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【東京藝術大学大学美術館】 「驚きの明治工藝」報道内覧会レポート

2016年9月7日(水)から10月30日(日)まで、東京藝術大学大学美術館にて「驚きの明治工藝」展が開催されます。
9月6日に報道内覧会が開催されましたので、今回はその様子をレポートいたします。

 

26年前。一人の台湾人が、ある運命的な出会いを果たしていました。
彼の名前は宋培安。中国の玉や竹彫などの骨董品を集めるのが趣味だった宋氏は、日本の友人に見せてもらった明治の工芸品の美しさに、今までにない感動を覚えました。作者もわからない、小さな象牙の彫刻。その精密さにすっかり魅せられ、この日から、宋氏の明治工芸品を収集する旅が始まったのです。

 

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「驚きの明治工藝」展は、明治時代を中心にした日本工芸作品の名品を約130件収蔵した「宋培安コレクション」を、日本で初めてまとめて紹介するものです。
江戸時代後期から昭和初期まで、彫刻、金工、染織品など、あらゆる工芸品のジャンルにおいて見出される驚きの技術と表現力。
本展では、外国への輸出政策のもと、「作品」となった有名・無名の製作者たちの工芸品を、一堂に鑑賞することができます。


それでは、展示風景をご紹介していきましょう。

 

■第1章 写実の追求—まるで本物のように-

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自在龍 宗義 明治—昭和時代

自在龍 宗義 明治—昭和時代

 

展示会場入り口で出迎えてくれるのは、宙を舞う「自在龍」です!
全長3メートル、まさに「驚き」の大きさと造形力。世界最大の自在置物です。

日本における立体造形は、仏像のように、理想的な姿を具現化しようとする傾向が長く続いていました。江戸時代になると、動物や植物を写実的に表現した工芸作品が生み出されるようになりますが、その代表的な例としてあげられるのが「自在置物」です。

 

自在蛇 明珍宗春 江戸時代

自在蛇 明珍宗春 江戸時代

 

自在置物はその名の通り、その動物の胴体、手、脚などの可動域までも再現されており、実際に動かせるのが特徴です。もちろんこういった展示会で私たちが実際に手にとるのは難しいのですが、なんと本展覧会では、この「自在蛇」が実際に動いている様子が動画で配信されます!ぜひ会場でご覧ください。

 

春日 竹に蜥蜴 宮本理三郎 昭和時代

春日 竹に蜥蜴 宮本理三郎 昭和時代

 

木彫によって、竹の上を這う蜥蜴を表現した作品。今にも動き出しそう・・・。

「木」という素材は、国土の約7割を森林が占めるこの日本にあって、あらゆる場面で活用され、その木目がもたらす美しさ、手触りが長く人々に愛されてきました。明治時代になり、さらなる写実を追求した木彫ですが、この宮本理三郎の作品には、形状のみならず質感までも把握しようという強烈な意欲が感じられます。

 

蝉 竹江 明治時代

蝉 竹江 明治時代

 

ほんもの?
一瞬、自分の目を疑うほどの存在感。
この『蝉』は体、脚、羽に別々の素材を使用してその特質を活かし、各部の質感を完璧にとらえています。
では、その素材とは何でしょうか?実は、本展覧会には随所にクイズがちりばめられています。この『蝉』の素材クイズもその一つ。正解は、会場で確かめてみてくださいね!

 

■第2章 技巧を凝らす-どこまでやるの、ここまでやるか-

薩摩焼送子観音花瓶 藪明山 明治—昭和時代

薩摩焼送子観音花瓶 藪明山 明治—昭和時代

 

殖産興業の政策の一環として、政府は江戸時代に高度な完成度に達していた日本の工芸品に目をつけました。輸出や博覧会に出品するために製作が奨励され、結果的に作者たちは技を競い、その精度を極限まで追求していくことになるのです。

その中でも、鮮やかな釉薬で彩色した陶磁は主要な海外輸出品となりました。この『薩摩焼送子観音花瓶』は、安産のご利益があるという「送子観音」を描いた作品です。観音様のお姿から周囲の文様にいたるまで、非常に綿密に描き込まれています。

 

兎 山田宗美 明治時代

兎 山田宗美 明治時代

 

「どうやったら鉄の塊からこんなすごいかたちをつくれるのかわからず、非常に魅力を感じました」(宋培安氏)
そう、これは粘土ではありません。鉄から打ち出したものです。
作者の山田宗美の特徴は、「日本一」とまで称されたその槌起(打ち出し)の技術と、寝食の時間まで惜しんで対象と向き合った、その観察力です。
熱を加えてやわらかな瞬間のうちに加工し、内外から金槌で打っていくというその製作法。

まるで炎とともに、生命まで鉄の中に封じ込めてしまったかのようです。

 

大文字焼図壁掛 無銘 明治—昭和時代

大文字焼図壁掛 無銘 明治—昭和時代

 

染料で毛羽立ったビロードに、遠近感のある絵画的な表現を描くことを可能にした「天鵞絨友禅」。
寺社と背景の大文字山を遠近法で描いたこの『大文字焼図壁掛』は、作者不明の作品です。先ほどの『蝉』の作者である「竹江」という人物も経歴がよくわかっていないのですが、こうした無名、もしくは無名に近い人たちの持っていた驚異的な技術力が、おそらく明治期に優れた工芸品の数々を生み出す原動力になったのでしょう。


「私は、これらの作品の作者たちに、約束をしていたんです」
所蔵者である宋倍安氏は語ります。
「まだ、日本人の多くがその存在すら知らない。でも、いつかあなたたちの名誉を取り戻します、と。そして今日、私は約束を果たすことができました」

2004年、台湾国立故宮博物館南院、2011年、国立台湾芸術センター。そして2016年、明治時代の工芸家や美術家たちが時空を超え、海を渡り、日本に里帰りします。

 

私たちの知らない、「日本人」に出会う。
誰もが「すごい!」と感嘆する精粋の作品を集めた「驚きの明治工藝」展、ぜひこの機会に足を運んでみてはいかがでしょうか?

 

.。o○(これは、行くしかない・・・!)

太公望 毛利教武

太公望 毛利教武


展示会の開催概要はこちら:

https://home.ueno.kokosil.net/ja/archives/8675


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