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【国立西洋美術館】「ルーベンス展-バロックの誕生」、見どころをご紹介

《パエトンの墜落》ペーテル・パウル・ルーベンス 1604/05年 油彩/カンヴァス
ワシントン、ナショナル・ギャラリー Courtesy National Gallery of Art, Washington

 
国立西洋美術館では、2018年10月16日(火)~2019年1月20日(日)の期間、「ルーベンス展-バロックの誕生」が開催されます。本展の展示構成と見どころをご紹介いたします。
 
「ルーベンス展-バロックの誕生」内覧会レポートはこちら
 

ルーベンスについて

 
ペーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)の名前は、日本ではアニメ「フランダースの犬」によって知られています。主人公のネロ少年が一目見たいと望み続け、最終回にはその前で愛犬パトラッシュとともにこと切れる、聖母大聖堂の祭壇画の作者です。
 
ルーベンスは、バロックと呼ばれる壮麗華美な美術様式が栄えた17世紀ヨーロッパを代表する画家であり、後に「王の画家にして画家の王」と呼ばれたほどの存在でした。彼はバロック美術の中心地だったイタリアで学び、さらにイタリアの若い画家たちに影響を与えました。
 
本展はルーベンスとイタリアとの双方向の影響関係に焦点を当てます。ルーベンスの作品を、古代彫刻や彼に先行する16世紀のイタリアの芸術作品、さらに同時代以降のイタリア・バロックの芸術家たちの作品とともに展示します。

 

展示構成

 

  • 1章 ルーベンスによる古代美術とイタリア美術の学習
  • 2章 英雄としての聖人たち:宗教画とバロック
  • 3章 肖像画
  • 4章 ルーベンスの筆さばき:速筆が画面にもたらす活力
  • 5章 ヘラクレスと男性ヌード
  • 6章 ヴィーナスと女性ヌード
  • 7章 神話の叙述

 

・1章 ルーベンスによる古代美術とイタリア美術の学習

 
古代彫刻や 16世紀の作品のルーベンスによる模写、そして、先行する時代の作品を研究した成果を如実に示すルーベンスの作品を展示します。

《セネカの死》

《セネカの死》ペーテル・パウル・ルーベンス 1615 / 16年 油彩/カンヴァス マドリード、プラド美術館 ©Madrid, Museo Nacional del Prado

古代ローマの哲学者セネカは謀反の濡れ衣を着せられ、皇帝に自殺を命じられた。彼は血管を切る方法を選び、湯を張ったたらいに足を入れて血の巡りをよくし、死期を早めた。

セネカはルーベンスも属したアントウェルペンの知的サークルにおいて、模範とされる哲学者であった。その姿勢は有名な古代彫刻をほぼそのまま引用したものだが、頭部は当時セネカ像と考えられていた別の古代彫刻にもとづいている。ルーベンス自身が描いたのは頭部のみで、その他の部分は工房による。



 
《アグリッピナとゲルマニクス》

《アグリッピナとゲルマニクス》ペーテル・パウル・ルーベンス 1614年頃 油彩/板 ワシントン、ナショナル・ギャラリー Courtesy National Gallery of Art, Washington

ゲルマニクスは古代ローマの皇族であり、かつ有能な軍人だった。その妻アグリッピナも古代ローマの皇族であり、彼らの孫がネロ帝である。

ふたりをプロフィールで描くこの絵は古代のカメオの形式にもとづいており、ルーベンスの古代美術への憧憬を物語っている。ただし肌や髪には生気が溢れており、古代彫刻を生き返らせたかのようである。

 

・2章 英雄としての聖人たち:宗教画とバロック

 
この章では宗教主題を特集します。ルーベンスは宗教画に快楽的かつ古典的な性格を与えました。ルーベンスの作品を、彼が参考にした作品や彼が影響を与えたイタリアの作品とともに展示します。

《キリスト哀悼》

《キリスト哀悼》ペーテル・パウル・ルーベンス 1603年 油彩/カンヴァス ローマ、ボルゲーゼ美術館

十字架から降ろしたキリストを埋葬する前、その遺体のまわりに聖母らが集まり、悲しむ場面である。ルーベンスがイタリアに着いて間もないころの作とされる(異論もある)。

石棺のうえにキリストが載せられているのは、埋葬をほのめかすと同時に、ミサの際に祭壇で聖別されたパンとぶどう酒が、キリストの肉と血に変化することを象徴している。古代石棺に描かれる図像には、ストア派哲学のキリスト教的な解釈との関係が指摘されている。

 

・3章 肖像画

 
家族や親しい人々を描いたものから公的な肖像画まで、様々な性格の肖像画を展示します。ルーベンスの肖像画表現の幅広さを感じ取ることができるはずです。

《眠る二人の子供》

《眠る二人の子供》ペーテル・パウル・ルーベンス 1612-13年頃 油彩/板 東京、国立西洋美術館

ふたりの子供は早世した兄フィリプスの子供たちと考えられている。ルーベンスは兄ときわめて仲が良く、ローマでは同居していた時期もあった。兄亡きあとは甥と姪の後見人となっている。

この絵でも幼いふたりに対する愛情が感じ取れるだろう。もっとも、この絵は大きな作品を制作する際の見本とするために描かれたものであり、同じ頭部が天使や幼児イエスとして登場する作品がある。

 
《クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像》

《クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像》ペーテル・パウル・ルーベンス 1615-16年 油彩/板で裏打ちしたカンヴァス ウィーン、リヒテンシュタイン侯爵家コレクション ©LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna

