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【東京都美術館】「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」開催

ヤン・ブリューゲル2世《地上の楽園》1620-1625年頃 Private Collection

 
2018年1月23日(火)~4月1日(日)の期間、東京都美術館では「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」が開催されます。
 
16 世紀フランドルを代表する画家、ピーテル・ブリューゲル1 世。その画家としての才能は息子のピーテル・ブリューゲル2世、ヤン・ブリューゲル1 世、さらに孫、ひ孫の代まで受け継がれ、ブリューゲル一族はおよそ150年に渡り、優れた画家を輩出し続けました。
 
本展では、貴重なプライベート・コレクションを中心に選び抜かれたおよそ100点を通じて、類まれなる画家一族の画業を辿ります。

 
<展示構成>
第1章 宗教と道徳
第2章 自然へのまなざし
第3章 冬の風景と城砦
第4章 旅の風景と物語
第5章 寓話と神話
第6章 静物画の隆盛
第7章 農民たちの踊り


第1章 宗教と道徳

ブリューゲル一族の祖であるピーテル・ブリューゲル1世は、1559年頃から没する1569年の間に多くの作品を生み出しています。この時代は、カトリックとプロテスタントの宗教対立をはらんだ困難な時代でもありました。
 
ピーテル1世はヒエロニムス・ボスの様式を取り入れた絵画や版画で人気を博し、「第二のボス」と呼ばれました。しかし、ボス作品がキリスト教的な善悪の価値観を明確に示すのに対し、ピーテル1世はそういった善悪の判断から一歩引いて、より冷静で中庸な目で現実の人々を見つめています。
 
彼のその「観察眼」は2人の息子へ、そして子孫たちへと受け継がれ、150年に及ぶ類まれな芸術伝統を確立していくのです。

ピーテル・ブリューゲル1 世[下絵] ピーテル・ファン・デル・ヘイデン[彫版] 《最後の審判》  1558年 Private Collection

ピーテル・ブリューゲル1世(下絵) ピーテル・ファン・デル・ヘイデン(彫版)《最後の審判》1558年 Private Collection


 
ピーテル・ブリューゲル1世と工房 《キリストの復活》1563年頃 Private Collection, Belgium

ピーテル・ブリューゲル1世と工房 《キリストの復活》1563年頃 Private Collection, Belgium

 


第2章 自然へのまなざし

イタリアではルネサンスの巨匠たちが人体や人間の美徳を作品に表現しましたが、ネーデルラントでは宗教改革の影響も受け、徐々に自然の偉大さへと関心が移っていきました。
 
そして、16世紀のアントウェルペンでは風景画を専門とする画家たちが現れます。彼らは極度に高い視点から想像上の山々を描き、大自然の雄大さと恐ろしさ、それに対する人間の小ささや無力さを表しました。
 
イタリア旅行に出かけたピーテル1世が心を奪われたのも、人間中心のイタリア美術よりもアルプスの力強い山岳風景でした。
 
そうした関心は、とりわけ次男のヤン1世が受け継いで発展させ、彼とその子孫たちによって多くの傑作が生み出されていきます。



ヤン・ブリューゲル1世《水浴をする人たちのいる川の風景》1595-1600年頃 Private Collection, Switzerland

ヤン・ブリューゲル1世《水浴をする人たちのいる川の風景》1595-1600年頃 Private Collection, Switzerland


 
ヤン・ブリューゲル1世(?) ルカス・ファン・ファルケンボルフ《アーチ状の橋のある海沿いの町》1590-1595年頃 Private Collection, Belgium

ヤン・ブリューゲル1世(?) ルカス・ファン・ファルケンボルフ《アーチ状の橋のある海沿いの町》1590-1595年頃 Private Collection, Belgium

 


第3章 冬の風景と城砦

ピーテル2世は、弟のヤン1世と異なり、父の作品の忠実な模倣作(コピー)を制作し、父の様式を広く世に広めるのに貢献しました。実際、ピーテル1世の名声は、ある面において、息子たちの模倣作(コピー)によるところが大きいことも事実です。
 
この時代に成功を収めた冬の風景画というジャンルを世に広めたのもピーテル2世でした。そこでは、雪に覆われた木々や家々の屋根といった情景や、憂鬱な空気感、ゆったりした人物の動きなどが、冷たい色合いと柔らかな光によって生き生きと表されています。

ピーテル・ブリューゲル2世《鳥罠》1601年 Private Collection, Luxembourg

ピーテル・ブリューゲル2世《鳥罠》1601年 Private Collection, Luxembourg


 
ヤン・ブリューゲル2世《冬の市場への道》1625年頃 Private Collection

ヤン・ブリューゲル2世《冬の市場への道》1625年頃 Private Collection

 


第4章 旅の風景と物語

16世紀前半までにヨーロッパ経済の新たな中心地となり、貿易や旅行の要衝となったアントウェルペンには、芸術家を含め多くの人々が流入してきました。
 
一方、文化の中心地イタリアは依然として重要な土地でした。ヤン2世は祖父ピーテル1 世や父ヤン1世と同じくイタリアへ赴きますが、父の死によって帰国を余儀なくされます。
 
