2018年4月14日(土)から2018年7月8日(日)の期間、『プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画』が東京都美術館にて開催されます。開幕に先立ち、4月13日にプレス内覧会がおこなわれましたので、その模様をお伝えいたします。
文豪アレクサンドル・プーシキンの名を冠する国立美術館、プーシキン美術館。1912年に開館したモスクワ中心部の国立美術館で、古代エジプトから近代までの映画、版画、彫刻などを収蔵しており、特に印象派を中心とするフランス近代絵画コレクションは世界屈指と言われています。
『プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画』では、その珠玉のクレクションから17世紀〜20世紀の風景画65点が来日。神話の物語や身近な自然、パリの喧騒、果ては想像の世界まで、さまざまな情景を舞台にフランス近代風景画の流れをたどります。
報道内覧会では、本展のスペシャル・サポーター、および音声ガイドのナビゲーターを務める俳優・水谷豊さんが登場!本展の「旅の案内人」として、見どころを語っていただきました。
-ひと足先に本展をご覧になられたそうですが、ご感想をお願いいたします。
プーシキン美術館展のテーマは「旅する風景画」ということですが、見終わった後に素晴らしい旅をした気持ちになりました。モネの『草上の昼食』から『白い睡蓮』への流れが素晴らしいですね。すっと絵の中に引き込まれていくような感動もありましたし、まさにそこに自分がいるような気持ちを味わわせていただきました。
-今回初来日となる、水谷さんの後ろにありますクロード・モネの『草上の昼食』ですが、実際にご覧になって、やはり感じるものは違いますか?
そうですね。色々と想像していたのですが、写真で見るよりはるかに感動があります。これがモネの青春時代の作品だということを聞きますと、若い時から才能が花開いていたことが実物を見るとよくわかりますね。
-他に印象に残った絵はありましたか?
面白かったのはアンリ・ルソーの『馬を襲うジャガー』という作品です。私が聞いたところでは、ルソーはパリの植物園に通い、そこで熱帯植物を観察しながら思いをはせて描いたということで、つまり想像の作品なんですね。われわれもどちらかといえば「妄想」が仕事ですが(笑)、イマジネーションでここまで描けるのはすごい。不思議なオーラがある作品だと思います。
「ぜひたくさんの方にこの旅の感動を味わっていただきたい」と聴衆に語りかける水谷さん。ぜひ、音声ガイドで水谷さんの「推理」の世界・・・ではなく、叙情あふれる「旅の風景画」の世界に足を踏み入れてみてください!
それでは、会場風景と展示作品の中から一部をご紹介いたします。
第1章 近代風景画の源流
第2章 自然への賛美
第3章 大都市パリの風景画
第4章 パリ近郊-身近な自然へのまなざし
第5章 南へ-新たな光と風景
第6章 海を渡って/想像の世界
『プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画』は全6章構成となっています。神話の世界から都市、郊外、そして想像の世界へと。ロラン、コロー、ルノワール、セザンヌら巨匠たちの珠玉の絵画65点を、「旅」というキーワードを軸に紹介します。
また、風景画が絵画ジャンルとして自立していく過程を振り返る第1部(第1章・第2章)、大都市パリを起点に風景画の広がりを展観する第2部(第3章以降)とに大きくセクションが分けられています。
|会場風景
17世紀に始まる風景画の黎明期では、聖書や神話にその主題が求められ、その背景に広がる自然は理想化して描かれていました。しかし、19世紀になる頃、絵画の受容者が王侯貴族から新興市民階級へと移ることで、その風潮に変化が生じます。身近に広がる自然を描くバルビゾン派の出現により風景画は現実的な表現へと歩みを進め、19世紀半ばの「パリ大改造」以降、印象派の画家たちは近代都市の情景を数多く描いていきました。
さらに、メディアの発達によりもたらされる世界各地の情報は、画家たちをさらに遠い、想像の世界へと導いていきます。
