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【東京国立博物館】特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」内覧会レポート

重要文化財 如意輪観音菩薩坐像(六観音菩薩像のうち) 肥後定慶作 鎌倉時代・貞応3年(1224) 大報恩寺蔵

 

2018年10月2日(火)から12月9日(日)まで、東京国立博物館では、特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」が開催されています。10月1日に内覧会が開かれましたので、その様子をお伝えいたします。

 

鎌倉時代、1220年に義空(ぎくう)上人によって発願された真言宗智山派の古刹、大報恩寺。近くに京都を南北に縦断する千本通りがあることから「千本釈迦堂」の名で親しまれ、釈迦信仰の中心地として、貴族から庶民まで幅広い信仰を集めてきました。
応仁の乱をはじめとする幾多の戦火を免れたその本堂は国宝に指定されており、また、「おかめ」発祥の地として、縁結び、夫婦円満などの福徳があることでも知られています。

 

その本尊は、快慶の一番弟子である行快が制作した釈迦如来坐像。そして、その釈迦如来坐像に侍り立つのは、快慶最晩年の作である十大弟子立像です。
本展覧会では、これら大報恩寺に伝わる「慶派」の名品の数々がそろい踏み。運慶同世代の快慶、そして運慶次世代の名匠による鎌倉彫刻の豪華共演が実現します!

 

展示風景

本展の開催場所は東京国立博物館 平成館 特別第3・4室。同館の第1・2室では特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」(10/2〜12/9)が開催されており、ふたつの展覧会が同時に、隣接しておこなわれているということになります。現代的なアート作品が並ぶデュシャンの展示会場と異なり、こちらの会場は仏像が放つ静謐な雰囲気で満ちており、そのコントラストも興味深く思えます。

 



重要文化財 傅大士坐像および二童士立像 院隆作 室町時代・応永25年(1418) 大報恩寺蔵

 

北野経王堂図扇面 室町時代・16世紀

特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」は三部構成となっており、冒頭の「大報恩寺の歴史と寺宝-大報恩寺と北野経王堂」では大報恩寺に伝わる北野経王堂ゆかりの文化財、そして洛中(京都市内)最古の木造建築物として国宝に指定された本堂とその歴史が紹介されています。

北野経王堂とは、大報恩寺のほど近くに足利義満によって建てられた仏堂で、当時は洛中・洛外を含む京都市中最大の巨大建造物でした。経王堂では歴代の室町将軍が主導する「北野万部経会」がおこなわれるなど大変賑わいましたが、神仏分離の影響で解体され、収蔵されていた文化財や経などはあらためて大報恩寺へと移されました。

第一章では、平安時代の仏像を含む北野経王堂ゆかりの品々が展示され、在りし日の姿を今にそのまま伝えています。

 

(中央)重要文化財 舎利弗立像(十大弟子立像のうち) 快慶作 鎌倉時代・13世紀 大報恩寺蔵

続く「聖地の創出-釈迦信仰の隆盛」では、寺内で現在では別々に安置されている本尊「釈迦如来坐像」と「十大弟子立像」を同じ空間で展示。年に数回しか公開されない秘仏である釈迦如来坐像、そして十大弟子立像が10体そろって寺外で公開されるのは初めてです。

大報恩寺が建立された13世紀前半は、度重なる戦乱により「末法」(悟りを得られなくなる時代)の世相が強く感じられていました。義空上人は、この世に常住して説法する釈迦を造ることによって、末法の世を生きる人を救う場を生み出そうとしたのです。

 

重要文化財 十一面観音菩薩立像(六観音菩薩像のうち) 肥後定慶作 鎌倉時代・貞応3年(1224) 大報恩寺蔵

最後を飾る第三章「六観音菩薩像と肥後定慶」の中心となるのは、運慶一門の慶派仏師、肥後定慶作の「六観音菩薩像」。暗く、燃えるような真紅を背景に立ち並ぶ六観音の姿は、壮観のひとこと。六観音とは、地獄道や餓鬼道などの六道から人々を救い出してくれる仏さまです。

