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【東京都美術館】 開館90周年記念展「木々との対話―再生をめぐる5つの風景」 内覧会体験レポート

7月26日から10月2日までの間、東京都美術館で開催される開館90周年記念展「木々との対話―再生をめぐる5つの風景」の報道内覧会に参加いたしましたので、その様子をお伝えいたします。

 

東京都美術館は1926年の開館以来、同時代美術の発表の場であり続けてきました。1980年代から「素材と表現」というテーマを元に自主企画展の開催を続け、その流れの下、今回は「木」という素材に着目し、本展示会の開催に至ったとのことです。東京都美術館の開館90周年を記念して開催される本展では、素材やテーマとして、「木」を扱う5名の現代作家、國安孝昌氏、須田悦弘氏、田窪恭治氏、土屋仁応氏、舟越桂─氏の作品を取り上げ、「木々との対話」、そして「再生」をテーマに作品が展示されています。

 

さて、ここからは本記念展で印象に残った作品をご紹介してきます。

 

【田窪恭治氏の作品】

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感覚細胞–2016・イチョウ

 

作品の一部となっているイチョウは、太平洋戦争の空襲の際に焼夷弾が直撃し、大きな傷を負った木ということです。このため、上部は焼かれた跡が残り、木の中腹に、大きな傷があります。しかし、多くの人たちが木を再生させようとした結果、現在まで枯れることなく生き続けています。このような歴史ある木を今回のテーマとして選び、木の周辺に5種類の形状のコルテン鋼を並べた作品になります。緑が生い茂る木とコルテン鋼の対比が素晴らしく、また木の陰になった部分と陰になっていない部分の色の違い、近寄ったときのコルテン鋼の色が微妙に違い模様が浮かび上がるところなど、様々な見どころにあふれています。イチョウの木は残るものの、本展覧会の開催中のみ展示となるそうなので、この機会にぜひ一度本作をご覧ください。色々な角度から、そして時間を変えてみると、きっと多くの見所がみつかる作品です。

 

【須田悦弘氏の作品】

須田悦弘氏の作品は、目立たないところにひっそりと飾ってありますが、一度目に入ると、その存在が忘れられなくなるような存在感を発する作品です。

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チューリップ 2008

 

ここでは、チューリップという作品をご紹介させていただきますが、初めはこの作品が木彫であることに気が付かず、何度も見返すと木彫であるとともにこの空間に映えるように設計された作品であることが理解できました。木彫で作られた作品も素晴らしいですが、さりげなく飾られたこの木彫の作品も含めた、空間の芸術性を楽しんでいただければ。

 

【土屋仁応氏の作品】

 

私が見た感想として、「暖かい」という感覚に包まれます。多くの作品で子供の柔らかさと無垢さが表現されており、何か心が「ほんわか」します。

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牡羊 2012

 

作品が見せるやさしい表情が木の柔らかさと共鳴しているようで、これが作品の良さを一層際立たせます。最近の作品は、優しい目を持つ動物だけでなく、肉食動物も本展に展示されていますが、木の柔らかさとしなやかさ、そして動物の優しい表情をご覧ください。きっと「暖かい」気持ちに浸ることができます。

 

【國安孝昌氏の作品】

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CHI VA PIANO VA LONTANO 2016 (静かに行く人は、遠くに行く)

 

私はこの作品を一度、二度と眺め、そして作品のタイトルを見たときに、作品が意味することが理解できたように感じます。高さ10mを超えるであろうこの空間を支配する圧倒的な作品は、静かに努力を続けた人がやがて大きなことを成し遂げることができるという意味を、恐らくこの作品を通じて作者の方が伝えたかったのではなかろうかと。毎日3人以上の人をかけ、制作14日間かけたこの作品は、見る人を圧倒し、作者が伝えたいと考えている何かを伝える力があると私は思うのです。

 

【舟越桂─氏の作品】

 

ドローイングしたものを木彫する舟越桂─氏の作品は、作者がまず脳裏に浮かんだものを絵として描き、その考えが研ぎ澄まされたものが木彫という形で作品となっています。この脳裏に浮かんだ2次元のドローイングが3次元の木彫となるまでの軌跡を考えながら見比べると、その思考の流れが見えてくるのではないでしょうか。

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遠い手のスフィンクス 2006

 

ここでは、5作家の「木」を用いた作品の一部をご紹介してきましたが、それぞれの作家の作品からあふれる個性を鑑賞できる展覧会となっています。この数々の「木」をテーマにした展示作品から感じられる、「木」という素材の強さ、柔らかさ、しなやかさを、ぜひ東京都美術館で感じていただければと思います。

 

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