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【国立西洋美術館】 「クラーナハ展—500年後の誘惑」内覧会レポート

2016年10月15日(土)から2017年1月15日(日)まで、国立西洋美術館にて「クラーナハ展—500年後の誘惑」が開催されます。10月14日にプレス内覧会が開催されましたので、展示の様子をお伝えいたします。

切断された男の生首と、剣を手にした美女。
リアルに描写された首の切断面と男の顔、そして首を持つ女性の妖しくも冷たい表情が、見る人の心を捉えます。この『ホロフェルネスの首を持つユディト』は、アッシリアの軍勢に脅かされていた故郷ベトリアを救うため、敵の将軍を惑わせて殺したユディトにまつわる聖書の物語が主題になっています。

クラーナハは、その生涯において魅惑的な女性像を数多く描いたことで知られるドイツ中南部出身の画家です。「クラーナハ展—500年後の誘惑」は、その独特のエロティシズムで古今多くの人々を魅了し、ドイツのルネサンス期を代表する画家の一人に数えられるクラーナハの全貌を、アジアではじめて明らかにする貴重な展覧会となります。

本展覧会は、

第1章 蛇の紋章とともにー宮廷画家としてのクラーナハ

第2章 時代の相貌—肖像画家としてのクラーナハ

第3章 グラフィズムの実験—版画家としてのクラーナハ

第4章 時を超えるアンビヴァレンスー裸体表現の諸相

第5章 誘惑する絵—「女のちから」というテーマ系

第6章 宗教改革の「顔」たちールターを超えて

の6章に分かれて構成されています。


それでは、展示風景をご紹介していきましょう。



 

第1章 蛇の紋章とともにー宮廷画家としてのクラーナハ

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ウィーンで画家として頭角をあらわしていたクラーナハは、ザクセン公国の都ヴィッテンベルクに招かれ、神聖ローマ帝国に宮廷画家として仕えました。冒頭に登場する肖像画『ザクセン選帝侯フリードリヒ賢明公』は、クラーナハが1504年から仕えた選帝侯の姿を描いたものです。この章では、彼が神聖ローマ帝国の領主君主たちに捧げた、キリスト教の物語や古代神話を主題にした作品を多く展示しています。

その中でも『聖カタリナの殉教』は特に印象に残るものでした。劇的な天変地異のようす、そして「美女」と「死」。のちの『ホロフェルネスの首を持つユディト』につながるテーマが暗示されているように思えます。

 

第2章 時代の相貌—肖像画家としてのクラーナハ

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フリードリヒ賢明公からヨハン・フリードリヒ寛大公まで、およそ半世紀にわたって3代のザクセン選帝侯に仕えたクラーナハ。彼のもとには、時の権力者や宮廷人、政治家や人文主義者など、まさに「時の顔」が集まってきました。彼はそうした人々の肖像画を描き続け、ルネサンス期のドイツにおける最大の肖像画家となったのです。

『ザクセン公女マリア』の肖像は、その衣装の奇抜なデザインにも目を奪われます。赤い布に小さな切れ目をたくさん入れたそのデザインは、当時のドイツで大流行していたものです。肖像画を通じ、当時の最先端の風俗を知ることができますね!

 

第3章 グラフィズムの実験—版画家としてのクラーナハ

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クラーナハは不特定多数の人々に大量に作品を届けることができる「版画」という技術を重視し、大工房を経営していました。版画は大量生産を可能にするテクノロジーが試される場であり、また、特定の注文主の意向に拘束されず、自由に創作することができるメディアだったからです。

独特な曲線で描かれた版画はとても緻密で、登場する天使や怪物たちの姿も面白く、観ていて飽きません。個人的に印象的だったのは、『マルクス・クルティウスの殉教』です。騎士が地面の大穴に落ちて死ぬ場面を描いているのですが、殉教という崇高な場面にもかかわらず、どこかのどかでユーモラス。

 

第4章 時を超えるアンビヴァレンスー裸体表現の諸相

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今回のクラーナハ展の真骨頂とも言える章です。官能的な女性の裸体像が並び、絵画を観る私たちに魅惑的な視線を投げかけます・・・。作品を眺めていると、ふとあることに気がつきます。グラマーな美女が少ない、と(すみません)!

当時は、例えばイタリアではギリシャ・ローマ時代の古代彫刻のような理想的なプロポーションを描くことが主流でしたが、クラーナハは欲望を喚起する新たな身体表現を求め、こうした華奢な少女のような裸体表現を好んだのです。

その中の一つ、『正義の寓意』は天秤と剣を持った女性を描いていますが、タロットカードの「正義」のカードと同じですね。何か関係があるのでしょうか・・・?

 

第5章 誘惑する絵—「女のちから」というテーマ系

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クラーナハの絵画に登場する女性たちは、そのエロチックな肢体で、魅惑的な眼差しで、私たちを「誘惑」します。しかし、クラーナハの女性たちはつねに微笑みの陰に「たくらみ」を抱いた存在として描かれています。

この章で描かれるのは、その「たくらみ」にふらふらと惹きつけられてきた哀れな男たち。美貌に目がくらみ、黄金の指輪を贈る老人。美女に囲まれて笑う英雄ヘラクレス。その顔のしまりのないこと、英雄の威厳はどこへやら・・・私も気をつけます・・・。

冒頭でご紹介した『ホロフェルネスの首を持つユディト』もこの章に展示されています。

 

第6章 宗教改革の「顔」たちールターを超えて

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どこかで見た顔ではありませんか?マルティン・ルターの肖像画は、歴史の教科書で目にしていた方も多いのではないでしょうか。ルターを描くことで宗教改革に文字通りの「顔」を与え、今日までそのイメージを伝えているのは、クラーナハの功績の一つと言えるでしょう。

この章では、ルターの肖像画のほか、プロテスタント、カトリックを問わず彼が描いたキリスト教主題の絵画や肖像画を展示しています。

 


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「クラーナハの作品は、作品を見つめるものを誘惑します。クラーナハは500年後の私たちを、そして時空を超え、未来の人々をも魅了し続けていくでしょう」

国立西洋美術館館長、馬渕明子様は開会式でクラーナハの絵画の魅力について語りました。
時空を超えた、女性の美。それは、美しい姿の陰に鋭い剣を隠した女性というものの本質が、時代を経ても変わらないということなのかもしれませんね。

本展覧会は、ウィーン美術館をはじめ、世界10ヶ国以上から、油彩や版画など、クラーナハの重要作品約60点が一堂に会する貴重な機会となります。また他にも、クラーナハにインスピレーションを受けたパブロ・ピカソやマン・レイ、森村泰昌らの作品も会場に集います。
会期は、2016年10月15日(土)から2017年1月15日(日)まで。
是非この機会に、足を御運びください。

 

それでは、最後にクイズです。

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Q 裸、裸、裸・・・。これは一体なんでしょうか?答えは、会場にて!


展覧会の開催概要はこちら:

10/15~1/15 【国立西洋美術館】 『クラーナハ展―500年後の誘惑』


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