帰国後、父の遺した工房と未完成作品を引き継いだヤン2世は、父の友人である画家たちにも助けられ、画家としての第一歩を踏み出すことになります。

ピーテル・ブリューゲル1世[下絵] フランス・ハイス[彫版]《イカロスの墜落の状景を伴う3本マストの武装帆船》1561-1562年頃 Private Collection

ピーテル・ブリューゲル1世[下絵] フランス・ハイス[彫版]《イカロスの墜落の状景を伴う3本マストの武装帆船》1561-1562年頃 Private Collection


 
ヤン・ブリューゲル1世《山沿いの海岸線をいく船団》1590-1595年頃 Private Collection

ヤン・ブリューゲル1世《山沿いの海岸線をいく船団》1590-1595年頃 Private Collection

 


第5章 寓話と神話

ヤン・ブリューゲル2世は寓意画や神話画を得意とする画家でした。寓意画は抽象的な概念を視覚的に理解するための効果的な方法とみなされ、愛や平和、豊穣といった概念の擬人像が描かれます。
 
また、非日常性や異国性を付与するために、オウムやトラ、ライオンといった当時ほとんど目にする機会のなかった動物を描き加えることもありました。
 
こうした作品には古代ギリシア哲学や、それに影響を受けたイタリア・ルネサンスの思想が反映されています。しかし、ヤン2世をはじめとしたブリューゲル一族による作品では、イタリア的な思想以上に、注意深い自然観察と、精緻な細部描写というネーデルラント地方の伝統を見てとることが出来ます。

ヤン・ブリューゲル1世《ノアの箱舟への乗船》1615年頃 Anhaltische Gemäldegalerie Dessau

ヤン・ブリューゲル1世《ノアの箱舟への乗船》1615年頃 Anhaltische Gemäldegalerie Dessau


 
ヤン・ブリューゲル2世《嗅覚の寓意》1645-1650年頃 Private Collection

ヤン・ブリューゲル2世《嗅覚の寓意》1645-1650年頃 Private Collection


 
ヤン・ブリューゲル2世《聴覚の寓意》1645-1650年頃 Private Collection

ヤン・ブリューゲル2世《聴覚の寓意》1645-1650年頃 Private Collection

 


第6章 静物画の隆盛

寓意画と同様に、静物画もヴァニタス(虚栄)という概念を表しており、どんな美しさもいずれ朽ち果ててしまうという道徳的なメッセージとして受け取られました。
 
17世紀中頃のオランダにおける花の静物画の流行は、異国からもたらされた新種への関心や、史上最初の経済バブルとも言われるチューリップ投機に支えられていました。また、カトリック教会による対抗宗教改革運動にとっても花の絵は重要な役割を果たしています。
 
一方、フランドルの静物画は、貴族のコレクションと結びついて発展していきました。「自然物」、「人工物」、「異国の品」というコレクターによる収集品の区分に対応した、希少さ、貴重さ、異国性が画家にとっても重要なモチーフとなりました。

アブラハム・ブリューゲル《果物の静物がある風景》1670年 Private Collection

アブラハム・ブリューゲル《果物の静物がある風景》1670年 Private Collection


 
ヤン・ファン・ケッセル1世《蝶、カブトムシ、コウモリの習作》1659年 Private Collection, USA

ヤン・ファン・ケッセル1世《蝶、カブトムシ、コウモリの習作》1659年 Private Collection, USA

 


第7章 農民たちの踊り

ブリューゲル一族の画家たちは、農村の日常風景をしばしば描いています。そこには日々の労働によって腰の曲がった農夫や、物乞い、酔っ払いなどが描かれ、彼らの日常の姿を垣間見せています。
 
しかし、そうした日常を描いた作品だけでなく、祭りや婚礼の祝宴など、非日常的な場面で喜びを爆発させる農民たちの姿もまた、一族の主題となりました。
 
ピーテル2世は、父と同様に、ときに農村へ出向いて、彼らの身振りや態度などをつぶさに観察しました。婚礼やダンスにおける農民たちの習慣や態度は、人間の本質を表すものとして、そのメタファー(比喩)となっているのです。

ピーテル・ブリューゲル1世[下絵] ピーテル・ファン・デル・ヘイデン[彫版]《春》1570年 Private Collection

ピーテル・ブリューゲル1世[下絵] ピーテル・ファン・デル・ヘイデン[彫版]《春》1570年 Private Collection


 
ピーテル・ブリューゲル2世《野外での婚礼の踊り》1610年頃 Private Collection

ピーテル・ブリューゲル2世《野外での婚礼の踊り》1610年頃 Private Collection

 


多様な主題を扱い、様々な芸術的視点と様式をもつブリューゲル一族。本展は、そんなブリューゲル一族と16、17世紀フランドルにおけるブリューゲル様式の全体像に迫ります。
 
皆さまも、ぜひ足を運んで、150年に渡り受け継がれてきた画家一族の魂に触れてみてはいかがでしょうか。

 
報道発表会レポートはこちら:
https://home.ueno.kokosil.net/ja/archives/19568
 

開催概要

展覧会名 ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜
Brueghel: 150 Years of an Artistic Dynasty
会期 2018年1月23日(火)~4月1日(日)
開室時間 9:30‐17:30
金曜日は20:00まで
(入室は閉室の30分前まで)
休室日 月曜日、2月13日(火)
※ただし2月12日(月)は開室
会場 東京都美術館
公式サイト http://www.ntv.co.jp/brueghel/

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