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上野公園の向かい、東京国立博物館のわきにぽつんと佇むこちらの建物。
かつては東京帝室博物館(現・東京国立博物館)や恩賜上野動物園の最寄り駅として利用されてきた京成電鉄 旧博物館動物園駅です。
利用者の減少に伴い、1997年には営業を休止していましたが、2018年4月には景観上重要な歴史的価値を持つ建造物として、鉄道施設としては初めて「東京都選定歴史建造物」に選定されました。
これを機に改修工事が実施され、さらに東京藝術大学美術学部長であり、UENOYES※総合プロデューサーの日比野克彦氏がデザインした出入り口が新設されました。
※社会包括をテーマにしたアートプロジェクト。文化を起点に人々の新たな社会参画を目的として、障害などの有無にかかわらず、子どもから大人まで、人種や国を超えたさまざまな人々とともに、年間を通して多彩なプログラムを展開し、上野から世界に向けて発信しています。
2018年11月23日、いよいよ京成電鉄 旧博物館動物園駅駅舎の一部が一般公開されます。それにあわせ、駅舎内ではUENOYESのプロジェクトの一環である「歴史的文化資源活用プログラム」として期間限定のインスタレーション作品『アナウサギを追いかけて』が展示されます。
それに先立ち行われたプレスツアーに参加しましたので、その様子をお伝えします。
新設された扉を開けて、いざ中へ。
扉を開けると、そこには巨大なアナウサギが!
旧博物館動物園駅の改札が地下にあることから、本作では土を掘って巣穴をつくる習性を持つアナウサギをモチーフとしているそうです。
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駅舎天井
多くの人に愛された当駅。駅舎の壁には現役当時の落書きが残されています。
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旧博物館動物園駅公開記念入場券
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アナウサギのお面をつけた案内人がわたしたちを地下へと誘います。
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切符を切ってもらい、地下に降りていきます。
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地下には「失われたものの再生」について書かれた本。観覧者も椅子に座ってページを繰ることができます。
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3Dプリンタで再現された動物の頭蓋骨のユニークなディスプレイ。こちらにも触れることができます。
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中央には駅舎が営業を停止した1997年に亡くなったジャイアントパンダのホァンホァンの頭蓋骨の実物が。そばに佇むのは国立科学博物館・動物研究部 支援研究員理学博士で、本作の技術協力の森健人さん。
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ホァンホァンの頭蓋骨はレプリカも用意されているので、ぜひ触れてみてください。
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トイレ表示の前に展示されているヒトの頭蓋骨のレプリカ。なんだかシュールです。
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駅舎内に残る多くの落書きへのオマージュとして、地下につながるガラス戸にペンで落書きをすることができます。落書きがいっぱいになったらアーカイブ化する予定とのこと。
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地下の改札、そしてホームへと続く階段。ここから先へは進むことができませんが、ガラス戸越しに当時の姿をしのぶことができます。
演出の羊屋白玉さんが上野についてのリサーチを基に書き下ろした物語を美術のサカタアキコさんが形にし、そして国立科学博物館・動物研究部 支援研究員理学博士森健人さんの技術協力によって実現した今回の展示。
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左から演出の羊屋白玉さん、技術協力の森健人さん、美術のサカタアキコさん。
羊屋さんもサカタさんも、この駅舎は「アーティストにとってインスパイアされる空間」であると言います。
森さんは普段骨格標本を3Dスキャン・プリンタしたものを作成していますが、それを人の目に触れることができたらと考えていたときに羊屋さんから声がかかったそうです。旧博物館動物園駅が営業を休止したのは1997年のことでしたが、森さんの発案により、同年に亡くなったジャイアントパンダのホァンホァンの頭蓋骨の実物展示が叶いました。
こうして出来上がったインスタレーション作品『アナウサギを追いかけて』。扉を開けた瞬間から見るものを引き込んでしまう、独特の世界観が漂います。
入口のアナウサギや本、頭蓋骨のレプリカには実際に触れることができますし、ガラスには落書きをすることもできます。
旧博物館動物園駅を利用したことのある方でもない方でも、駅舎の歴史に思いをはせつつ作品を楽しめることでしょう。
2019年2月24日までの期間限定の展示となるので、この機会に旧博物館動物園駅に足を運んでみてはいかがでしょうか。
旧博物館動物園駅の公開と展示
「アナウサギを追いかけて」開催概要
会期 | 2018年11月23日(金・祝)~2019年2月24日(日)までの毎週金・土・日曜日 ※12月28日~30日を除く計39日間 |
時間 | 11:00~16:00 ※最終入場は15:30まで(定員制・混雑時は入れ替え制) |
場所 | 旧博物館動物園駅 駅舎 |
入場料 | 無料 |
関連イベントも開催されます。詳しくは公式サイトでご確認ください。