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【国立西洋美術館】「北斎とジャポニスム」内覧会レポート

2017年10月21日(土)から2018年1月28日(日)まで、国立西洋美術館にて「北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃」が開催されています。10月20日に内覧会が開かれましたので、内容をレポートいたします。
 
19世紀後半、日本の美術が、西洋で新しい表現を求める芸術家たちを魅了し、「ジャポニスム」という現象が生まれました。なかでも最も注目されたのが、天才浮世絵師・葛飾北斎(1760-1849)。その影響はモネやドガら印象派の画家をはじめ、版画、彫刻、ポスター、工芸などあらゆる分野に及びました。
 
本展では、北斎という異文化との出会いによって生み出された、モネ、ドガ、セザンヌ、ゴーガンを含めた西洋の名作と北斎作品を比較しながら展示します。西洋美術の傑作を堪能しながら、北斎の新たな魅力も感じることができる展覧会となっています。


それでは、本展の展示風景と作品をご紹介いたします。

 
■北斎の浸透

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左から: ヨハン・フレデリク・ファン・オーフェルメール・フィッスヘル『日本の知識に対する寄与』1833年(アムステルダム) 1833年 国立西洋美術館 葛飾北斎『北斎漫画』三編 1815(文化12)年 浦上蒼穹堂

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ヨハン・フレデリク・ファン・オーフェルメール・フィッスヘル『日本の知識に対する寄与』1833年(アムステルダム) 1833年 国立西洋美術館
葛飾北斎『北斎漫画』三編 1815(文化12)年 浦上蒼穹堂


 
左から: ラザフォード・オールコック『日本の美術と美術産業』1878年(ロンドン) 1878年 横浜開港資料館 葛飾北斎『北斎漫画』十編 1819(文政2)年 浦上蒼穹堂

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ラザフォード・オールコック『日本の美術と美術産業』1878年(ロンドン) 1878年 横浜開港資料館
葛飾北斎『北斎漫画』十編 1819(文政2)年 浦上蒼穹堂



ずらりと並ぶ書物。19世紀に西洋で刊行された日本に関する紀行書の類が展示されています。こうした書物の挿絵として最も多く使われたのが、葛飾北斎の『北斎漫画』と『富嶽百景』でした。しかし、1850年代から1870年代までに出版されたものには、それが北斎の絵であることは記載されていません。誰の絵であるかにはほとんど関心がなく、日本の風俗や情景を表すのに、極めて都合のよい面白い絵として挿絵に使ったのでした。
 

左から: アダルベール・ド・ボーモン/ウジェーヌ・コリノ『日本の装飾、美術産業のための素描集』1883年(パリ、初版1861年) 1883年 国立西洋美術館 葛飾北斎『北斎漫画』六編 1817(文化14)年 浦上蒼穹堂

左から:
アダルベール・ド・ボーモン/ウジェーヌ・コリノ『日本の装飾、美術産業のための素描集』1883年(パリ、初版1861年) 1883年 国立西洋美術館
葛飾北斎『北斎漫画』六編 1817(文化14)年 浦上蒼穹堂


 
左から: フェリックス・レガメー《フェリックス・レガメー『おこま』》1883年(パリ) 1883年 個人蔵 葛飾北斎『富嶽百景』二編 1835(天保6)年 浦上蒼穹堂

左から:
フェリックス・レガメー《フェリックス・レガメー『おこま』》1883年(パリ) 1883年 個人蔵
葛飾北斎『富嶽百景』二編 1835(天保6)年 浦上蒼穹堂

 
いっぽう、フランスやイギリスの批評家やコレクターは、西洋美術にはなかった斬新な表現をする北斎についてさまざまな評論やコメントを残し、やがて「日本で最も偉大な画家」というレッテルを貼るまでになりました。こうして北斎の浮世絵や版本は収集の対象となり、多数のコレクションが形成されました。本展では、印象派の画家モネをはじめとする熱心なコレクターが集めた北斎作品も展示されています。

 
■北斎と人物

左から: エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》 1894年 吉野石膏株式会社(山形美術館寄託) エドガー・ドガ(鋳造者:エブラール)《背中に手をあて、右足を前に出して休息する着衣の踊り子》1896-1911年(鋳造1919-21年) ニイ・カールスベア・グリプトテク、コペンハーゲン

左から:
エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》 1894年 吉野石膏株式会社(山形美術館寄託)
エドガー・ドガ(鋳造者:エブラール)《背中に手をあて、右足を前に出して休息する着衣の踊り子》1896-1911年(鋳造1919-21年) ニイ・カールスベア・グリプトテク、コペンハーゲン

(左)葛飾北斎『北斎漫画』十一編(部分)刊年不詳 浦上蒼穹堂 (右)エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》1894年 パステル、紙(ボード裏打)66×47cm  吉野石膏株式会社(山形美術館寄託)

(左)葛飾北斎『北斎漫画』十一編(部分)刊年不詳 浦上蒼穹堂
(右)エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》1894年 パステル、紙(ボード裏打)66×47cm 吉野石膏株式会社(山形美術館寄託)

