2017年3月28日(火)から5月21日(日)にかけて東京藝術大学大学美術館にて開催される、特別展「雪村-奇想の誕生-」の報道発表会が10月11日に行われましたので、その様子をレポートいたします。
雪村周継(せっそん しゅうけい)は、戦国時代に東国で活躍した画僧です。
常陸国(現在の茨城県常陸大宮市)で武家の一族として生まれた雪村は、幼くして出家し画業の道を歩み始めます。86歳を超える長寿でしたが、雪村の筆力は最後まで衰えることはありませんでした。
「個性的であり、近代性を持っていた。雪村の作品は奇想の始まり。」とお話してくださったのは、監修者の河合正朝氏。
そうした雪村の魅力に取り憑かれた画家のひとりが、江戸時代の画家、尾形光琳です。光琳は雪村画を丁寧に模写し、「雪村」という石印まで所有していました。多くの画家たちを魅了した雪村の主要作品およそ100件と関連作品約30件で構成される最大規模の展覧会となります。
本展覧会は、「第1章 常陸時代 画僧として生きる」「第2章 小田原・鎌倉滞在 独創的表現の確立」「第3章 奥州滞在 雪村芸術の絶頂期」「第4章 身近なものへの眼差し」「第5章 三春時代 筆力衰えぬ晩年」「第6章 雪村を継ぐ者たち」の全6章により構成されています。
雪村の魅力を紹介してくれたのは、東京藝術大学大学美術館 准教授 古田亮氏。
・型破りな構成
・ユニークな形態
・大胆にして繊細
・細部に宿る命
雪村の作品は絵に動きがあり、30㎝ほどの作品でも、その中にとても大きな世界を感じることができます。
本当に風が吹いているような、雪の作品は冬の寒さを感じるような躍動感あふれる作品です。
本展覧会の見どころは、
①15年ぶりの大回顧展。今、新たな魅力に迫る
18世紀に活躍した奇想の画家・若冲より200年も前に戦乱の世に生まれた雪村。そのユニークな絵画表現は、元祖“奇想の画家”とも言うべき破天荒さを見せます。現代の眼から雪村芸術の新たな魅力をさぐります。
②実物からしか味わえない、息を呑む世界観。
大きな屏風から小さな掛軸まで、雪村画は実際に作品の前に立たなければ味わえない独特の世界観があります。本展では、細部に宿る雪村芸術の真髄に触れていただけるよう、拡大図などを掲示します。
③尾形光琳が愛し、近代画家たちも引き継いだ雪村芸術。
琳派の大成者・尾形光琳は雪村を敬愛し、また近代の狩野芳崖らは新たな日本画の創出のために雪村を研究しました。本展では、雪村芸術の後世への継承をはじめて検証、実作例によって紹介します。
戦国時代に現れた天才的な画僧、雪村。その作品は、後世の画家たちに多大な影響を与え、近代へと繋がってきました。
1974年 東京国立博物館、1992年 茨城県立美術館、2002年 千葉市立美術館に続き、15年ぶりの展覧会は、貴重な作品、質の良い作品を集めています。
写真では味わえない、水・滝・雪・風 自然の勢力と動きのある雪村の作品そして世界が感じられる展覧会となりますので、開催されましたら是非ご覧になってはいかがでしょうか。