2016年7月5日(火)から8月7日(日)までの間、東京藝術大学大学美術館にて「観音の里の祈りとくらし展Ⅱ-びわ湖・長浜のホトケたち-」が開催されます。本日、その報道内覧会が開催されましたので、この展示会の様子をお伝えします。
「観音の里の祈りとくらし展Ⅱ」という名の通り、前回3年前にも「観音の里の祈りとくらし展 -びわ湖・長浜のホトケたち-」が開催され、長浜市で語り継がれてきた18軀の観音像が展示されました。この展覧会は、約3週間という短い期間にもかかわらず、2万人以上の人が来場し、大きな反響を呼びました。今回は、その第二弾として本展覧会が開催され、前回よりも多い49軀の仏像(うち重要文化財16軀)が東京藝術大学大学美術館に集います。さらにこの中の15軀は長浜市外に出るのも初めてということです。
それでは、この「観音の里の祈りとくらし展Ⅱ-びわ湖・長浜のホトケたち-」を観賞した後、筆者が感じた展覧会の見どころをお伝えします。
① 仕切りを最小限に抑え、360度仏像を見ることができる展示
仕切りが少ないため、約4割の仏像を、360度様々な角度で見ることができます。普段は正面からのみ見ることができるので、全方向から見ることができる貴重な機会です。
② 観音の里の信仰文化を紹介
長浜は、交通の要所であることから、中世に幾多もの戦乱に見舞われました。その都度、地域の住民の手によって、地中に埋めたり、川底に沈めることによって難を逃れてきました。このように長い年月の間、時代を問わず多くの住民に信仰されてきた歴史と文化を知ることができます。それぞれの仏像には、地域住民との結びつきを知らせるパネルが準備されており、地域に息づく信仰の心を伝えています。
③ 多様な種類の仏像が一堂に集います。
長浜市に伝わる、49軀の多種多様な仏像が東京藝術大学美術館に一堂に集うため、様々な寺院を巡ることなく、観賞することができます。
今回、筆者が印象に残った仏像を3軀ご紹介します。
伝千手観音立像 所在:長浜市木之本町黒田
2mもある大きな観音像で、細部まで彫刻され、非常に迫力があります。美術館の照明も効果的で、やや薄暗い空間に神秘的な像として映ります。
阿弥陀如来立像 所在:長浜市加田町
仏様の微笑みが大変印象的で、平和を願われている表情です。見ているとこの微笑みに癒されます。
千手千足観音立像 所在:長浜市高月町西野
あまり見たことのない千本の足を持つ観音様です。また、表情も独特で日本の仏像離れ(?)しており、千手千足という珍しさもあって一見の価値があります。
このように長浜の地で、それぞれの時代を通して、多くの住民の方々に守られ、信仰されてきた歴史をこの展覧会で観賞することができます。この内覧会の前に行われた記者説明会の際に、主催者としてご挨拶された東京藝術大学の薩摩教授は、「博物館は、ただ単に美術品を集めるだけでなく広い視野で芸術文化を守り、育てていく必要がある。今後、何百年、何千年とこの信仰の文化をこれまでと同じように守っていくために、多くの人々が困難にも関わらず守り伝えられてきたこの信仰の文化を知ってもらうきっかけになれば」とお話しされていました。
芸術品としてこれらの仏像は確かに価値があるものですが、それと同じように私たち日本人が守ってきた伝統や信仰といった文化を知り、守り伝える価値があるということをこの展覧会を通して感じることができました。是非、この東京藝術大学大学美術館で開催されている「観音の里の祈りとくらし展Ⅱ-びわ湖・長浜のホトケたち-」にお越しになり、長浜の人々が守り伝えてきた仏像、そして、信仰の文化を観賞されてはいかがでしょうか。