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【東京国立博物館】 特別展「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」内覧会レポート

2016年9月13日(火)から12月11日(日)まで、東京国立博物館にて特別展「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」が開催されます。
9月12日に報道内覧会が開催されましたので、展示の様子をお伝えいたします。

はるか昔、延歴11年(792年)に最澄が延歴寺の建立に必要な良材を求めて櫟野(いちの)に地を訪れ、櫟(いちい)の霊木に仏像を刻んだことが始まりとされる櫟野寺(らくやじ)。「かくれ里」と称させる甲賀にこのお寺はあります。
滋賀県には、優れた仏像が数多く残されており、重要文化財に指定される平安時代の仏像を20体も所蔵する櫟野寺は、平安彫刻の宝庫である滋賀県の中でも特筆されるべきものです。

本特別展では、20体の大観音とみほとけたちが、今回初めて櫟野寺の外で私たちの前にお姿を現しました。
本展では、仏像を360°見ることができ、普段見ることが出来ないお背中や横顔などを拝見することができる、とても貴重な展覧会です。


それでは、ここからは展示風景をご紹介していきます。

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img_20160912_1135301十一面観音菩薩坐像



まず、入り口で出迎えてくれるのは、「十一面観音菩薩坐像」。最初にその大きさと迫力にしばらくの間、見入ってしまいます。
本体の大きさが約3メートル、台座から光背まで含めると5メートルを超え、そのお姿を見上げると、圧倒的な存在感を感じます。

頭と体を一本の木から彫り出す一木造で造られていること。大きな体を造れるほどの木があったことに驚かされます。
重さは、頭と体で575㎏。全体では720㎏もあるそうです。この大きな仏像をどうやって櫟野寺から出して、展示会場に入れたのか不思議です…。
お顔は、頬が張ってやや角張り、目尻を吊り上げた細く厳しい目、太い鼻、厚い唇といった威厳に満ちた表情をしています。まるで心の中を見られているような、でも安心するような…不思議な感覚になりました。

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仏像は横や後ろからもご覧いただけますので、頭の上にある十一面の頭部も拝見することができます。

img_20160912_1138451毘沙門天立像

次に目を引くのは、「毘沙門天立像」です。こちらは観音菩薩とお顔が違い、厳しい表情の中にくりっとした目が印象的です。
衣の感じは繊細ですが、とても力強く華やかな仏像です。正面からだけでなく、お背中もぜひご覧ください。

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「地蔵菩薩立像」をはじめ4体が並んでいます。十世紀半ばに造られた仏像は、なで肩で長身の体形、下膨れのお顔に目尻を吊り上げた細く厳しい目、太い鼻に厚い唇といった傾向が見られます。これは、櫟野寺本尊の十一面観音菩薩坐像がもとになっているようです。

img_20160912_1117561薬師如来坐像

img_20160912_1116491十一面観音菩薩立像(写真左)、観音菩薩立像(写真右)

img_20160912_1118331観音菩薩立像(写真左)、観音菩薩立像(写真右)

「薬師如来坐像」の両側を囲むように「観音菩薩立像」と「十一面観音菩薩立像」があります。「観音菩薩立像」といっても表情などが様々です。
この「薬師如来坐像」は、約2メートルと存在感を醸し出しており、どこか穏やかで柔らかい雰囲気がします。また、両側の観音菩薩像はすらりとした美しさがありますね。


これまでは十世紀の仏像を紹介するコーナーでしたが、ここからは十一世紀後半以降の仏像を紹介するコーナーとなり、少し雰囲気が変わります。

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十一世紀後半から十二世紀に造られた仏像は、優しい表情をしていますが、やや鄙びた感じを受けます。甲賀様式の特徴が明確に表れており、天衣や条帛に独特の形状が見られます。
十世紀の仏像と比べると質素な感じを受けますが、肌の滑らかさや布感などの美しい彫りは時が経っても変わることなく高い技術力を感じます。

%e7%84%a1%e9%a1%8c12221地蔵菩薩坐像

この「地蔵菩薩坐像」は、安産の地蔵菩薩で、お腹のところに結ばれている帯が、安産祈願の腹帯になったと言われているそうです。優しく見守っているようなお顔をしてますね。
内刳りを施して空洞にした像内に、蓮生という僧侶が数千人の人々に協力を求め、今世と来世の幸せを祈って造立したとの記録が残されているそうです。


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内覧会の後に、櫟野寺の三浦密照ご住職による奉告法要が厳かに執り行われ、「櫟(ラク)普及委員会」のみうらじゅんさん、いとうせいこうさんも同席されましたので、その様子もあわせてご紹介いたします。

img_20160912_1319321いとうせいこうさん(写真左)、三浦密照ご住職(写真中央)、みうらじゅんさん(写真右)


平安の時代、仏師たちは一本の木に仏像という命を吹き込みました。その命は人々の救いとなり、希望となったに違いありません。
今日私たちが仏像を見て心休まるのは、仏像のなかに宿る幸せという命を感じるからかもしれません。

かつて櫟野寺の皎英和尚(三浦ご住職の祖父)は、この展覧会の開催を望んでいましたが、没後にその望みは叶えられ、今日に至ります。
この素晴らしい仏像を一人でも多くの人に見て頂きたいという思いがあったのではないでしょうか。

本来は、33年に一度の大開帳でしかお会いすることのできない貴重な仏像を、拝見することができる貴重な機会になります。
特別展「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」、ぜひこの機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。


展覧会の開催概要はこちら:
https://home.ueno.kokosil.net/ja/archives/8624


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