本展で体験できるのは、そうした風景画の創造と発展の物語。
まるで世界各地を旅するように、楽しみながら風景画の歴史をたどることができます。
|展示作品
フェリックス・フランソワ・ジョルジュ・フィリベール・ジエム《ボスポラス海峡》 19世紀前半
まさに本展のテーマである「旅」を象徴するような絵画。描かれているのはヨーロッパとアジアの境界線、トルコのボスポラス海峡です。対岸に霞むイスタンブルの街並み、そして岸辺に佇むターバン姿の男たちが異国情緒をかきたてます。
もともと建築家を志していた画家ジエムは18歳で画家に転向。その後、パリに居を構えながらも積極的にヨーロッパ各地を旅してまわり、数多くのエキゾチックな風景画、とりわけ海景を描いた作品を残しました。
ギュスターヴ・クールベ《水車小屋》 1864年頃
フランス近代絵画を代表する画家のひとりであるギュスターブ・クールベは、農民や労働者の日常を題材とした絵画を数多く描き、物語画偏重であった当時のアカデミスムに対して「写実主義(レアリスム)」の枠組みを打ち立てました。
本作で描かれているとされるのは、クールベの生まれ故郷であるフランス東部の村オルナン。水車小屋の周りに茂る木々と、勢いよく流れる川の流れを躍動感あふれるタッチで描き、自然の生命力を感じさせます。
アンリ・ルソー《馬を襲うジャガー》 1910年
画家として専門の教育を受けなかった異色の画家、アンリ・ルソー。本作ではジャングルを舞台に、獰猛なジャガーに襲われる馬の姿を描いています。凄惨な場面のはずなのに、どこか非現実的で奇妙な静寂を感じさせます。こちらを向いた馬の表情からは一切の感情が読み取れず、どこか居心地の悪さを感じてしまうのは自分だけでしょうか?
本作の制作にあたってルソーは「植物園の温室より遠くへ旅行したことはない」と述べています。つまり、動物園や植物園、そして入手できる資料を頼りにこの作品を生み出したということですね。20世紀のおけるメディアの発達、博物館や資料の拡充は、こうした芸術家たちの想像力を下支えし、さらなる遠い世界へと導いていきました。
クロード・モネ《草上の昼食》 1866年
本展覧会で初来日となる作品。印象派の誕生前夜、26歳となる若きモネの魅力があふれる絵画です。
本作ではパリから訪れた若者がピクニックを楽しむ様子が描かれており、最先端のファッションに身を包んだ若者たちと郊外のみずみずしい自然が見事に調和しています。光の反射と木漏れ日のつくりだす効果が清新な色彩と筆触で描かれており、まさにレアリスムと印象主義のあわい境界に立つ当時のモネの表現をよく伝えています。
舞台となったシャイイ=アン=ビエールはパリの南東60キロメートルほどにあるフォンテーヌブローの森にありますが、交通網の発達により、若者たちや芸術家がこぞって訪れる場所となっていました。本作は、もともと王侯貴族の狩場であったフォンテーヌブローの森の、この時代ならではの様子を伝えてくれます。
東大教授・三浦篤氏は《草上の昼食》を「印象派の出発点であり、歴史的にも、またモネの個人史においても転換点となる重要な作品」と評し、「初期のモネが試行錯誤するなかでこうした充実した作品を描いていたということを、多くの方々に知っていただきたい」と語りました。
《草上の昼食》は他にもモデルとなった男女、木の幹に刻まれたシンボルなど、さまざまな謎と驚きに満ちています。
滅多に館外に貸出されることがないという《草上の昼食》。この貴重な機会に、ぜひご鑑賞ください!
|開催概要
・「プーシキン美術館展――旅するフランス風景画」
会期 | 2018年4月14日(土)~7月8日(日) |
会場 | 東京都美術館 企画展示室 |
開室時間 | 9:30~17:30(金曜日は 20:00 まで) ※入室は閉室の 30 分前まで |
休室日 | 月曜日(ただし 4 月 30 日は開室) |
問合せ | ○公式サイト http://pushkin2018.jp ○ハローダイヤル |
観覧料 | 一般 1,600 円(1,400 円)、 ※その他各種割引適応あり |
報道発表会レポートはこちら:
https://home.ueno.kokosil.net/ja/archives/20813