今秋、東京国立博物館で実験的な展覧会が開催される。
「フォーシーズンズ」と題されたその展覧会では、四季折々の花々に託された日本人の伝統的な感性と、乃木坂46という現代のポップアイコンが融合を果たす。
この刺激的なテーマに挑む7名の映像作家は乃木坂46を通じ、いかにして日本美術の本質を浮かび上がらせたのか。
ココシル編集部では先行して開催された内覧会の様子をレポートし、その取り組みを紹介する。
乃木坂46が挑む「古典×現代」
2021年9月4日(土)~2021年11月28日(日)まで、東京国立博物館 表慶館にて「春夏秋冬/フォーシーズンズ 乃木坂46」が開催中だ。
本展のテーマの中核をなすのは日本美術の「古典×現代」である。
「日本美術」というと、特に若い人などはどこか縁遠く感じてしまう人は多いのではないだろうか。しかし、そこに描かれた自然や季節、四季折々の花々は今も変わらずに存在しているもの。自然を愛し、自分にとって身近な方法で描写しようとするのは昔も今も変わらない。
国立博物館は、幅広い世代から絶大な支持を集める乃木坂46がそうした日本古来の美意識と若い人たちをつなぐ架け橋になるのではないかと考えた。なぜなら、乃木坂46こそ穏やかな日常や身のまわりの自然を「歌」を起点にしてビジュアルとして世に広げ、そこに希望を託す存在だからだ。
本展では、季節の花が描かれた7点の日本美術(複製)を展示。その日本美術の「本質」ともいえる作品を7人の映像作家が独自に解釈し、大型インスタレーションとして展開している。
例えば齋藤飛鳥がパフォーマーを務める冒頭の『日本絵画の遠近表現』は狩野長信の『花下遊楽図屏風』をモチーフにした作品だが、ここで取り上げられ、再解釈されているのは同絵画に見られる遠近法である。
野外で行われる春の宴を幕越しに眺めているような体験を生じさせる『花下遊楽図屏風』の仕掛けを、スリットカーテン越しにレイヤー状に映像を投影するという手法で再現。映像作家の大久保拓朗氏による「古典の再解釈」といった位置づけの作品となっている。このように、展示作品において示されているのは日本美術を読み解くために必要なちょっとしたルール・コードなのである。
乃木坂46が表現する、「日常」という名の花
しかし、乃木坂の少女たちはこうした作り手側の意図を反映させるための存在にとどまらない。実際に作品を鑑賞してみると、彼女たちの存在は作家たちの思惑を超えた真実性を宿していると思える瞬間もある。それはまさに、インスタレーションという形式だからこそ実感できることなのかもしれない。
個人的に印象深かったのは『妖しい美』(池田一真作)における遠藤さくらである。私は乃木坂46に詳しいわけではないので、こんな妖艶な雰囲気を醸し出せるアイドルがいたのかと正直驚かされた。これは上村松園が六条御息所の生霊を描いた『焔』をモチーフにした作品だが、彼女の舞踏によって刻々と生じる衣装や髪の毛の動きは、まさに妖異そのものだ。
他にも、『秘められた風景』において賀喜遥香の醸し出す抒情性も素晴らしく、乃木坂メンバーひとりひとりの普段とは違った魅力を存分に楽しめるのも本展の魅力のひとつだろう。
本展の会期は2021年11月28日(日)まで。
乃木坂46というフィルターを通じて、伝統的な日本美術が今を生きる私たちとつながる瞬間。それはとても刺激的だ。
ぜひ、実際に会場で体験されることをおすすめしたい。
開催概要
会期 | 2021年9月4日(土)~2021年11月28日(日) |
会場 | 東京国立博物館 表慶館 |
開館時間 | 9:30~17:00 金・土曜日は、9:30~20:00 (入館は閉館の60分前まで) |
休館日 | 月曜日(ただし9月20日(月・祝)は開館)、9月21日(火) |
観覧料 | 一般・大学生 1,800円 高校生 1,000円 中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。 ※混雑緩和のため、本展は事前予約制(日時指定券)です。入場にあたって、すべてのお客様は日時指定券の予約が必要です。詳細は展覧会公式サイトでご確認ください。 |
主催 | 東京国立博物館、文化財活用センター、ソニー・ミュージックエンタテインメント、文化庁、日本芸術文化振興会 |
展覧会公式サイト | https://nogizaka-fourseasons.jp |