Oops! It appears that you have disabled your Javascript. In order for you to see this page as it is meant to appear, we ask that you please re-enable your Javascript!

【上野の森美術館】「ミラクル エッシャー展」内覧会レポート

左からロニット・ソレック氏(イスラエル博物館 版画・素描部門学芸員)、シヴァン・エラン=レヴィアン氏(イスラエル博物館 巡回展主任)、熊澤弘氏(東京藝術大学大学美術館 准教授)、野老朝雄氏(アーティスト)

 

2018年6月6日(水)から7月29日(日)まで、上野の森美術館にて「ミラクル エッシャー展」が開催されます。今回は、先日開催されたプレス内覧会の様子をお伝えいたします。

 

「視覚の魔術師」とも呼ばれる稀代の版画家、マウリッツ・コルネリス・エッシャー。実際にありそうで存在しない世界、ひとつの絵の中に重力が異なる世界が存在するなど、その奇妙で不可思議な作風は世界の人々を魅了し続けています。

生誕120年を記念して開催される大型展覧会「ミラクル エッシャー展」では、世界最大級のエッシャーコレクションを誇るイスラエル博物館の所蔵品より、有名な“トロンプ・ルイユ”(だまし絵)の作品に加え、同博物館でも常設展示されていない秘蔵のコレクション約150点が来日します。
奇想版画家エッシャーは、どのようにして唯一無二の作品を生み出したのか。本展覧会では、「科学」「聖書」などの8つの独自の観点から、その「ミラクルな」版画の謎に迫ります。


| 展示紹介

 

1. エッシャーと『科学』

 



エッシャーの版画では、特定のモティーフが反復しながら循環したり、タイル状に埋め尽くされるなど、幾何学的な独自の表現が用いられています。エッシャーはこれらの表現を生み出すために、同時代の科学から着想を受け、独自の数学的な理論を発展させました。

この章では、エッシャー版画に現れるさまざまな幾何学的表現を紹介しています。

 

2.エッシャーと『聖書』

第2章では、若いエッシャーが描いたキリスト教主題の版画が取り上げられています。旧約聖書創世記を扱った連作には、19世紀後半から20世紀初頭にヨーロッパで流行したアール・デコ様式からの影響を見ることができます。

 

3.エッシャーと『風景』

1920年代からのイタリア、スペイン旅行、特にアルハンブラ宮殿での幾何学な装飾模様との出会いは、のちのパターン化されたモティーフ表現の原点となりました。そしてピクチャレクスな風景版画は、のちに登場する視覚的な実験を先取りしたものとなっています。

 

4.エッシャーと『人物』

エッシャー版画に登場する人物像は、しばしば反復されるパターンのモティーフの一つとして画面に登場しますが、初期のエッシャーは単身の人物表現にも取り組んでいます。

この章で紹介されている人物像の多くは家族など近しい人を扱っていますが、同時に自分自身の姿もさまざまな方法でモティーフとしていました。

 

5.エッシャーと『広告』

エッシャーの造形は商業デザインにも登場します。この章では、商用として利用されたイメージとともに、エッシャーらしさが凝縮された小さなグリーディングカードも展示されています。

 

6.エッシャーと『技法』

自らを「芸術家」ではなく「版画家」と考えていたエッシャーは、木版、リトグラフ、メゾティントなどさまざまな版画技法に取り組み、それらの技法を高度に発展させ、時に複数の技法を統合させながら不可思議な版画空間を作り出しました。

この章では、多種多様な作例、マテリアルとともにエッシャーの版画技法を紹介しています。

 

7.エッシャーと『反射』

こちらは《球面鏡のある静物》という作品。エッシャーの作り出す不可思議な世界の特徴のひとつが、「鏡面」のイメージです。鏡面を用いた絵画は、ヨーロッパでは近代以前から数多く描かれましたが、エッシャーもまた現実世界のモティーフと仮想世界としての鏡像の共存するイメージを描くことに没頭していました。

 

8.エッシャーと『錯視』

エッシャーの代表作でもある《相対性》や《滝》といった作品が展示されている最終章。エッシャー芸術を代表する要素が、これらの作品に見られるような実現不可能な建築表現、永遠に変化し続けるパターンを描いた「ありえない世界」です。

この独創的な表現は、当時の数学者が発表した不可能な図形に着想を得たものもあり、正則分割を用いた循環する表現とともに、エッシャーが長年にわたり独自発展させた理論が形になったものです。


大作《メタモルフォーゼII》の前で展示解説をおこなう熊澤弘氏

本展覧会のフィナーレを飾るのは、1939-1940年に制作された大作《メタモルフォーゼII》。文字から始まり、さまざまな形態が変容しながら循環し続け、やがて最初の文字へと至るこの作品は「エッシャー芸術の極点」とも称えられます。

「第二次世界大戦後、エッシャーの展覧会が英語圏で開かれたのをきっかけに、現在まで至るエッシャー人気が生まれましたが、その時に高く評価されたのがこの《メタモルフォーゼII》です。この後、彼の作品はいわゆるアートの領域よりも科学者や数学者に取り上げられる機会が増えていきました。そうした点もこの作者の面白いところだと思います」

そう語ってくださったのは、東京藝術大学大学美術館 准教授の熊澤弘氏。

「彼のフォロワーの一人が『インセプション』を監督したクリストファー・ノーランであり、変わったところでは『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦さんもそうですね。このように現代の私たちのポップカルチャーにも影響を与えているエッシャーですが、彼の展覧会では東京では12年ぶりとなります。ぜひまたフレッシュな視点で、エッシャーの作品をご覧いただければと思います」

 

会期は2018年6月6日(水)から7月29日(日)まで。
これは現実なのか?仮想世界なのか?
今世紀最大の「奇想の版画家」に挑む「ミラクル エッシャー展」、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。


開催概要はこちら:
https://home.ueno.kokosil.net/ja/archives/23956


Top