30分前まで |
休館日 | 月曜日 ※3月29日(月)、4月26日(月)、5月3日(月・祝)・24日(月)・31日(月)、6月7日(月)は開館 |
入場料 | 一般・大学生2000円、小中高校生600円
※入場にはオンラインによる事前予約(日時指定)が必要です。詳細はこちらから⇒ http://daichi.exhn.jp/ticket/ |
主催 | 国立科学博物館、日本経済新聞社、BSテレビ東京 |
公式ページ | http://daichi.exhn.jp/ |