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【国立西洋美術館】 「シャセリオー展-19世紀フランス・ロマン主義の異才」内覧会レポート

2017年2月28日(火)から5月28日(日)まで、国立西洋美術館にて「シャセリオー展-19世紀フランス・ロマン主義の異才」が開催されます。2月27日に報道内覧会が開催されましたので、展示の様子をレポートいたします。

 

「見てみたまえ、この子はいずれ絵画のナポレオンになるだろう」
フランス新古典主義の巨匠、ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルは、絵画の授業の最中に、ある若き青年の前で足を止め、こう叫んだと伝えられています。

 

《自画像》 テオドール・シャセリオー 1835年 ルーヴル美術館所蔵 Photo©RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Jean-Gilles Berizzi / distributed by AMF

《自画像》 テオドール・シャセリオー 1835年 ルーヴル美術館所蔵
Photo©RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Jean-Gilles Berizzi / distributed by AMF

 

その「ナポレオン」の名はテオドール・シャセリオー。

新古典主義からロマン主義に傾倒し、ドラクロアとともにフランス・ロマン主義の代表的画家とみなされるシャセリオーは、その叙情性をたたえた画風、作品に甘く漂う「エキゾチスム」の香りで一世を風靡しました。この自画像は画家が16歳頃に描かれたもの。若くしてすでに完成された技量をもっていたことがうかがえます。

本展覧会は、19世紀フランス・ロマン主義の異才テオドール・シャセリオーの日本初の本格的な回顧展です。37年という短い生涯の中で、時代を駆け抜けるようにして輝いたシャセリオーの画業を、ルーブル美術館の所蔵品を核として約90点、彼から影響を受けたモローなどの象徴主義の画家を中心とする作品も合わせ、総数約110点を展示します。


それでは、展示風景をご紹介します。

 



1 アングルのアトリエからイタリア旅行まで0227-7290

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幼い頃から絵の才能を発揮していたシャセリオーは、わずか11歳で新古典主義の画家アングルの愛弟子の一人となり、16歳でサロン(官展)に初入選を果たします。
冒頭となる本章では、その後のイタリア滞在を転機にアングルの古典主義を脱却し、独自の道を歩むことになるシャセリオーの若き日の作品群が展示されています。
若くして才能を開花させたシャセリオー。その早熟さ、才能の煌めきに、ただ圧倒されます。

 

2 ロマン主義へー文学と演劇

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師アングルのもとを離れたシャセリオーはロマン主義に傾倒し、ジャンルの垣根を越えてさまざまな芸術家たちと交流しました。シャイクスピアを愛読し、パリの劇場に足を運んだ日々から、彼は文学に想を得た物語画や叙情性あふれる画風を生み出していったのです。
本章では、シャセリオーと文学・演劇の関連から作品を紹介しています。

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森の泉のかたわらで横たわる、精霊ニンフ。深い森の緑の中から、素晴らしいプロポーションの裸体が浮かび上がります。実は、ニンフは実在の女性がモデルになっています。
1849年頃から50年頃にかけて、シャセリオーは「パリで最も美しい体」を持つ女優アリス・オジーと関係を結びました。彼はニンフの図像という形式を借りて、彼女の美しい肢体を描き出したのです。

 

3 画家を取り巻く人々

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自分の容姿を好んでいなかったと伝えられるシャセリオーですが、実際はモテモテだったよう。その洗練された機知や優雅さで、周囲の人間には非常に魅力的な人物に映ったそうです。
本章では、シャセリオーが手がけた肖像画の数々から、そんな彼の交友関係の一端を垣間見せてくれます。

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本展覧会を象徴する作品の一つ、「カバリュス嬢の肖像」。当時「パリで最も美しい女性」の一人と称えられていた、マリー=テレーズ・カバリュスがモデルになっています。シャセリオーとは1840年代初めに知り合い、彼が死去するまで交流は続きました。

古代風のドレスと水仙の花飾りに彩られたマリーは手に薄紫色のパルマ・スミレの花を手にしており、まるで近づく春の気配に耳を澄ませているかのよう。ほのかに朱が差した頬と首元から、ひそかな官能性がただよっています。

 

4 東方の光

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舞台は東方の地へ。本章では、シャセリオー絵画のエキゾチスムという側面に焦点を当て、作品を展示しています。

19世紀フランスの多くの芸術家の着想の源泉となったオリエント(東アジア)地域の人々や風景に魅せられ、シャセリオーもまたアルジェリアの地へと旅立ちます。独特の民族衣装や華麗な装飾品、濡れたような女性の黒い瞳、逞しく艶やかな馬・・・彼は帰国後、東方世界を題材とする多くの絵画作品を生み出しました。

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ゆりかごで眠る赤ん坊と、それを見守る母親。母と子の親密な一体感が微笑ましい一枚です。母子像はシャセリオー絵画に繰り返し登場するモティーフですが、彼は異国においても変わらぬ母の愛、民族や国境を越えた愛情を描き出しました。

シャセリオーは他の画家たちに比べ、異国の地で暮らす人々に共感の気持ちを抱いていたと考えられています。それは彼が、カリブ海のイスパニョーラ島という、フランスから遠く離れた土地で生まれたことも関係しているのかもしれません。

 

5 建築装飾—寓意と宗教主題

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 最終章では、シャセリオーの壁画制作を紹介しています。壁画の図面とともに、実際に図面を描きこんで制作された模型なども展示されています。

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1844年から1848年にかけて取り組まれた、会計検査院の大壁画。シャセリオーの代表作の一つです。パリ・コミューンの騒乱で焼失の憂き目に遭いますが、断片が現在でもルーヴル美術館に保存されています。モローやピュヴィス・ド・シャヴァンヌら象徴主義の画家たちに多大な影響を与えた傑作を、ぜひ会場でご覧下さい。


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シャセリオーは、わずか37歳にしてこの世を去ります。

生い立ちから「異邦的」なものを心に抱え、独自の道を歩んだシャセリオー。彼はイタリア、アルジェリアなど、各地を旅する中で、その画風を確立させていきました。まさにそれは、彼自身の魂の故郷を探すような旅だったのでしょう。
だからこそ私たちは、彼の作品の中に漂うエキゾチスムの甘い香りに、心を惹きつけられるのかもしれません。

会期は2017年2月28日(火)から5月28日(日)まで。
19世紀フランス・ロマン主義に吹いた最後の風、テオドール・シャセリオーを日本で初めて本格的に紹介する大変貴重な機会です。
是非、足を運んでみてはいかがでしょうか。


開催概要はこちら:

https://home.ueno.kokosil.net/ja/archives/11950


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