ルーベンスの最初の妻イサベラ・ブラントとの間に生まれた長女クララ・セレーナの肖像画である。このとき5歳くらいだった彼女が見せる天真爛漫な笑顔は、父との親密さを物語る。

実際彼女はとても近くにいるように見え、見る人との物理的・心理的な距離感がこの絵の魅力となっている。ルーベンスが自分の楽しみとしてこの絵を描いたことは、未完成のように見える仕上げからも見て取ることができよう。

 

・4章 ルーベンスの筆さばき:速筆が画面にもたらす活力

 
この章は「絵筆の熱狂」という言葉に沿って展開します。この言葉はルーベンスの伝記作者たちによって記されたもので、彼の作品がかもしだす生き生きとして濃密な動きをうまく表現しています。

《パエトンの墜落》

《パエトンの墜落》ペーテル・パウル・ルーベンス 1604/05年 油彩/カンヴァス ワシントン、ナショナル・ギャラリー Courtesy National Gallery of Art, Washington

ルネサンスとバロックの時代に好まれた主題である。太陽神アポロの息子パエトンは渋る父に頼み込み、太陽の馬車を駆らせてもらう。しかしパエトンは馬車の御し方を知らなったから、馬たちは軌道を外れて暴走し、地上は燃え立ちはじめる。大地の神の嘆願を聞いたユピテルは雷をパエトンに投げつけ、その結果馬車は壊され、パエトンは墜落死した。

本作は雷が放たれたその瞬間を描く。画面に見られる多くの描き直しによって、ルーベンスは熟慮を重ね構図を練ったことが分かる。

 

・5章 ヘラクレスと男性ヌード

 
この章は男性ヌードに焦点を当てます。ルーベンスは《ファルネーゼ家のヘラクレス》などの古代彫刻に理想の男性像を見出しました。ルーベンス以降のイタリアの画家たちによる男性ヌードも数多く展示します。

 

・6章 ヴィーナスと女性ヌード

 
女性ヌードを特集します。ここでは女性ヌードを題材とする全身像の古代彫刻を、ルーベンスやイタリアの画家たちの絵画作品と同じ空間に展示します。

《ヴィーナス、マルスとキューピッド》

《ヴィーナス、マルスとキューピッド》ペーテル・パウル・ルーベンス 1635年頃 油彩/カンヴァス ロンドン、ダリッジ絵画館 By Permission of the Trustees of Dulwich Picture Gallery.

ヴィーナスは愛と美、豊穣の神、マルスは戦の神であった。キューピッドは彼らの子供であり、やはり愛の神である。ヴィーナスの美と愛によってマルスの武装が解除されるという図像は、ルネサンス以来しばしば描かれた。

ここでもマルスは盾を置き、彼の後ろのキューピッドが鎧の留め具を外している。マルスはヴィーナスのもとにいて平和が保たれているから、彼女は安心してもうひとりのキューピッドに授乳している。

 

・7章 神話の叙述

 
ルーベンスの描いたその他の神話主題を、古代彫刻とともに展示します。これらの作品は、彼が古代彫刻の表現のみならず、古代文学にも精通していたことを物語っており、彼の造形が知性に根差したものであることを伝えてくれます。

《エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち》

《エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち》ペーテル・パウル・ルーベンス 1615-16年 油彩/カンヴァス ファドゥーツ/ウィーン、リヒテンシュタイン侯爵家コレクション ©LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna

ミネルウァを犯そうとして失敗したウルカヌスの精液が地面にこぼれ、大地が身籠ってエリクトニオスが生まれた。ミネルウァはこの子を籠に入れ、絶対に開けてはならぬと言ってアッティカ王の三人の娘に託したが、姉妹のひとりアグラウオスは籠を開けてしまう。

籠の中にいたエリクトニオスには、足の代わりにヘビの尾が生えていた。画面左の彫像は獣的な性欲を、右端の彫刻は大地の女神を表し、話の発端を象徴している。三人の姉妹は古代彫刻に血を通わせたかのようである。

 
《マルスとレア・シルウィア》

《マルスとレア・シルウィア》ペーテル・パウル・ルーベンス 1616-17 年 油彩/カンヴァス ウィーン、リヒテンシュタイン侯爵家コレクション ©LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna

王女レア・シルウィアは叔父によって父と兄弟が殺害されたのち、子孫が生まれないよう巫女にされた。しかしマルス神によって懐妊させられ、双子を出産する。双子はテヴェレ川に流されたが、雌オオカミとキツツキによって育てられた。彼らはやがて拾われてロムルスとレムスと名付けられ、長じてローマの伝説上の建国者となる。

通常は泉のほとりでレア・シルウィアが眠っている間にマルスが見初めるのだが、ここでは神殿が舞台となっている。雲に乗ってきたマルスが降り立ち、キューピッドがふたりを結びつけている。

 

開催概要

 

展覧会名 ルーベンス展-バロックの誕生

会期 2018年10月16日(火)〜2019年1月20日(日)

会場 国立西洋美術館
東京都台東区上野公園7-7

開館時間 9時30分〜17時30分
(金曜、土曜は20時まで。ただし11/17は17時30分まで)
※入館は閉館の30分前まで

休館日 月曜日(ただし12/24、1/14は開館)、
12/28〜1/1、1/15

観覧料 一般 1,600円(1,400円)、大学生 1,200円(1,000円)、高校生 800円(600円)
※()内は前売・団体料金
※中学生以下無料

問合せ 03-5777-8600(ハローダイヤル)

URL http://www.tbs.co.jp/rubens2018/


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