本像が持つ生々しい実在感は、末法の世に人々が仏さまに求めた切実な念や願いを感じさせてくれます。

 

展示作品紹介

 

重要文化財 千手観音菩薩立像 平安時代・10世紀 大報恩寺蔵

京都の中心地にありながら戦火をまぬがれた大報恩寺。そのために大報恩寺には周辺の古刹に収められていた文化財が多く集められました。その中でも、こちらは平安時代の名品「千手観音菩薩立像」。膝下の翻波式衣文と呼ばれる衣の表現は、平安時代前期に流行したもので、このことからも本作が大報恩寺建立以前のものであることがわかります。

 

重要文化財 釈迦如来坐像 行快作 鎌倉時代・13世紀 大報恩寺蔵

大報恩寺の秘仏本尊である釈迦如来坐像。像高は89.3センチ(約三尺)で、背面の下には「法眼行快」と朱書銘があり、行快が「法眼」という僧位にあった時に制作されたことを伝えています。

横にふっくらと張り出した頬、きりりと上がった目尻などに行快らしさがあらわれており、その力強い表情には、師である快慶の死後、自分の作風を模索し始めたことを感じさせます。

 

重要文化財 准胝観音菩薩立像(六観音菩薩像のうち) 肥後定慶作 鎌倉時代・貞応3年(1224) 大報恩寺蔵

六観音菩薩像の中では比較的作例が少ない准胝(じゅんでい)観音。慈悲の心を体現している女性像です。像内から発見された墨書銘に「肥後別当定慶」の署名があり、運慶次世代の実力派仏師、定慶作であることが明らかになりました。また、六観音にはいずれも針葉樹のカヤが用いられていますが、これは本来白檀で作られる「壇像」を意識しているためです。

結いあげた髪の毛の柔らかな質感や、空気をはらむ衣の描写など、非常に緻密な細部の表現には驚かされます。ぜひ会場に足を運んで、間近で定慶の彫技をご堪能ください!

 

光背や台座などが造像当初のまま残されているのも大きな特徴。特に光背(仏さまが発する光を具象化したもの)は脆いため破損しやすく、造像当初のものがここまで完全に残っているのは大変希少だということです。

また、六観音菩薩像は10月28日(日)までは光背付きの姿で、後期の10月30日(火)からは光背を取り外し、その後ろ姿を間近に鑑賞できます。なだらかな背中の曲線や、優美な背中の衣の文様など、普段とは違った角度から観音様の魅力を堪能できる機会ですね。


新しい時代の表現を切り開いた巨匠、運慶と快慶。大報恩寺が建立された1220年代は、その二人が相次いで表舞台を去り、行快、定慶ら次世代の仏師たちが活躍しはじめた時代でした。大報恩寺に残る珠玉の名作からは、そうした次世代の仏師たちの創作上の悩みや試行錯誤、さらに当時の人々の真剣な「祈りのかたち」を感じ取ることができます。

 

本展の会期は2018年10月2日(火)から12月9日(日)まで。
慶派の“スーパースター”たちが集う会場で、鎌倉時代の京都に思いをはせてみてはいかがでしょうか?

開催概要

展覧会名 特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」
会 期 2018年10月2日(火) ~12月9日(日)

9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)

(ただし、会期中の金曜・土曜、10月31日(水)、11月1日(木)は21:00まで開館)

休館日 月曜日(ただし10月8日(月・祝)は開館、10月9日(火)は休館)
会場 東京国立博物館 平成館 特別第3・4室(上野公園)
観覧料 一般1400円(1200円)、大学生1000円(800円)、高校生800円(600円)

中学生以下無料

※ ( )内は20名以上の団体料金

※ 障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名様は無料

公式サイト https://artexhibition.jp/kaikei-jokei2018/

 
同期開催の「マルセル・デュシャンと日本美術」内覧会レポートはこちら
 

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