歌川国芳 《宮本武蔵の鯨退治》 大判錦絵三枚続 弘化4年(1847)頃 個人蔵
東京都美術館は、2019年2月9日(土)~4月7日(日)の期間、「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」を開催することを発表しました。
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展覧会主旨
美術史家・辻惟雄氏(1932〜)が、今から半世紀近く前の1970年に著した『奇想の系譜』。本書は、当時まだ30代後半の新進気鋭の学者であった辻氏が、江戸時代における突出した個性を発揮した画家の系譜をたどったもので、刊行以来、古美術研究の世界のみならず、現代美術作家たちにも多大な影響を与えてきました。
そこに紹介されたのは、それまでまとまって書籍や展覧会で紹介されたことがない、因襲の殻を打ち破り意表を突く、自由で斬新な発想で、非日常的な世界に誘われる絵画の数々でした。それから半世紀近くたった現在では、かつては江戸時代絵画史の傍流とされてきた画家たちが、その現代に通じる革新性によって熱狂的ともいえる人気を集めています。
本展では『奇想の系譜』で取り上げられた6名の画家、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳の他に白隠慧鶴、鈴木其一を加えました。白隠の禅画は、若冲、蕭白、芦雪など、18世紀の京都画壇の画家たちの個性的な表現が生まれるための起爆剤となった可能性が近年指摘されています。2016年秋に初の本格的な展覧会が開催された琳派の画家・其一の、師である酒井抱一の画風を忠実に受け継ぎながら、きわめて冷徹で理知的に構成する様式は、まさにこの系譜に含めるにふさわしいと考えました。
本展では8名それぞれの画家の作品を厳選し、近年の「若冲ブーム」、「江戸絵画ブーム」、ひいては「日本美術ブーム」の実相をご存じの方にも、またこの展覧会ではじめて魅力的な作品に出会うことになる観客にも、満足していただける内容を目指しました。現代の私たちの目を通して、新たな「奇想の系譜」を発信することで、豊かな想像力、奇想天外な発想に満ちた江戸絵画の新たな魅力を紹介します。
本展のみどころ
1. 江戸時代の奇想画家8名の代表作が勢揃い!
岩佐又兵衛、狩野山雪、白隠慧鶴、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、鈴木其一、歌川国芳。自由で斬新な個性を発揮した画家の系譜をたどります。
2. 新発見、初公開の作品に注目
若冲や芦雪をはじめ、新発見や初公開の作品が多数出品されます。
3. 海外からの出品も多数、そして初の里帰り作品も
著名なプライス・コレクションから若冲、芦雪の優品が出品されます。
作家と出品作品(予定)
※会期中に展示替えを行います。
岩佐 又兵衛(いわさ またべえ)天正6年(1578年)- 慶安3年(1650年)
江戸初期の絵師。摂津国伊丹(現・兵庫県伊丹市)に戦国武将・荒木村重の子として生まれ、荒木一族の滅亡後、母方姓「岩佐」を名乗る。40歳頃から20余年を福井で過ごし、晩年は江戸に移り住んだ。大和絵と漢画双方の高度な技術を完璧に修得し、どの流派にも属さない個性的な感覚に長け、後の絵師に大きな影響を与えた。
狩野 山雪(かのう さんせつ)天正18年(1590年)- 慶安4年(1651年)
江戸初期の狩野派の絵師。九州肥前国に生まれ、京狩野の狩野山楽に16歳の頃弟子入り、その後婿養子となる。妙心寺や清水寺など京都の大寺院に多くの作画を遺した。伝統的な画題を独自の視点で再解釈し、垂直や水平、二等辺三角形を強調した理知的な幾何学構図で知られる。日本で最初の画家伝『本朝画史』の草稿を手がけた。
白隠 慧鶴(はくいん えかく)貞享2年(1685年)- 明和5年(1768年)
江戸臨済宗中興の祖と呼ばれる江戸中期の禅僧。駿州 原宿(現・沼津市)に生まれ、15歳で出家。「不立文字 (言葉に頼るな)」とされる禅宗において、白隠はおびただしい数の禅画や墨跡を遺している。職業画家ではない、仏の教えを伝える手段として描かれた一見ユーモラスで 軽妙、かつ大胆な書画は、蕭白、芦雪、若冲など 18世紀京都画壇・奇想の画家たちの起爆剤となった。
伊藤 若冲(いとう じゃくちゅう)正徳6年(1716年)- 寛政12年(1800年)
江戸中期に京都で活躍した絵師。青物問屋の長男として生まれ、40歳で家督を弟に譲り画業に専念。写実と幻想を巧みに融合させた、濃密な色彩の精緻な花鳥画から、墨の濃淡を自在にあやつる、確かな画力を駆使した水墨画まで、個性的で多彩な作品を数多く遺している。また、「筋目描き」や「桝目描き」など、革新的な技法にも積極的に取り組んだ。
曽我 蕭白(そが しょうはく)享保15年(1730年)- 安永10年(1781年)
江戸中期の絵師。京都の商家に生まれ、伊勢や播磨を放浪後、40歳を過ぎて京都に定住した。18世紀京都画壇の鬼才たちのなかでも、最も激烈な表現を指向。漢画を学び中国の仙人や聖人といった伝統的な故事を多く描いたが、その表現は独創的で狂気に満ち、時に見る者の神経を逆なでし、混沌の渦へと落とし入れる。
長沢 芦雪(ながさわ ろせつ)宝暦4年(1754年)- 寛政 11年(1799年)
江戸中期の絵師。京都・篠山の下級武士の子として生まれ、円山応挙に師事。応挙が創った写生画法を忠実にたどる弟子がそのほとんどを占めるなかで、大胆な構図と才気あふれる奔放な筆法で、独自の画境を切り開いた。
鈴木 其一(すずき きいつ)寛政8年(1796年)- 安政5年(1858年)
江戸後期の絵師。江戸中橋の紺屋の息子に生まれ、江戸琳派の祖である酒井抱一に師事。抱一の画風を受け継ぎながらも、現代に通じるデザイン性あふれる色彩感覚と大胆な画面構成で、近年特に注目を集めている。宗達、光琳、抱一と継承されてきた琳派の造形を、近代につなぐ重要な役割を果たした。
歌川 国芳 (うたがわ くによし)寛政9年(1798年)- 文久元年(1861年)
江戸末期の浮世絵師。役者絵の国貞、風景画の広重と並び、武者絵の国芳として知られる。戯画、美人画、洋風風景画にも発想の豊かな近代感覚を取り込む一方、役者絵や風刺画など、幕府の取り締まりをかいくぐり、機知に富んだ作品で庶民の支持を得た。
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