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若き芸術家たちの胎動とその軌跡。
【東京藝術大学大学美術館】「台東区コレクション展―文化・芸術の杜 上野を巣立った芸術家たち―」内覧会レポート

 

記事提供:たいとう文化マルシェ

 

昭和56年度に創設された「台東区長賞」を原点として、長年にわたって交流・連携を深めてきた台東区と東京藝術大学。台東区長賞を通じて世に飛翔した芸術家も多く、同賞は若手芸術家の育成に大きな貢献を果たしてきたといえるだろう。

本展では台東区長賞受賞作品のうち、学生たちが制作した渾身の作品40点が展示される。

 

 

展示会場風景

 

「台東区コレクション展―文化・芸術の杜 上野を巣立った芸術家たち―」で出展されているのは、東京藝術大学の優秀な学生を顕彰し、その卒業制作を台東区が収集した「台東区長賞」を受賞した作品群。すなわち、いずれも学生時代の作品です。

昭和56年度から始まった台東区長賞制度は、美術学部絵画科の日本画および油絵・版画から各1名に授与され、その作品が台東区に寄贈されるというもの(平成30年度から音楽分野も加わっている)。この受賞者にはその後第一線で活躍することになるアーティストが数多く含まれており、まさに若手芸術家にとっての登竜門としての役割も担っていたことがわかります。

 

昭和・平成・令和の表現の「変遷」をたどる

 

前半部では前回展(平成28年度)以降の作品を展示。入って左手の壁面では油絵・版画の受賞作を展示している



 

手前は《かき》(土屋 玲 令和4年度)。牡蠣の貝殻を様々な素材で表現し、その複雑な表情を再現した実験的な作品

 

入って右手の壁面(前半部)には日本画の受賞作を展示

 

《乱立》(三品 太智 令和元年度)は、乱立するテレビアンテナをイメージした作品。田舎出身だという三品氏は、ここに故郷の樹林を想起したのだろうか

 

本展のテーマとなるのは「変遷」と「多様性」。
この展覧会では昭和・平成・令和と3つの時代にわたって40年以上続く台東区長賞の作品の中から40点を展示。その後第一線で活躍した芸術家や、今後の飛躍が期待される近年の受賞者まで、彼らが学生時代の集大成とした制作した渾身の作品が一堂に会します。
一点一点の作品が魅力的なのはもちろん、時代時代におけるトレンドの変化、そして「日本画」「油絵」といった枠組みにとらわれない発想の多様性にも注目です。

 

 

《花ノモトニテ》ウエバ ヒロコ 平成11年度

 

台東区長賞の歴代作品から厳選して展示。どの作品からもすでに卓越した技量を感じられる

 

手前は《叢》(佐々木 正 昭和57年度)、奥は《惑い》(四宮 義俊 平成14年度)。年代の大きく離れた受賞作を見比べられるのは趣深い

 

《 二人(崇浩と久美)》(土井原 崇浩 昭和61年度)。作者も「自分の出発点」と語る、夢をテーマにしたユニークな作品

 

本展は2部構成となっており、前半では前回展(平成28年)以降に台東区に収集された日本画、油絵・版画の受賞作を紹介。そもそも本来であれば6回目となる「台東区コレクション展」は東京2020大会に合わせて開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症により延期され、7年ぶりの開催となりました。
前半部では、この7年間で生み出された若き芸術家たちの渾身の作品が一挙に展観されています。

一方後半部では台東区長賞の歴代作品の中から厳選して作品を展示。第1回受賞者の手塚雄二氏(東京藝術大学名誉教授)の作品を筆頭に、この42年間で同賞を受賞した珠玉の作品が並びます。

会場から感じられるのは、まさにこれから羽ばたこうとする若い芸術家たちの「胎動」のエネルギー。小説においては「処女作にはその作家のすべてがある」とよく言われますが、彼らのその後の作品に通底するテーマや作風をこれらの作品の中に見出すことができるのかもしれません。
すでに彼らの活躍を知っているファンにとっても、はじめて彼らの作品に触れる人たちにとっても、鮮烈な発見と感動を与えてくれる展覧会だといえるでしょう。

 

展示作品紹介

 

ここでは、展示作品の一部をご紹介します。

 

《迷宮》手塚 雄二 昭和56年度

 

現実の「会議」もこんなもの?動物たちが話し合う不可思議な空間

 

皆好き勝手な意見を言い合う会議。議長である女性の後ろにはどこまでも迷宮が広がっています。身の廻りの人々を動物にたとえ、混沌とした不可思議な世界を表現した作品です。(制作者より)

<手塚雄二>
1953年神奈川県生まれ。日本美術院同人・業務執行理事、東京藝術大学名誉教授、福井県立美術館( Fukui Fine Arts Museum ) 特別館長。現代日本画壇を牽引する日本画家として、現在も精力的に活動を続けている。

 

 

《野辺に枕で踊りまくれ》菊地雅文 平成4年度

 

自身の演出した舞台を「風景画」として再構成した作品

 

平成4年、南麻布三ノ橋。約2ケ月間毎週土日公開 週間読切演劇『名探偵は本当にいるのか』(総監督 小林晴夫) 搬出で持ち出した壁面を組み、第4話、自身演出部を再構成。全話見た人でもこの絵を見ていない人は多い。(制作者より)

<菊地雅文>
1968年神戸市出身。東京藝術大学美術学部絵画科油画卒業。絵画制作、演劇制作、音楽制作に携わり、国内外で個展、グループ展を多数行っている。「野辺に枕で踊りまくれ」は1992年共同演出・制作の舞台演劇 「濡れた羽根は空をつかめない」を風景画で体験することを目的として制作された。

 

 

《樹樹邂逅》井手 康人 平成元年度

 

光と闇が交錯する屋久島の神秘

 

大学院に入った頃、屋久島に一人で旅行に行きました。海岸線にガジュマル、森の中は原生林、山頂では豪雪になる島です。山小屋に泊まりながら写生をし、森の中を歩き回った印象を制作しました。縦横無尽に苔の生えた枝が伸び、闇と光が交錯した世界は神秘的で荘厳な空間です。(制作者より)

<井出康人>
1962年福岡県に生まれる。東京藝術大学大学院修了。現在、日本美術院特待。倉敷芸術科学大学芸術学部教授。女性や花が醸し出す柔和で幻想的な作風が特徴的とされる。

 

 

開催概要

会期 2023年6月17日(土) – 2023年7月9日(日)
会場 東京藝術大学大学美術館 本館 展示室3、4
開館時間 午前10時 – 午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日
観覧料 無料
主催 台東区、東京藝術大学
問い合わせ先 050-5541-8600 (ハローダイヤル)
展覧会HP https://museum.geidai.ac.jp/exhibit/2023/06/taito2023.html
https://www.city.taito.lg.jp/virtualmuseum/index.html

 

 

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