腰に手を当てる踊り子。生き生きとまるで眼前にいるかのようなリアリティを感じるこの作品には、北斎の影響をみることができます。

日本人は江戸時代、西洋から入ってきた版画などを見て、人物の立体的で写実的な表現に驚かされました。それと反対に、西洋において、北斎をはじめとする浮世絵や絵本の表現が、あまりに少ない筆で簡潔に、しかも表情や動作、体のつくりなどを表現していることに驚き、強い関心を抱いたのでした。

 
■北斎と風景

クロード・モネ《陽を浴びるポプラ並木》1891年 国立西洋美術館(松方コレクション)

クロード・モネ《陽を浴びるポプラ並木》1891年 国立西洋美術館(松方コレクション)

葛飾北斎《冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷》1830-33(天保元-4)年頃 横大判錦絵 25.7×37.8cm ミネアポリス美術館 Minneapolis Institute of Art, Bequest of Richard P. Gale 74.1.237 Photo: Minneapolis Institute of Art

葛飾北斎《冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷》1830-33(天保元-4)年頃 横大判錦絵 25.7×37.8cm ミネアポリス美術館
Minneapolis Institute of Art, Bequest of Richard P. Gale 74.1.237 Photo: Minneapolis Institute of Art

浮世絵、なかでも北斎の風景は、意表を突く構図や影のない鮮やかな色面による構成、同じモチーフを繰り返し連作で描くという発想をもち、それまでに西洋になかった表現として驚きをもって取り入れられました。
 

左から:
ヴァルター・クレム《橋》1909年以前 オーストリア応用美術館、ウィーン 葛飾北斎《冨嶽三十六景 深川万年橋下》1830-33(天保元-4)年頃 ミネアポリス美術館

左から:ヴァルター・クレム《橋》1909年以前 オーストリア応用美術館、ウィーン
葛飾北斎《冨嶽三十六景 深川万年橋下》1830-33(天保元-4)年頃 ミネアポリス美術館

ヴァルター・クレムの《橋》。伝統的な西洋の遠近法が緩やかに視線を誘導するのに対し、一瞬にして視線を引き付けるような構図を、北斎作品から学んでいます。こうした構図は、日常の何の変哲もない情景を描写する際に、大きな効果を発揮します。

 
■波と富士

左から:アンリ=ギュスターヴ・ジョソ「レスタンプ・オリジナル」第6巻より≪波≫1894年 石橋財団ブリヂストン美術館 
アルノシュト・ホフバウエル ポスター「マーネス美術協会第2回展」1898年 プラハ工芸博物館

左から:アンリ=ギュスターヴ・ジョソ「レスタンプ・オリジナル」第6巻より≪波≫1894年 石橋財団ブリヂストン美術館
アルノシュト・ホフバウエル ポスター「マーネス美術協会第2回展」1898年 プラハ工芸博物館

西洋の人々をもっとも魅了した北斎のモチーフの一つは波でした。自然主義の芸術家たちは波の様態をひたすら注視するような作品を描いており、ここに北斎作品が持つ豊かな波の表現との類縁性が見られます。

また、北斎のもっともよく知られた錦絵《神奈川沖浪裏》が与えた影響は、リトグラフやポスター、工芸品など幅広い分野の美術作品に及びました。
 

ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山》1886-87年 油彩、カンヴァス 59.7×72.4cm  フィリップス・コレクション、ワシントンD.C.The Phillips Collection, Washington, D. C.

ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山》1886-87年 油彩、カンヴァス 59.7×72.4cm 
フィリップス・コレクション、ワシントンD.C.The Phillips Collection, Washington, D. C.

葛飾北斎《冨嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二》1830-33(天保元-4)年頃 横大判錦絵 24×37.2cm オーストリア応用美術館、ウィーン MAK – Austrian Museum of Applied Arts / Contemporary Art, Vienna Photo: ©MAK / Georg Mayer

葛飾北斎《冨嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二》1830-33(天保元-4)年頃 横大判錦絵 24×37.2cm オーストリア応用美術館、ウィーン MAK – Austrian Museum of Applied Arts / Contemporary Art, Vienna Photo: ©MAK / Georg Mayer

波と並んで北斎の象徴とも言うべきモチーフが富士山です。北斎の『富嶽百景』や「冨嶽三十六景」は、画期的な表現によって西洋の伝統にはない新しいアイデアを示しました。

 

アンリ・リヴィエール『エッフェル塔三十六景』1888-1902年 国立西洋美術館

アンリ・リヴィエール『エッフェル塔三十六景』1888-1902年 国立西洋美術館

アンリ・リヴィエールは、リトグラフ集『エッフェル塔三十六景』を制作し、北斎にオマージュを捧げています。


西洋の人々を圧倒的に魅了した北斎の大胆さとユニークさ。そして、北斎を消化して自らのものにしてしまおうという西洋の芸術家たちの貪欲なエネルギー。本展では、それらの共演をご覧いただけます。

会期は、2017年10月21日(土)から2018年1月28日(日)まで。
異文化の出会いがもたらした至高の芸術を、是非お楽しみください。
 

【開催概要】

展覧会名 北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃
会 期 2017年10月21日(土)~ 2018年1月28日(日)
会 場 国立西洋美術館
公式サイト http://hokusai-japonisme.jp/
ツイッター公式アカウント @hoku_japonisme

 
報道発表会レポートはこちら
https://home.ueno.kokosil.net/ja/archives/13949


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