2016年10月7日から2017年1月21日まで、上野の森美術館にて「デトロイト美術館展 ~大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち~」が開催されます。10月6日、プレス内覧会が開催されましたので、展示の様子をお伝えいたします。
デトロイト美術館は、2013年にデトロイト市の財政破綻を機に、存続の危機に陥りました。市の深刻な財政難により、財源の確保を目的として所蔵する美術品を売却するか否か議論となりましたが、国内外の資金援助やデトロイト市民の声によりコレクションは1点たりとも失われることが無かったのは有名な話です。それだけデトロイト美術館は素晴らしいコレクションを所蔵していることでしょう。
そんな素晴らしいコレクションの中から、選りすぐられた作品52点を見ることができます。
本展覧会は、モネ、ルノワール、ゴッホ、セザンヌ、マティス、ピカソをはじめとする、名画を「印象派」「ポスト印象派」「20世紀のドイツ絵画」「20世紀のフランス絵画」の4章に分かれて紹介されています。
それでは、展示風景をご紹介していきます。
第1章 印象派
まず初めに印象的だったのは、ルノワールの作品です。「白い服の道化師」、「座る浴女」、「肘掛椅子の女性」温かな色彩とソフトタッチの筆使いは、布や肌、髪の毛に至るまで質感が感じられます。
また、カロリュス=デュラン「喜び楽しむ人々」とアンリ・ジュルヴェクス「パリのカフェにて」は、人々の表情等が鮮明で風景の一部分を切り取った写真のような絵画です。
ドガは落ち着いた感じの色使いですが、その他の作品は全体的に明るい感じを受けました。
第2章 ポスト印象派
ここではやはりゴッホ「自画像」とゴーギャン「自画像」でしょうか。ゴッホの自画像は、黄色の麦藁帽子と青の服が明るい印象を受けます。その一方でゴーギャンの自画像は、深い緑の服と壁、黄色もありますがゴッホの黄色とは違い、全体的に落ち着いた印象を受けます。
印象的だったのは、ドニ「トゥールーズ速報」です。ポスターのような絵だと思ったら、やはり新聞「トゥールーズ速報」広告ポスターの絵画版でした。当時を感じられる作品ですね。
第1章の印象派より落ち着いた感じを受ける作品が多いように思いました。
第3章 20世紀のドイツ絵画
ノルデ「ヒマワリ」は種をぎっしりと付けた重みを感じて迫力があります。
ディクス「自画像」は、背景の水色と手に持つカーネーションが印象的な作品。顔の表情や髪の毛、衣類等とても忠実に描かれています。
ココシュカ「エルサレムの眺め」は、少し離れた場所から見たい作品です。
ドイツ絵画は、筆使いや色使いが力強い作品が多いように感じました。
第4章 20世紀のフランス絵画
ピカソの作品は、前期の作品から後期の作品へ作風の変化を感じることができます。中でも「肘掛け椅子の女性」は明暗の表現が印象的でした。
マティス「窓」は透ける白いカーテンと窓から差し込み光が印象的です。ナビゲーターを務める鈴木京香さんも好きな作品の一つだそうです。
ピカソの作品6点、マティスの作品3点、モディリアーニの作品3点、その他の作品もあり見応えがあります。
開会式の様子
ナビゲーターを務める鈴木京香さんが出席され、「何度も足を運んで、名画との対面の時間、名画との対話の時間を楽しんで欲しいと思います。」とお話されました。
1885年デトロイト美術館が創立され、名画など素晴らしい作品をコレクションしていきます。1992年にはゴッホとマティスの作品を入手した米国初の公共美術館となりました。その作品が本展でご覧いただけるゴッホ「自画像」とマティス「窓」です。
本展では、モネ、ルノワール、ゴッホ、マティス、ピカソなどの幅広い名画を見ることができ、また作品15点が日本初公開という贅沢な展覧会となっています。画家たちの個性あふれる作品を思う存分堪能できることは間違いありません。
この展覧会はすでに豊田市と大阪で行われ、31万人以上の方が作品をご覧になりました。
デトロイト美術館ヨーロッパ美術部学芸委員長のイブ・ストラウスマン_ブランザー氏は「デトロイト美術館はこれら名画の家であり続けることに感謝しています。」とお話されました。デトロイト市民の作品に対する思いが伝わってきます。
デトロイト市民が守り抜いた珠玉の作品をこの機会にご覧になってはいかがでしょうか。きっと作品を手放したくなかったその気持ちが分かると思います。
デトロイト美術館展では、月曜日と火曜日に全作品写真撮影ができます。滅多にできない機会ですので、ぜひ足を運び名画を写真に収めてみてはいかがでしょうか。
展示会の開催概要はこちら:
https://home.ueno.kokosil.net/ja/archives/8974