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2017年1月21日(土)から4月2日(日)にかけて東京都美術館にて開催される日伊国交樹立150周年記念「ティツィアーノとヴェネツィア派展」の報道発表会が9月27日に行われましたので、その様子をレポートいたします。
水の都ヴェネツィアは14世紀~16世紀にかけて、東西海洋交易の拡大より政治・経済が飛躍的に繁栄します。そんな中でフィレンツェ、ローマと並ぶルネサンス美術の中心地として輝かしい発展を遂げ黄金時代を迎えます。
ルネサンス時代のヴェネツィアを活動の拠点とした芸術家たちは「ヴェネツィア派」と総称され、ヴェネツィア派に分類される画家たちは、おもにベッリーニ一族の工房を中核に形成されました。
ベッリーニ工房で育った多くの優れた画家たちのなかにティツィアーノがいます。
ティツィアーノは自由な筆使いと豊かな色彩を特徴とし、同時代の画家のみならず、ルーベンスやベラスケス、ルノワールなど後世の画家たちにも多大なる影響を与えた、美術の歴史においてレオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロ、ミケランジェロと並ぶルネサンス美術の重要な人物です。
本展覧会はティツィアーノを中心に黄金期を築いた偉大な画家たちの絵画を通してヴェネツィア・ルネサンス美術の特徴とその魅力を紹介していきます。
ベッリーニ工房を中心に展開するヴェネツィア・ルネサンス初期、ティツィアーノの円熟期とヴェネツィア派の画家たちの時代、ティツィアーノ以後の巨匠たちの時代という流れに沿って、およそ70点におよぶ絵画、版画を見ることができ、ヴェネツィア派の魅力を存分に堪能していただける機会となるでしょう。
第1章 ヴェネツィア・ルネサンス初期
ルネサンス期のヴェネツィア美術の礎を築いたのは、ベッリーニ工房とヴィヴァリーニ工房でした。とりわけベッリーニ工房からはティツィアーノをはじめ数々の優れた画家たちが輩出されます、彼らはヴェネツィアという異文化に開かれた土地でビザンティン美術の装飾性やフランドル絵画の精緻さに触れ、フィレンツェの芸術家による壁画や彫刻を柔軟に学び、新たな様式を生み出します。
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「フローラ」 ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
描かれた女性はローマ神話の花の女神フローラとされ、右手に持つバラの花束によっても示されています。肌を露わにしているため、女神に扮した勝負の肖像であるとも考えられています。または右手の薬指に指輪をはめていることから、花嫁や結婚の寓意像とも解釈されています。
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「復活のキリスト」 ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
頭を上げ、上方を仰ぎ見る視線をとる人物像は、以後のティツィアーノの宗教画に頻繁にみられる表現です。
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「フリッツォーニの聖母」 ジョバンニ・ベッリーニ
第2章 ティツィアーノの時代
ティツィアーノは、ベッリーニやジョルジョーネに学んだ繊細な色彩の諧調と光の表現に、力強さと抑揚を加え、新しい絵画の可能性を切り開きました。
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「ダナエ」 ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
ダナエは魅力的な裸体を惜しみなくさらし、金貨の混ざった黄金の雨を恍惚としたまなざしで見つめています。
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「ユディト」 パルマ・イル・ヴェッキオ
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「レダと白鳥」 ヤコポ・ティントレット
第3章 ティツィアーノからティントレット、ヴェロネーゼへ
ティツィアーノは長い画歴のなかで、次々と様式を変化させていきました。後年には、筆致の荒々しさが増し、光と影の対比を強調した表現へと移行していきます。
その一方で、ヴェネツィアではティントレットとヴェロネーゼという新たな絵画の担い手が誕生します。
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「マグダラのマリア」 ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
ティツィアーノが描いたいくつかのマグダラのマリアのうち、もっとも後期に位置づけられる作品です。
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「教皇パウルス3世の肖像」 ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
ファルネーゼ家出身の教皇パウルス3世が1543年に神聖ローマ皇帝カール5世に会うためにボローニャを訪れた際、教皇自身がティツィアーノのモデルとなって描かれた作品です。
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「聖家族と聖バルバラ、幼い洗礼者聖ヨハネ」 パオロ・ヴェロネーゼ
このように「第1章 ヴェネツィア・ルネサンス初期」「第2章 ティツィアーノの時代」「第3章 ティツィアーノからティントレット、ヴェロネーゼへ」の全3章から構成されています。
今回の見どころは、
①ミケランジェロが嫉妬し、ルーベンスやルノワールも憧れた“画家の王者”ティツィアーノ。
②色彩美が際立つ《ダナエ》日本初公開!イタリアの至宝《フローラ》も来日!
③ヴェネツィアの黄金期、花開いた才能が勢揃い!
色彩による明暗の立体感が感じられる、およそ70点にもおよぶ絵画と版画を見ることができる絶好の機会です。ぜひ日本初公開の「ダナエ」やイタリアの至宝「フローラ」をはじめ、数多くの素晴らしい作品を開催されましたら是非ご覧になってみてはいかがでしょうか。